Architecture
太陽の動きを感じられる家都市の中の自然を
最大限、享受する
チャレンジできる土地
建築事務所「K+S アーキテクツ」を主宰する鹿嶌さんと佐藤さんのご夫妻が東急田園都市線沿線の土地を購入した第一の理由は、事務所に近いからだったという。
「歩いて3 分ぐらいのところに事務所があるんですが、通勤のことをはじめ家と事務所が近いといろいろと便利だろうということで土地を探し始めたんです」
「18 坪と狭い土地だったんですが、とにかくチャレンジできる土地ではないかと。ポジティヴに考えていけば面白いことができるのではないかと考えて購入しました」(鹿嶌さん)
太陽の動きを感じる
光に関して鹿嶌さんは、朝起きて日が暮れるまでの太陽の動きが感じられるようにしたいと思ったという。そして「1 階はちょっと無理ですが、2,3 階は工夫すればそんなことができるんじゃないかと考えました」と話す。
「裏の南東側にはすぐ家があって日が当たらないため、4 階レベルのいちばん高いところに設けた開口から朝日が入るようにしました。そしてだんだん日が回ってくるとハイサイドライトから光が入り、そのあとには2 階のテラスの壁で光が反射して室内がすごく明るくなります」(佐藤さん)
はじめはごくシンプル
この家には仕切りがほとんどなく、そのシンプルなつくりも特徴のひとつになっているが、竣工当時はさらにシンプルなつくりだったという。「特に何の部屋をつくらないといけないということもなかったので、“ 小さい中でも広々した感じにしたいね” という話はしました」(佐藤さん)
鹿嶌さんは「プライバシーを確保しながらいかに開放的な空間をつくれるかを考えました。2 人だけだから扉もいらない。カーテンでも空間を区切ることは出来るので、仕切りの少ないシンプルなものにしようということで設計しました」と話す。
「生活していく中で、必要なものを考えてからつくろうということでした。本が好きで家でもよく読みますが、本を置く場所がなかったので3 階に本棚をつくりました。上のテラスもそうですが、小さな家だけれども多様な場がつくることができればいいなということも同時にありましたね」
都市の中の自然
「屋上のテーブルとベンチは、春や秋の季節のいい時に朝食を取ったり3 時にコーヒーブレイクしたりというようなことに使おうと思っていました。小さいけれどぜいたくな屋外空間をつくって、それを楽しみたいねと」
鹿嶌さんがこう語るテラスには水盤が置いてあり、テラスに面したガラスの戸を開けてその水盤に水を流すとコンクリート造の空間にその音がよく響く。「(地下に埋める)水琴窟みたいな響き方をさせて涼を取ろう」とも考えたという鹿嶌さんには、都市部での住宅についてのある考えがあった。
こうした観点からすると、この家が都市部の密集した住宅地の中で、光という自然の恵みを最大限享受しようとしてつくられたもののようにも見えてくる。その中で、この家の住人は、自然の変化に敏感になっているようだ。
「冬は3 階に行くとすごく暖かいし、夏は下に行って本を読むとかして、その時期によっていちばん居心地のいい場所へ行きますね」。愛犬のシャマルとカリフも例外ではない。むしろ、人間より敏感のようだ。「その時期のいちばんいい場所を彼らはよくわかっていて、そうした場所にいつもいますね」
設計 K+Sアーキテクツ
所在地 東京都世田谷区
構造 RC 造
規模 地上3 階
延床面積 82.67m2