Architecture
斜面の庭はドッグランに居場所によって景色が変わる
季節を味わう六角形の家
![191001H_head 191001H_head](https://img.100life.jp/2018/09/26205235/191001H_head.jpg)
住宅街で自然の豊かさを満喫
公園に隣接した傾斜地に建つ平邸。建築家の真知子さんとドッグトレーナーの和憲さんが、ゴールデンレトリーバーとセキセイインコと共に暮らしている。眼下に雑木林が広がる自然豊かなロケーションは、まるで別荘地に来たよう。大型の商業施設が集まる町田駅から徒歩10数分とは思えない静かな環境である。
敷地は、西側に公園を望めるものの、ほかは隣家に囲まれた私道の突き当り。自宅の設計を手掛けた真知子さんは、「公園を一望できるよう、この眺めを最大限に生かすことを第一に考え、“六角形”の家をプランニングしました」と話す。
1階、2階とも西側は大きく開口し、公園の景観を充分に取り入れた。家の形は、正三角形の角を取った六角形。構造上も、整形なので耐震強度が高いという。
また、南東に庭を造り、北東の車庫まわりにも植栽し、公園側と合わせて3方向の窓からさまざまな表情の緑を楽しめるように設計した。隣家が視界に入らないよう工夫したことで、住宅街なのに自然の中で暮らしているような気分が味わえる。登山が趣味で、自然を愛するご夫妻らしい家となった。
![傾斜地に建つ。正三角形の角を取った六角形の外観。公園に面した西側は、ほぼ全面窓になっている。](https://img.100life.jp/2018/10/26205253/191001H_01-700x467.jpg)
![2階の西側の窓。公園を借景にしながら気兼ねなく寛げる。夏は鬱蒼とした緑になるが、冬は全て葉が落ち、景色が抜け、青空が広がるそう。](https://img.100life.jp/2018/10/26205305/191001H_02-700x467.jpg)
![](https://img.100life.jp/2018/10/29221839/191001H_03l-re-350x233.jpg)
![南東に開口を設けたピークくんの部屋。窓の外には、路地状の庭が。植栽と板塀で隣家が気にならない。](https://img.100life.jp/2018/10/26205340/191001H_03r-350x233.jpg)
家族の気配を感じて暮らす
平邸は、外観だけでなく、“六角形”が随所に登場する。まず、家の中央には、天井高4.8mの六角形の吹き抜けがある。吹き抜けの下は、ダイニングを配置し、それを囲むように大小6つの部屋が並ぶ。キッチンやリビング、階段室兼書斎は六畳大の六角形の部屋に。それぞれの部屋の間には、六角形を半分にした3畳大の台形スペースがあり、玄関や犬の部屋、そして“眺めの部屋”になっている。
観葉植物が置かれ、内も外もグリーンを楽しめる“眺めの部屋”は、「床から天井まで部屋幅いっぱいに開かれた窓から、大迫力の自然が感じられ、時間を忘れてぼーっとしてしまいます(笑)」と、真知子さん。仕事の合間にリフレッシュしたいときなどに過ごす、お気に入りの場所という。
ロールスクリーンを使用すれば、各部屋を仕切ることもできる。セキセイインコのプルプルくんを放鳥するときは、ピークくんにいたずらしないようピークくんを犬の部屋に入れてロールスクリーンを下げるそう。それ以外の時間はほとんど、ひと続きの開放的な空間を満喫している。1階、2階のどこに居ても家族の気配を感じられ、安心して暮らせる造りになっている。
![家の中央にある六角形の吹き抜け。1階、2階をゆるやかにつないでいる。](https://img.100life.jp/2018/10/26205419/191001H_04-700x1050.jpg)
![白い壁や天井は珪藻土、板張りの壁、木製の建具など身体に優しい自然素材を使用。ダイニングは真知子さんの仕事場にもなる。近くに和憲さんとピークくんがいるのが日常の光景。](https://img.100life.jp/2018/10/26205506/191001H_05-700x469.jpg)
![公園側の窓をたっぷりとったリビング。六角形の部屋におさまりがよいようテーブルは三角形を探した。「代々受け継がれて使用する、中古家具が好き」と真知子さん。このテーブルも中古とのこと。](https://img.100life.jp/2018/10/26205527/191001H_06-700x467.jpg)
![六角形のキッチンスペース。壁に沿った扇型のカウンターは使い勝手がよいとのこと。ご夫妻で立ち、一気に料理を仕上げるそう。](https://img.100life.jp/2018/10/26205546/191001H_07l1-350x233.jpg)
![階段室兼書斎。地下はRC造で、1階、2階の木造と壁の厚みが異なるため、その厚みの差を利用して本棚にした。](https://img.100life.jp/2018/10/26205559/191001H_07l2-350x233.jpg)
![観葉植物に囲まれた“眺めの部屋”。おこもり感があり、開放的な外とのギャップが心地よさを倍増する。](https://img.100life.jp/2018/10/26205619/191001H_07r-350x525.jpg)
![肩のり&手のりのセキセイインコ、プルプルくん(7歳・オス)。鳥は“パピプペポ”が覚えやすいそうで、ピークの名前もパ行から考えた。山好きのお二人らしく、山の頂上を意味する名前に。プルプルくんも呼ぶのだそう。](https://img.100life.jp/2018/10/26205641/191001H_08l-350x233.jpg)
![プルプルくんを放すときは、ロールスクリーンを下げてから行う。毎日2時間ほど放すそう。飛ぶことが大好きで、かごから出さないと催促されるとか。](https://img.100life.jp/2018/10/26205654/191001H_08r-350x233.jpg)
ワクワクする回遊性のある間取り
2階は、中央の吹き抜け部分を囲むワンルーム空間で、回遊できる間取り。吹き抜けとの間は、六角形の半分にあたる3面のみ壁にした。見通しをあえて抑えることで、角を曲がるたびに目に飛び込んでくる景色が新鮮に楽しめ、毎日の生活にワクワク感を添えている。
2階の角に位置した寝室やリラックスルーム、水回りの天井も六角形で、傘をさしたような形状になっている。杉板の木目と外の緑とのコントラストが美しい。「リラックスルームの椅子に座って外を眺めると、公園の緑だけでなく、空まで抜けて見えるのが開放感があって気持ちいいですね」と、和憲さんはここからの風景が最も好きという。
2階とはいえ、4階ほどの高さがあり、野鳥もたくさん来訪するそう。鳥のさえずりや木々の揺れる音を聞きながら、時間とともに移り行く光の中にいると、まさに別荘で過ごしているような非日常を味わえる。
![リラックスルーム側から2階を見渡す。中央の吹き抜けのまわりに設えた回廊のよう。](https://img.100life.jp/2018/10/26205923/191001H_09-700x467.jpg)
![ベッドルーム側から公園や吹き抜けを見る。場所によって、違った景色が楽しめる。](https://img.100life.jp/2018/10/26205940/191001H_10-700x467.jpg)
![景色を優先し、洗面スペースには思い切って鏡を付けなかった。「目の前に緑が広がり、毎朝、気持ちいいです」と真知子さん。](https://img.100life.jp/2018/10/26205959/191001H_11-700x467.jpg)
![階段を上がってくるとリラックスルームがある。椅子に身を委ねて外を眺めていると、四季折々の木々に加え、広い空も感じられる。和憲さんのお気に入りスペース。](https://img.100life.jp/2018/10/26210019/191001H_12l-350x525.jpg)
![洗面カウンターの後ろ側はトイレとバスルームで、六角形の半分の台形部分にぴったりおさめている。](https://img.100life.jp/2018/10/26210034/191001H_12r-350x525.jpg)
![洗面カウンターの奥、北東側の廊下の両側を収納スペースに。高窓からの光が入り、明るい。](https://img.100life.jp/2018/10/26210056/191001H_13l-350x525.jpg)
![ベッドルームを背にして、バスルームに向かう南東側の廊下。日当たりがよい窓側(右側)を室内干しスペースに。吹き抜け側(左側)はクローゼットと洗濯機置き場。](https://img.100life.jp/2018/10/26210109/191001H_13r-350x525.jpg)
人もペットも心地よく
この家は、ドッグトレーナーの和憲さんの仕事場も併設している。斜面の土地の高低差を利用し、地下室を造り、犬のトレーニングルームとした。また目の前に広がる庭の斜面はドッグランとして活用。大型犬の足腰を鍛えたり、トレーニングしたりするのには、傾斜地は好都合だったという。
和憲さんが“相棒”というのが、ゴールデンレトリーバーのピークくん。預かった犬のトレーニングの際には、見本を示す役というだけあり、とても賢く穏やかで、和憲さんに従順だ。
扉のないワンルーム空間や小さめの家具を配置しているのは、ピークくんが動きやすいようにと考えてのこと。また、1階の床材はひんやりとするタイルとあたたかなカラマツを貼り分け、季節や時間帯によって心地よいところに行けるように配慮した。
ピークくんだけでなく、もちろん人間も、その時々の気分で過ごせる居場所がたくさんあり、座る場所によって目に入る景色が変わる。ご自宅が仕事場のお二人は、時間によって刻々と変わる部屋の表情や何気ない瞬間に季節を感じながら、大らかに過ごされているようだった。
![トレーニングの様子。和憲さんの指示どおりに動けるピークくんは、優秀な看板犬!](https://img.100life.jp/2018/10/26210218/191001H_15-700x467.jpg)
![地下のトレーニングルーム。ペットホテルとして使用することもある。](https://img.100life.jp/2018/10/26210231/191001H_16-700x467.jpg)
![2階からドッグランを見る。ウッドデッキでは、季節のよいときにティータイムを過ごすことも。](https://img.100life.jp/2018/10/26210251/191001H_16l-350x525.jpg)
![トレーニングルームのある地下のトイレは、犬をモチーフにしたドアノブが可愛い。](https://img.100life.jp/2018/10/26210311/191001H_16r1-350x233.jpg)
![平邸は犬をはじめとした動物のオブジェが多い。この木の置物たちは、旅先でひとつずつ購入しているうちに集まったもの。](https://img.100life.jp/2018/10/26210326/191001H_16r2-350x233.jpg)
![ピークくんは和憲さんが大好き。「夫が留守にすると、寂しくてお腹をこわすほどです(笑)」と真知子さん。撮影中もずっと和憲さんにくっついていた。](https://img.100life.jp/2018/10/26210355/191001H_17l-350x525.jpg)