Architecture
収納分離でゆったりリラックスハワイ好き家族が
目指した家づくり
趣味の基地
「最初は、リビングは何畳で開口部はこれくらいの大きさがほしいとか数字を示して建築家の土田さんにお願いしていたんですが、これを1回やめて、こういう空間がいいですという話に変わっていったんです」
こう語る市川さんのお宅は、玄関ドアを開けると目の前に住宅とは思えない空間が現れる。土間になった1階の壁が、スポーツ関係の道具類やキャンプ用具、さらに洋服などで埋まっているのだ。
マンション暮らしの時はキャンプでもサーフィンでも出かけるのに道具の出し入れがすごく面倒だったが、気軽な感じで出かけられるようになるのではと思ったという。
土田さんのほうでは趣味の道具関係が大量に生活空間に入ってこないように、1階を収納空間にして2階の生活空間と水平に分離することがまず大事だと思ったという。「僕もいろいろとスポーツをしているので、サーフボードや自転車を家の中に入れる際にあちこちにぶつけながらというのがストレスになるのはよくわかる。それで、そのようにならない空間にしたいなと」
2つの島
1階の中央には作業台のように見える島が2つあるが、これは収納台で、小さいものを2つずつ組み合わせたもの。「打ち合わせの際に真ん中あたりにも収納を確保したほうがいいねという話が出て提案をしました。壁がモノで埋まっていくのはわかっていたので、ローテーブル的なほうが空間を狭くせずに収納を確保できるということでつくることに」(土田さん)
さらに、1階で読書をしたいというリクエストもしたという市川さん。本を読んだり、ノートパソコンで仕事のメールのやり取りなどもできるようにしたかったという。
「スペースがすごく限られているのでいろいろと兼用していかないといけない。それで1階も、洋服も置けるし読書もパソコンもできる、ということでいろいろ兼用ができるスペースにしようと」
ゆるくリラックスできる空間
モノに溢れた感のある1階から上がると、2階には対照的に最小限のモノしか置かれていない。この空間にはハワイが大好きという市川夫妻の考えが大きく反映している。「ハワイの何がいいかというと、波の音を聴きながらビールを飲んで風にあたってそのまま寝落ちしてしまうようなことができるところ」と市川さん。
要するに、ぼーっとしてなにもしないで過ごせる空間。2階に関しての市川さんのリクエストは、抜け感と開放感があり、ゆるくリラックスできるということだった。「最小限のモノしか置かれていない」のは、このリクエストからの必然だった。
「ダイニングは居心地の良い場所にしたかったのでまずこのベンチをつくってもらいました。気持ちが良くて、いつの間にか寝てしまうようなときもあります」
ちょっと変わったテラス
ハワイ好きの市川さんが「風が当たる場所がほしいので外の空間を設けてもらった」というのが2階の道路側にあるテラスだが、この場所がちょっと変わったつくりになっている。室内から見て右側部分が壁で囲われ左側は家形にくり抜かれた開口にルーバーが取り付けられているのだ。
遮光と人通りが意外と多いという道路側からの視線を考慮してデザインされたものだが、こうしたつくりにしたのにはこれとはまた別の理由もあった。
「テラスの部分に壁があることで、テラスの手前の窓を開けたときにテラスまでが部屋だと感じられる。使い方によって室内空間の広さを変えられるようにということもあって壁をつくりました」
2階ではみんなで一緒に食事をしたり、話をしたりする。1階ではお互いにバラバラのことをやりながら1カ所に集まっているというのが居心地がいいという。アクティヴィティの点でも1階と2階は対照的な空間になっているようだ。
設計 no.555一級建築士事務所
所在地 東京都世田谷区
構造 木造
規模 地上2階
延床面積 102.41m2