Architecture
一体感を感じながら暮らす風道、四角い螺旋階段…
小さな家にアイデアを詰めて
「家族がそれぞれの部屋に閉じこもる感じではなくて、みんなの行動というか息遣いが感じられるような空間にしたかったんですね。それと、狭い部屋をぎゅうぎゅうに詰め込んでいる家をたくさん見て息苦しい印象があったので、そういうのはやめようと」
“ジャックと豆の木”みたいな階段
狭小敷地に立つ家は急で狭い階段が多いが、それも避けたいと思った。「なので、階段を大きくつくってほしい。座ってお茶を飲んでも悪くないような階段がいいな」。そんなことも建築家に伝えた。
こうした要望から、まず、1階の寝室や収納、水回り以外は、全体が大きなワンルームのようになるようにつくり、その中心を吹き抜けにして螺旋階段を設けることに。この「“ジャックと豆の木”みたいに上に限りなく延びていくような感じの階段」は、建築家の田中さんが、この広さだと部屋が重なって階段を行き来する時間が多くなるため、階段のあり方が重要になると考えてデザインしたもの。
低コストを実現した仕掛け
熱環境にもこだわった。3階建てに住んでいる人たちから「上と下の気温差があって困った」という話を聞いていた奥さんは、ランニングコストのあまりかからない方法でそれを避けることができないかと思っていたという。
エアコンやヒーターを使えばランニングコストだけでなくイニシャルコストもかかる。そこで、もう少しアナログというか原始的な感じのもので、お金のかからない解消の仕方がないか田中さんに相談した。
夏は階段室にためた熱気を風道内の強制排気ファンで外に出し、逆に冬は階段室の暖かい空気をパイプファンで吸って一番下から吐くという仕組みという。
「この風道が思った以上に活躍してくれて、一軒家でまさかエアコン一機だけでは暮らせないだろうなと思っていたんですけど、まったく問題ないですね」と奥さん。
敷地面積と予算は厳し目ではあったものの、こだわりを貫いて建築家とともに家づくりにのぞんだ本泉さん夫婦。「狭くて困ったということも、一軒家ということで困ったこともまったくなくて、すごく快適に暮らしています」という奥さんの言葉からは、空間への満足感とともにこだわりを通して得た成果への充実感も伝わってきた。
設計 田中昭成ケンチク事務所+POI+なわけんジム+Lapin建築設備工房
所在地 神奈川県横浜市
構造 木造
規模 2階建て(3階に増床可能)
延床面積 55.8m2