家具・日用品にも時間を惜しまず素材に、色に、こだわり尽くした家づくり

家具・日用品にも時間を惜しまず素材に、色に、
こだわり尽くした家づくり

「ある建築家のオープンハウスに偶然参加させてもらったことがあって、その家がすごく素材感のある家だったんですね。それで、目指す方向性はこれだなと思って」と振り返るのは林さん。奥さんも「あそこでガラッと変わって。本当に、そのオープンハウスに行って良かったですね」と頷く。

ガラッと変わったのはインテリアの仕上げのこと。着工し上棟式もすでに済んでいたタイミングだった。「少し後だともう変更できないぐらいのぎりぎりのところで、2人の仕事が終わった後に、建築家の井上さんに来ていただいて、夜中遅くまでみんなでああでもないこうでもないと会議をしましたね」と林さん。


キッチンからリビングを見る。窓の外に見える木は、すぐ近くにある神社に隣接した公園のもの。

キッチンからリビングを見る。窓の外に見える木は、すぐ近くにある神社に隣接した公園のもの。


次から次へぽんぽんと

大きな変更の起点となったその会議で、リビングでは、それまで白く塗装するはずだった造付けの収納やカウンターが木地をそのまま生かした素材感のある仕上げへと変わった。この変更とともに、1 階では玄関ホールの床がコンクリートに変わり、その隣の壁と中2階の収納ボックスが黒の杉板張りに変更になった。「1カ所変えたら、それに合わせて、ぽんぽんぽんと話をしながら決まっていって。少し増額になりましたけど、結局は、ほとんどそのままで行きましたね」

インテリアの変更にともない、建築家は外観にも大きく手を加えた。「ガルバリウムの平張りをしているところを全部黒にするなど、僕らが変えたところに合わせて全体の調和を取るような感じで色を入れていってくれました」


スキップフロアにしたため、視線が抜ける。黒い部分は収納。 視線の抜けと収納が多いのもこの家の特徴だ。

スキップフロアにしたため、視線が抜ける。黒い部分は収納。
視線の抜けと収納が多いのもこの家の特徴だ。

階段室とLDK を仕切る戸はキッチンの奥へまで移動できる。

階段室とLDK を仕切る戸はキッチンの奥へまで移動することができる。

リビングより半階高い子ども部屋の一家4 人。リビングから、子 ども部屋で遊ぶ2 人のお子さんの姿がよく見える。

リビングより半階高い子ども部屋の一家4 人。リビングから、子
ども部屋で遊ぶ2 人のお子さんの姿がよく見える。

リビングのフローリングはヘリボーン張り。通常は高価だが、安くていい材があると教えてもらい実現した。

リビングのフローリングはヘリボーン張り。通常は高価だが、安くていい材があると教えてもらい実現した。


白から黒へ

木とコンクリートにガルバリウム鋼板と、素材感と色味の豊かな家へと方向転換した林邸だが、ニュートラルな白中心のインテリアからのシフトは、冒頭で紹介した会議の前から始まっていた。「妻が窓のフレームを黒くしたいとすごく言っていたんですが、僕と井上さんは最初、どちらかと言うと反対していたんですね」と林さん。

奥さんは「真っ白い家だと、自分たちのものじゃない感じになってしまう」気がして嫌だったという。「窓枠を黒くしてもらったら、階段も黒くなって」。それで、「合わせて合わせてどんどん黒が増えていった」という。


階段室の前に戸がある状態。最初のプランから、「格好いいだけでなく、動線や収納もよく考えられていて良い家ができる」と感じた林さんは、竣工までの1年間、多いときはほぼ毎日という高頻度でブログに家づくりのプロセスを綴り続けたという。

階段室の前に戸がある状態。最初のプランから、「格好いいだけでなく、動線や収納もよく考えられていて良い家ができる」と感じた林さんは、竣工までの1年間、多いときはほぼ毎日という高頻度でブログに家づくりのプロセスを綴り続けたという。


家具や日用品も

建築のみにとどまらず、家具や日用品などにもこだわった。リビングに置かれたイームズのシェルチェアは、今は生産されていないヴィンテージものだ。ヤコブセンのセブンチェアとどちらにするか迷ったが、目黒にあるお店で偶然見つけて購入した。長大作デザインの低座椅子は、捨てられる直前だったものを譲り受けて張り地を替えた。張り地の赤と濃紺が差し色となってリビング空間を華やかに彩る。

ダイニングテーブルとベンチはNAUT(ノート)という名古屋の家具メーカーの製品で、スチールの脚は黒色。椅子はカイ・クリスチャンセンのNo.42で、黒色にこだわって張り地を黒にした。テーブル上のライトはflameという芦屋の照明メーカーのデコランプという製品。これも「空間全体のテイストから黒に」。


キッチンは床・天井以外、白で統一されている。

キッチンは床・天井以外、白で統一されている。
 

長大作デザインの低座椅子はこの2色に張り地を張り変えた。その後ろにあるのはヴィンテージもののシェルチェア。

長大作デザインの低座椅子はこの2色に張り地を張り変えた。その後ろにあるのはヴィンテージもののシェルチェア。

ダイニングの照明はflameというメーカーのデコランプという製品。

ダイニングの照明はflameというメーカーのデコランプという製品。

ダイニング脇の棚。細々とした日用雑貨を収納するボックスは、棚の寸法に合うものをIKEAで見つけて購入。

ダイニング脇の棚。細々とした日用雑貨を収納するボックスは、棚の寸法に合うものをIKEAで見つけて購入。


日用品も、たとえそれがごみ箱であっても、時間をかけて入念に調べ上げ、納得したものしか買わないというこだわりようだ。ダイニング脇の棚にあるボックスは、なかなか合うサイズのものがなくようやくIKEAで見つけて購入したという。

「僕もそうなんですが、妻も仕舞わずに表に出しておくものを買うときはとてもこだわって。僕が一生懸命探してこういうのがあるって見つけてきても、妻が“ 駄目、駄目”みたいな感じでけんかになることもありますね(笑)」

納得できたものしか買わない。この強いこだわりからは、日用品までも“ 自分たちの家づくり”の一環としてとらえる2 人の決意のようなものさえ感じられる。

この新居への引っ越しが取材の約1カ月前。まだまだこれからも林邸の“ 家づくり”は続くに違いない。


1 階玄関ホールの床はコンクリート仕上げ。これに合わせて 壁を黒の杉板張りに。

1 階玄関ホールの床はコンクリート仕上げ。これに合わせて壁を黒の杉板張りに。

坂の途中の静かな環境に立つ林邸。

坂の途中の静かな環境に立つ林邸。

玄関部分に使われた色鮮やかな材は、チャンフータという東アフリカ産の木材で、耐候性に優れたものという。

玄関部分に使われた色鮮やかな材は、チャンフータという東アフリカ産の木材で、耐候性に優れたものという。

玄関周り。この家の特徴を表すようにさまざまな素材と色が 使用されている。

玄関周り。この家の特徴を表すようにさまざまな素材と色が使用されている。


林邸
設計 GEN INOUE
所在地 東京都大田区
構造 木造
規模 地上2 階
延床面積 87.58 m2