「林」の中での生活都心の住宅地で広がりと木の温もりを感じて暮らす

「林」の中での生活都心の住宅地で広がりと
木の温もりを感じて暮らす

林のイメージから

世田谷区の住宅地に建つ阿部邸。阿部夫妻は家づくりに際して「都心ながら広さが感じられ、かつ、林のようなイメージで木の温もりを感じられる家にしたい」と思ったという。

そして、この「林」は「別荘地などで、整えられた木がとても多くあるが、鬱蒼としすぎてない」と、そのイメージはさらに明快に限定されていた。

しかしイメージのレベルにとどまらず、さらにそれを少し建築空間のアイデアにまで踏み込んだ考えももたれていたようだ。「木で少し視界や移動を遮られるけれど、ひとつひとつの空間が木によってゾーニングされてそれぞれに役割を持たせられるかなと」(奥さん)


2階のダイニングからリビングを見る。壁が台形と家型にくり抜かれているが、いずれも林の中の木のイメージから生まれたもの。上に行くほど枝葉が茂っていて、下の部分は空間が空いているイメージだ。

2階のダイニングからリビングを見る。壁が台形と家型にくり抜かれているが、いずれも林の中の木のイメージから生まれたもの。上に行くほど枝葉が茂っていて、下の部分は空間が空いているイメージだ。

ダイニングテーブルはこの家のためのオリジナルデザイン。富永さんが勧めた椅子が気に入り、椅子にあった高さに設定したという。

ダイニングテーブルはこの家のためのオリジナルデザイン。富永さんが勧めた椅子が気に入り、椅子にあった高さに設定したという。


設計を手がけた建築家の富永さんは、伝えられたイメージから、「あまり壁でびしっとは仕切らず、なんとなく居場所が確保でき、また守られているような空間」を目ざしたと話す。

そして、プランを9分割したうえで、仕切る壁を木をイメージした形にカットするというデザインに落ちついた。


リビングからダイニングを見る。テレビの後ろに見えるカエデによって季節の移り変わりを感じることができる。フローリングはアッシュで、リビングとダイニングでは張る向きを変えている。

リビングからダイニングを見る。テレビの後ろに見えるカエデによって季節の移り変わりを感じることができる。フローリングはアッシュで、リビングとダイニングでは張る向きを変えている。


阿部さんには壁をつくることで狭く感じないか少し心配もあったというが、奥さんはこうとらえたという。「ゾーニングをうまくしていただいたので、つながっているようで仕切られている。そういう空間の使い方に魅力を感じました。空間ごとにインテリアも変えて楽しめるし、すごく面白いなと思いました」

実際の林の中では人が動いていくごとに現れるシーンが変わっていくが、茂った木の枝葉が傾いているような壁のデザインにより、単純に四角にくり抜かれた壁よりも、そうした、移動するごとの多様なシーンの展開を体験することもできる。こうしたこともこの空間の魅力を増すことになる。


プレイスペースからリビングとダイニングを見る。変形した壁の形によって、移動するごとに見えるシーンが多様に変化する。

プレイスペースからリビングとダイニングを見る。変形した壁の形によって、移動するごとに見えるシーンが多様に変化する。

プレイスペースからの連続性を考えて、壁の小口はプレイスペースと同じものにしている。

プレイスペースからの連続性を考えて、壁の小口はプレイスペースと同じものにしている。

書斎のあるレベルからリビングとキッチンを見下ろす。

書斎のあるレベルからリビングとキッチンを見下ろす。

階段室の上にはトップライトが開けられている。

階段室の上にはトップライトが開けられている。


木にもこだわる

イメージとしての木だけでなく、リアルな木のほうにもこだわった。「雑誌などを見て家のイメージを膨らませていた時に、私たちの興味が、別荘地のように、木がたくさんあるお家に向いたんですね。でも、手入れがかなり大変だというのもわかっていたので、そこをちゃんとおさえた上で緑を感じながら生活できればいいなと」(奥さん)

そこで大きな2本の木のうちの1本を季節の感じられる落葉樹、もう1本は常陽樹にしたいと富永さんにリクエストし、落葉樹はカエデ、常葉樹のほうはオリーブにすることに。オリーブの木は、寝室からは幹しか見えないため、幹の形がよく、かつ、2階の子ども部屋から見たときに葉振りが多すぎずというところで、農園にまで赴いて実物を見て決めたという。


オリーブの木が子ども部屋まで伸びてきている。将来は手前のデッキスペースにも緑を置くことを考えているという。

オリーブの木が子ども部屋まで伸びてきている。将来は手前のデッキスペースにも緑を置くことを考えているという。

周囲の外部空間もこのように木のイメージでデザインされている。

周囲の外部空間もこのように木のイメージでデザインされている。


カエデは玄関前に植えられている。

カエデは玄関前に植えられている。

お風呂に入りながらも緑を楽しめる。

お風呂に入りながらも緑を楽しめる。


2月に引っ越してきてから10カ月ほど。「ひとつひとつの空間がほどよいサイズであることで、使い分けがすごくできる。実際に住んでみて、心地よいサイズ感であることも感じています」と阿部さん。
昔ながらの日本家屋の、ひとつひとつの部屋がふすまで仕切られているような感覚もあるという。「ひとつの空間は少し狭いけれどつながっているから広く感じるし、外と中も仕切られているようでつながっていてという、この空間の使い方がすごく心地がいい」とも。


2階は将来の子ども部屋。現在は書斎スペースとして使われている。

2階は将来の子ども部屋。現在は書斎スペースとして使われている。

子ども部屋から左に下ると玄関、上へ上がって正面がキッチン。

子ども部屋から左に下ると玄関、上へ上がって正面がキッチン。

下が1階の子ども部屋、上が書斎スペース。

下が1階の子ども部屋、上が書斎スペース。
 

1階の子ども部屋からもオリーブの木が見える。

1階の子ども部屋からもオリーブの木が見える。


奥さんのお気に入りスペースは、この家で広さがいちばん感じられる、9分割されたうちの「ど真ん中」にあるリビング。最高高さが4.3mあるうえに、左右前後へと全方向に視線が抜けていく。

さらに奥さんはこの家で過ごす中でも夕暮れ時が好きだという。「日が直接は入ってこなくなって、でも日差しが外の壁に反射してすごく明るい中で、少しずつ日が沈んでいく時の感じがけっこう好きですね」。
木にこだわった家づくりは、さらに、こうした自然(現象)へも開かれることで居心地の良さを増しているようだ。


「穴蔵のような感じが楽しい」(奥さん)という半地下の寝室。地下部分は仕上げを変えている。目の前にオリーブの木が見える。

「穴蔵のような感じが楽しい」(奥さん)という半地下の寝室。地下部分は仕上げを変えている。目の前にオリーブの木が見える。

キッチンからダイニングとリビングを見る。

キッチンからダイニングとリビングを見る。

奥さんお気に入りのリビングは前後左右に視線が抜けるだけでなく、最高高さも4.3mと高い。

奥さんお気に入りのリビングは前後左右に視線が抜けるだけでなく、最高高さも4.3mと高い。


屋根は斜線制限で削られた形に。この壁により周囲の視線からは守られている。9分割したプランのうちの道路側の3つがアプローチと駐車スペースになっている。

屋根は斜線制限で削られた形に。この壁により周囲の視線からは守られている。9分割したプランのうちの道路側の3つがアプローチと駐車スペースになっている。


阿部邸
プロデュース NK注文住宅コンシェルジュ
設計 富永哲史建築設計室
所在地 東京都世田谷区
構造 木造
規模 地下1階地上2 階
延床面積 117.6 m2