テイストはインダストリアル旗竿敷地であることを忘れる明るく広い快適空間

テイストはインダストリアル旗竿敷地であることを忘れる
明るく広い快適空間

旗竿敷地を選ぶ

「こんなに明るくできるとは思わなかった」。こう話すのはシューズメーカーに勤務するUさん。2階のLDKにはトップライトや玄関側に設けられた大きな開口からふんだんに光が入るが、Uさんがこのように話すのは、実はこの場所が四周を囲まれた旗竿敷地だからだ。

お隣に奥さまの双子のお姉さんが住んでいたことからこの土地についてはよく知っていたが、旗竿という悪条件よりも、隣にお姉さんの家があるという利点のほうを取って購入を決めたという。


ロフトからリビングを見下ろす。天井からぶら下がる特徴的な照明は、エイジング加工を施したものという。

ロフトからリビングを見下ろす。天井からぶら下がる特徴的な照明は、エイジング加工を施したものという。

リビングは階段と手すりによって大きく2つに分けられる。Uさんは階段をこの位置にすることにこだわったという。

リビングは階段と手すりによって大きく2つに分けられる。Uさんは階段をこの位置にすることにこだわったという。


まずはトップライト

建築家の佐々木達郎さんは、この敷地ではやはり「光をどう入れるかを最初に考え、気持ちがいいと言える次元にもっていけるかどうかというところから設計をスタートした」という。そして、2階レベルでも周りを壁で囲われているような状況だったことから、まずはトップライトをつくることに。トップライトは、2階では玄関側の隅とロフトに、1階はいちばん奥が暗くなるので2階を載せずにずらした部分に設けた。

1階は階段脇に大きなフィックスの窓が開けられているが、ここからは外の擁壁に当たって反射した光を採り入れることにした。さらに、ロフトも一回床に落ちた光を照明のレフ板のように反射させ2階のLDKと寝室の両方に拡散させることに。2階の隅と1階に設けたトップライトも一度壁に当てた光が反射して部屋中に拡散するようにした。


シャレた帽子のコレクションはUさんのもの。

シャレた帽子のコレクションはUさんのもの。
 

棚の上には趣味で集めた小物などが並ぶ。

棚の上には趣味で集めた小物などが並ぶ。

寝室側からリビングを見る。コーナーに設けられたトップライトから落ちる光が壁に当たって部屋中に拡散する。

寝室側からリビングを見る。コーナーに設けられたトップライトから落ちる光が壁に当たって部屋中に拡散する。


プロダクトにこだわる

白を基調としたデザインの中で、窓枠や階段手すりなどに黒のスチールを使用したデザインがインダストリアルな印象を与えるが、Uさんから佐々木さんへは、主に雑誌や書籍などのヴィジュアルを見てもらうなどして好きな空間の雰囲気を伝えたという。その中には、今人気のニューヨークのデザインスタジオ、Roman and Williamsの写真集も含まれていたという。

具体的なモノを指定したものもあった。そのうちのひとつがダイニングの壁に付けられたジェルデ社の照明だ。


右奥に寝室。キッチンと1階の水回りには白いタイルを使用。このタイルはUさんのリクエストで、目地の色にまでこだわったという。

右奥に寝室。キッチンと1階の水回りには白いタイルを使用。このタイルはUさんのリクエストで、目地の色にまでこだわったという。


リビングの4つのペンダントライトは、Uさんが実物を試しに購入し、イメージを確認した上で設置を決定した。また、エイジング加工を施し、さらに質感をイメージに近づけたものという。

「Uさんが空間の中で主役になってしまうような、主張の強いプロダクトを好まれるので、それらをどうバランスよく空間に落とし込むかということに気を使いました」(佐々木さん)


玄関側から家の奥方向を見る。白い空間に使われた黒いスチールがインダストリアルな空気感を醸している。

玄関側から家の奥方向を見る。白い空間に使われた黒いスチールがインダストリアルな空気感を醸している。

今は収納スペースとして使われているロフト。トップライトから落ちた光が白い床で反射して、左のリビングと右手にある寝室まで拡散する。

今は収納スペースとして使われているロフト。トップライトから落ちた光が白い床で反射して、左のリビングと右手にある寝室まで拡散する。

ロフトから寝室を見下ろす。3つセットにした照明を2カ所に設けているのがポイント。

ロフトから寝室を見下ろす。3つセットにした照明を2カ所に設けているのがポイント。


キッチンと1階の水回りに使用したタイルにもこだわった。ニューヨークの地下鉄で使われているサブウェイタイルのようなテイストにして欲しいとリクエストを出したUさんは、目地の色にもこだわったという。

さらにはドアノブなどにもこだわったが、佐々木さんにお任せした空間構成のほうでも、とてもこだわった箇所があった。この家の大きな特徴となっている階段だ。玄関から階段を上るとリビングに出るが、この階段が空間を大きく2つに分けており、黒い手すりもこの中で大きくその存在感を主張している。


誰かが帰宅すると階段を通してすぐわかる。階段途中に落ちている光はトップライトからのもの。

誰かが帰宅すると階段を通してすぐわかる。階段途中に落ちている光はトップライトからのもの。

階段の手すりに手をかけてLDのほうを見るUさん。

階段の手すりに手をかけてLDのほうを見るUさん。

Uさんのスニーカーのコレクションが味のある1940年代の医療棚に収められている。

Uさんのスニーカーのコレクションが味のある1940年代の医療棚に収められている。

1階は2階とは対比的にモルタルの床にした。昼間なら、トップライトからの光で奥の部屋でもこれだけ明るい。

1階は2階とは対比的にモルタルの床にした。昼間なら、トップライトからの光で奥の部屋でもこれだけ明るい。

1階奥から玄関を見る。廊下にシューズがきれいに並ぶ。

1階奥から玄関を見る。廊下にシューズがきれいに並ぶ。

旗竿敷地の1階のいちばん奥の部屋は普通なら日中でも暗いはずだが、トップライトから落ちる光でこの通りの明るさ。

旗竿敷地の1階のいちばん奥の部屋は普通なら日中でも暗いはずだが、トップライトから落ちる光でこの通りの明るさ。


階段をあえて部屋の途中に配置

階段を壁際に寄せる案もあったが、この位置にこだわったのには理由があったという。「本を入れたり趣味のものを置いたりする細長い棚を階段ごしにディスプレイとしても見せたかったのと、トップライトの光が落ちてくるところを見せたかったんですね」とUさん。

佐々木さんには、空間が2つに分かれるうえに、棚側の空間はただの廊下になって有効活用できないかもとも言われたが、「廊下的な余白の空間がどうしてもほしい」とこだわったこの階段+廊下は、佐々木さんのプラニングにより、結果的に「ぐるぐると回れて楽しい」ものになったという。


階段脇の大きなフィックスの開口からは外の擁壁に当たって反射した光が入ってくる。

階段脇の大きなフィックスの開口からは外の擁壁に当たって反射した光が入ってくる。


Uさんのこの家でのお気に入りの時間は、こだわったこの階段脇の通路に座って本を読んでいるときだという。「明るくて、上から落ちてくる光で本も見やすい。あと友達を呼んでご飯を食べているときとかに階段の手すりに手をかけて立って話をするのも好きですね」

奥さまが好きなのは朝、寝室を出てLDKに入ってきた瞬間という。「寝室の扉を開けて朝こちらに入ってきたときにすごく光がきれいで、きらきらしているんですね。それがとても気持ちよくて、その瞬間に1日分のやる気が出てくるような気がするんです」

お2人の話をうかがっていたらこの家が旗竿敷地に立っていることをすっかり忘れてしまっていたが、帰り際に外から再度眺めてみると、見事に周りを囲まれたこの家は、道からは先端部分が見えるのみ。外観からは誰も内部にこれほど明るく気持ちのいい空間があることは予想できないに違いない。


U邸

U邸
U邸
設計 佐々木達郎建築設計事務所
所在地 神奈川県横浜市
構造 木造
規模 2階建て
延床面積 95.14 m2