Architecture
「林」の中での生活都心の住宅地で広がりと
木の温もりを感じて暮らす
林のイメージから
世田谷区の住宅地に建つ阿部邸。阿部夫妻は家づくりに際して「都心ながら広さが感じられ、かつ、林のようなイメージで木の温もりを感じられる家にしたい」と思ったという。
そして、この「林」は「別荘地などで、整えられた木がとても多くあるが、鬱蒼としすぎてない」と、そのイメージはさらに明快に限定されていた。
しかしイメージのレベルにとどまらず、さらにそれを少し建築空間のアイデアにまで踏み込んだ考えももたれていたようだ。「木で少し視界や移動を遮られるけれど、ひとつひとつの空間が木によってゾーニングされてそれぞれに役割を持たせられるかなと」(奥さん)
そして、プランを9分割したうえで、仕切る壁を木をイメージした形にカットするというデザインに落ちついた。
実際の林の中では人が動いていくごとに現れるシーンが変わっていくが、茂った木の枝葉が傾いているような壁のデザインにより、単純に四角にくり抜かれた壁よりも、そうした、移動するごとの多様なシーンの展開を体験することもできる。こうしたこともこの空間の魅力を増すことになる。
木にもこだわる
イメージとしての木だけでなく、リアルな木のほうにもこだわった。「雑誌などを見て家のイメージを膨らませていた時に、私たちの興味が、別荘地のように、木がたくさんあるお家に向いたんですね。でも、手入れがかなり大変だというのもわかっていたので、そこをちゃんとおさえた上で緑を感じながら生活できればいいなと」(奥さん)
そこで大きな2本の木のうちの1本を季節の感じられる落葉樹、もう1本は常陽樹にしたいと富永さんにリクエストし、落葉樹はカエデ、常葉樹のほうはオリーブにすることに。オリーブの木は、寝室からは幹しか見えないため、幹の形がよく、かつ、2階の子ども部屋から見たときに葉振りが多すぎずというところで、農園にまで赴いて実物を見て決めたという。
昔ながらの日本家屋の、ひとつひとつの部屋がふすまで仕切られているような感覚もあるという。「ひとつの空間は少し狭いけれどつながっているから広く感じるし、外と中も仕切られているようでつながっていてという、この空間の使い方がすごく心地がいい」とも。
さらに奥さんはこの家で過ごす中でも夕暮れ時が好きだという。「日が直接は入ってこなくなって、でも日差しが外の壁に反射してすごく明るい中で、少しずつ日が沈んでいく時の感じがけっこう好きですね」。
木にこだわった家づくりは、さらに、こうした自然(現象)へも開かれることで居心地の良さを増しているようだ。
プロデュース NK注文住宅コンシェルジュ
設計 富永哲史建築設計室
所在地 東京都世田谷区
構造 木造
規模 地下1階地上2 階
延床面積 117.6m2