Architecture
ロッジをイメージした斜め屋根シンプルだけど
変化のある楽しい家
2階は大きなLDK空間
K邸の玄関ドアを開けてその正面に見える階段を上って2階に上がると、大きな1室空間が現れる。道路側の傾斜した壁に開けられた大小4つの開口からは、太陽の光がふんだんに射し込んで内部を明るく照らしている。そして、キッチンの左手にある木製の階段が、その存在感によって、この大空間に大きなアクセントを与えている。
大きなリビングがほしかったというK夫妻。Kさんの仕事の関係で、2人は2011年からサンフランシスコに3年半滞在した。その時に暮らした家のリビングのイメージが強く残っていたそうだ。
ロッジのような家
傾斜した壁は立地条件とともに、「ロッジのような家」という要望から生まれたものだった。奥さんは「スキーによく行っていましたが、その時に友人たちと一棟借りしたロッジの空間が好きで、その体験も影響しているかもしれません」と話す。
建築家の田辺さんから出された設計案は複数あったが、K夫妻が選んだのはやはりロッジをイメージした斜め屋根のものだった。「せっかく建てるのだったら空間に楽しさを感じられるようなものにしたかった。屋根を斜めにすると空間的には非効率ですが、四角い箱とは違う変化が生まれます」(Kさん)。
きっかけとしての階段
「シンプルな中にも変化があるのが面白い」というKさん。案を見て「いいな」と直感的に思ったというのがキッチンの脇につくられた階段だ。コストやパントリーをつくるという必要から外部階段を内部へともってきたものだが、大きくてシンプルなつくりの2階の空間になくてはならない存在となっているようだ。
「シンプルすぎると自分で全部ゼロから考えないといけませんが、なにか引っかかりがあってそれをもとに考えられるほうが面白いと思って」とKさん。奥さんも「この階段があることで、この家がこれからも変化していくイメージが湧いてきます」と話す。
ひとつながりの空間
K邸にはもうひとつ大きな特徴がある。2階は大きな1室空間だが家自体も全体がつながっているように計画されているのだ。
「当初、リビングを1階にして外とつなげたいというお話があったので、リビングを2階にしてからも外からどういうふうにつなげていくかを検討しました。階段の途中にある窓からモミジが見えるんですが、日常的にも、家の中を移動する際に季節の変化が感じられようにしたいとも考えました」(田辺さん)
以前より人を招くようになった
家の中でもK夫妻が特にこだわった2階空間。Kさんは「やはりリビングがいいです」と話す。「このリビングは半分屋外みたいな感じで、モノも詰め込まれていないし、体感としてもけっこう広く感じられるので、リクエストしていた通り長くいられる場所になりました」
大人が座れる場所も多いし、子どもが遊べる場所もたくさんある。配置換えも楽なので子どもの遊びのスペースを新たにつくることもできる、とも話す。「僕は平日の昼間は会社ですが妻と子どもはずっと家にいるので、居心地が良くてしかもいろんな使い方ができて飽きない空間というのはいいですね」
夫妻で「人を招く心のハードルがかなり下がった」「広くなったせいなのか、人に来てもらいたいと思うようになった」とも話す。「人を招くハードルが下がった」のは想定外だったかもしれないが、たしかに、2階の大空間はロッジのようにたくさんの人が集まってワイワイと楽しく過ごすのがとてもしっくりとくる空間でもある。
設計 田辺雄之建築設計事務所
所在地 神奈川県逗子市
構造 木造
規模 地上2階
延床面積 114.71m2