Style of Life
シンプルだけど味があるこだわりが創り出した
オンリーワンの空気感
「最近の家ってけっこうデザインとか頑張りました!的なところが逆にかっこ悪いなと思っていて。“シンプルで味がある”というのはすごい難しいことですが、今のこの時代からすると貴重なことなのかなって気がしますね」
倉庫と古民家
「シンプル」ということでは 倉庫のような空間がイメージとしてあったが、これは家の中が壁で仕切られていない空間をイメージしていたときに出てきたものだったという。メインのスペースである1階のリビングとDKは2階分近くの高さがある吹き抜け空間だが、一室空間的につくられ、しかも必要最低限のデザインに押さえられていて、倉庫的な空気感を醸し出している。
倉庫とともにこの家のイメージの源泉となったのが、古い民家だった。
「鎌倉とか、古い建物があるところが好き」というKさん。1年ほど探して巡りあった敷地も、古い神社や昔からの建物が多くて雰囲気が気に入っていたこの近辺を中心に探していた時にたまたま通りかかって見つけたのだという。
こだわって集めた家具・雑貨
しかし、「古民家のような家」というオーダーは出さなかったという。「昔の古民家風にして建具とかいろいろとこだわり始めると予算的に難しいかなというのもあって…」
その分、古い家具や雑貨にこだわった。
「古民家を改装したようなカフェとかの雰囲気がすごい好きで、そういうところでインテリアとか部屋の雰囲気を参考にしましたね」
天井から吊るされたライトも、食器棚兼カウンター上のガラスのライト以外は多くが中古。なかでもこだわったのはダイニングテーブルの上のもので、長野の北欧雑貨屋さんで見つけたルイス・ポールセンだ。
2階入り口前のカプセル状のライトは国立の古道具屋さんで見つけたもので、20~30年くらい前に製造されたドイツ製のものだという。どれもテイストが異なるがバラバラで寄せ集めた感じがしないのにはKさん夫婦の高いコーディネイト力を感じる。
シンプルだから味がある
こだわったのは家具・雑貨類だけではない。壁面の多くを覆って空間の雰囲気を大きく左右するカーテンは、麻のいい素材のものを購入。それを縫わずに生地を切っただけで使用しているが、その自然でさりげのない感じが空間にとてもマッチしていてこれも見事なコーディネーションだ。
キッチンのタイルにもこだわった。「丸い形にしたいと言ったのはちょっとレトロ感が出るかなと思って」。濃いグリーン系の色は、建築家が出してくれた候補の中から一発でこれがいいと決めたものだという。浴室には同じ形の色違いを採用した。色味が少なめのK邸でこの2箇所のタイルが目に心地の良いアクセントになっている。
初めて訪れた人には「新築の家じゃないみたい」とよく言われるというK邸。竣工後まだ半年ほどだが、自分たちでこだわりつくして集めた古い家具や雑貨でこの家にしかない空気感をすでに創り出している。
こうしたことが可能になったのは、入れ物としての建築空間がシンプルだからこそだ。「シンプルだけど味がある家」は、シンプルだから味がある家になったのだろう。
設計 straight design lab
所在地 神奈川県秦野市
構造 木造
規模 地上2階
延床面積 66.87m2