Architecture
こだわりのキャットハウスが完成子育てを愉しむ
家族とともに成長する家
防火地域ゆえの制限
下町的な情緒が残る都内の住宅街。もともと祖父の家が建っていたこの地に、二世帯住宅を建てた一級建築士の今野暁史さん。「このあたりは防火地域のため、3階建て以上もしくは100m2を超える建物は耐火建築物にしなくてはいけないという制限があります。コストや地盤などを考えて、建物を2棟に分け、それぞれ2階建てで100m2以下に抑えることに。隣居スタイルの二世帯住宅にしたのです」
今野さんと妻の恵理子さん、花梨ちゃん(8歳)、ロシアンブルーのひめちゃん(1歳半・メス)が暮らす建物は、延床面積99.41m2。見事に100m2ギリギリに抑えられている。
1階は、リビング、ダイニング、キッチンがひとつながりになったワンルーム。リビングは一段下げることで天井高3mの開放的な空間になっている。ダイニングは逆に天井を下げて、おこもり感を演出。壁を作らず、天井や床の高さに変化をつけて緩やかにゾーニングしているため、広々とした印象に導いている。
南側には高層マンションが建つが、家の中にいるとそれを全く感じさせない。「マンションと隣接するところには2層式の駐輪場があります。それが視界に入らないよう配慮しました。面積の狭さをカバーするために、視線が抜けて奥行きを感じられるよう設計しています」
南側は閉じて高窓を設け、大きく開いた西側の窓からは姉世帯と共有の庭が眺められるようにした。キッチン脇や階段下などにも窓が設けられ、気持ちよく視線が抜ける仕掛けになっている。
北欧アンティーク家具を主役に
フィンランドの建築家、アルヴァ・アアルトが好きという今野さん。インテリアコーディネーターの恵理子さんとは新婚旅行で北欧4か国をまわり、一昨年はご家族でフィンランド旅行をされたという。インテリアは「北欧アンティークの家具を中心に」というのはご夫妻で意見が一致した。「北欧家具を多く輸入している家具屋と設計段階から相談し、図面に反映しました。サイズやデザインの希望を出して、買い付けの際に探してもらったのです」
玄関脇に置かれたサイドボードやダイニングのドローリーフテーブルなど程よく使い込まれた味わいのある北欧アンティーク家具が、明るすぎない空間になじむ。家具のチーク材に合わせて床材もチーク材に。造り付けの収納部分はラワン材をチークっぽく着色した。テイストを揃え、落ち着いた雰囲気に仕上げている。
チーク材の床もリビングの土間も、すべて深夜電力で蓄熱した床暖房を採用。朝起きたとき、帰宅したとき、いつもあたたかくて快適という。
娘と猫のための部屋が登場
子どもが生まれる前に建て、今年9年目を迎える今野邸。「そろそろ娘を一人で寝かせようと思い、“がらんどう”だった子ども部屋のリノベーションに着手しました。もともと2つに分けることを想定していた部屋のため、娘一人では広いと思い、娘と猫の部屋ということで考えました」
ツリーハウスをイメージした二段ベッド式のキャットハウスは今野さんのアイディア。猫の行動を観察し、猫の習性や好む素材をチェックしたうえで設計し、家具屋へ発注したという。キャットハウスだけでなく、クローゼット上のオープン棚から壁面収納へと“キャットウォーク”も設けた。
こうして、この夏完成したキッズ&キャットルーム。「妻にはやりすぎだと笑われましたが、娘は飛び上がって喜んでくれました」と、今野さんもとびっきりの笑顔で語ってくれた。「猫とベッドで一緒に寝たり、籠って遊んだり。猫と戯れることでの子どもの成長が楽しみです」
リビングと一体化した“おかえり玄関”
共働きで家事を分担しているご夫妻。効率よく家事をこなせるようにした工夫が随所にみられる。収納をたっぷり取り、適材適所の収納を恵理子さんが考えた。「娘といる時間は、夫のほうが長いかもしれませんね」と話す恵理子さんは、出産後1年半で職場復帰。自宅で仕事をしていた今野さんが、帰宅する花梨ちゃんを出迎えてきた。リビングの一角を書斎としている今野さん。「子どもが帰宅したら一旦仕事をやめ、子どもが寝てから再開します」という。
今野さんが“おかえり玄関”と呼ぶ、リビングと一体化している玄関は、帰宅したときの花梨ちゃんのそのままの表情が自然とうかがえ、学校で何かあったかな、などと敏感に感じ取れるという。
「子どもの小さい時期に一緒に居て成長を見たかったので、その願いが叶ったことが嬉しいですね。これからも家族の成長に応じて、そのときどきで家族で相談しながら変化していけたらいいなと思います」