Architecture
外を感じることのできる住まいアジアンリゾートのように
内外が一体化した空間を満喫
アジアンリゾートのような雰囲気に
鎌倉・稲村ケ崎の駅から山側に歩いて10分弱。海から歩いても10分少しという場所に佐藤邸は建つ。海に近いだけでなくすぐ近くには山もあり、四季によって緑が移ろいゆく様も楽しめるという立地だ。
建物正面は開口のないボックスが斜めにつながった外観だが、奥へ進むとそれとは対照的に外へと開かれたつくりが印象的だ。このようなつくりは佐藤夫妻からの「アジアンリゾートにいるかのような雰囲気の建物にしたい」というリクエストに建築家が応えて提案したものだった。
最初の打ち合わせ時には、プレゼンテーションシートのようにまとめられたバリなどのリゾート地の写真を見せながら、「こんな感じでいつも外を感じられるようにしたい」「外にもソファが置けるような雰囲気がいい」など、具体的な要望を建築家に伝えたという。
ボックスを分散配置
設計を担当されたondesignの一色さんは、「外を感じることのできる住まいをつくる」ために、外部へと開けられるところをオープンなつくりとして裏山の緑なども借景として楽しめるようにし、できるだけ自然と近い関係がもてるよう配慮したという。
この考えを実現するために採用されたのが、家をいくつかのボックスへと分け、分散配置したそのボックスの間にサッシをつくり込み、囲んだ部分を内部化するというアイデアだった。
また、1階のゲストルームや2階にある夫婦それぞれの趣味の部屋などは、外を介してLDKや寝室などの生活空間とつながるつくりにした。
そして逆に「面白いと思って、即決した」というこの分散配置の案は、提案してもらってとてもありがたかったという。「この提案がなかったらふつうの箱状の家にしかならなかったかもしれないので」と奥さん。
個性のある場所をつくる
ボックスのそれぞれに特徴のある要望があったことから、個々のボックスは機能を特化しつつ個性を最大化するようにつくられた。
人の集まるLDK、佐藤さんと奥さんそれぞれの趣味の部屋、友人が泊まるゲストルーム、水回りのスペース、それぞれに異なる照明が選ばれ、色が塗り分けられているのもこうした理由からだ。
家具のようなキッチン
この家の中で奥さんがいちばんこだわったのはキッチンのスペースだった。キッチンカウンターはなるべく大きくして家具のような感じにしたかっという。
「こうしたいというはっきりとしたイメージがありました。それで、そのイメージををつかんでもらうために、一色さんにあるお店まで見に行っていただきました」
家具のようなテイストにするのがポイントととらえた一色さんは、「できるだけ家具っぽくするために、擦りガラスを一部入れたりしました。“昔からそこにあったようなものが好き”というお話もうかがっていたので、昔あったような食器棚のイメージですね」と話す。
実際にパーティの時には、大きなキッチンカウンターの周りに皆がグラスを持って集まり、カウンターにもたれたり、ハイスツールに座ったりと思い思いの姿勢で楽しいおしゃべりに興じるのだという。
窓を開放して半外部のようになったリビングで、気の置けない友人たちと大きなキッチンカウンターを囲んで語り合う。さぞ楽しいのだろうなと想像した。
設計 ondesign
所在地 神奈川県鎌倉市
構造 木造
規模 地上2階
延床面積 113.63m2