Architecture
玄関から寝室までひとつながりの家開放性とともに
家族の気配を感じながら暮らす
つながり感のある空間
井岡邸が建築面積約40㎡とコンパクトながら空間に開放感が感じられるのは、まずひとつは1階から中2階を経て2階に至るまで水回り以外の場所を壁を立ててきっちりと仕切ることはせずひとつながりのつくりにしたことにある。
「“全体的につながりがある感じの空間がいいです”というのは最初にお伝えしました」と奥さん。さらに「ある程度プライバシーも守りつつも、子どもが大きくなったときにまったく話もしないで自分の部屋にこもってしまうようなのも避けたいということもありました」と話す。そして井岡さんが「“どこにいても気配が感じられる”というのも要望にありましたね」と加える。
いつも開放性を重視して設計をしているというIN STUDIOの奥村さんは「中2階をつくる案を提案したときに奥さんが“ちらっと見えるという感じではなくて、中2階をつくるならしっかり見えるようにしたい”とおっしゃったのがとても印象的で、そういう発言もこの家全体のつながりをつくるというコンセプトにつながっていったのかなという気はします」と話す。
光を浴びたい
それともうひとつポイントになったのが奥さんの「光を浴びたい、日光がすごく入るようにしたい」というリクエストだった。「以前住んでいたアパートが東向きで、朝は明るいものの午前中のうちに暗くなってしまっていたので、“電気を付けなくても明るい空間”にあこがれていました」
このリクエストに応えるために1階のリビング部分の天井高を3.1mと高く取り、さらに正面(東南)側の開口を大きく取った上で、隣家に接したほかの三方には縦長の開口をつくっている。
「正面以外は囲われていて前面にだけしか開けられないのはもったいない。お隣の中庭のあたりからも光が入れられるので、うまく開口を取ってほかの三方からも光をもらうようにしました」(奥村さん)
内と外をつなげる
開口は壁に縦長のものを開けたように見えるが、建築的には壁柱のあいだにできた隙間を開口としているのだという。「壁柱をつかったピロティのような感じで、壁柱と壁柱の間が開口になったり玄関になったりというふうなつくりになっています」と奥村さん。
その壁柱にスラブを載せて2階に寝室を設けるという構成だが、そのスラブが外部へと抜けて庇になっている。また1階の床はフローリングが途中からコンクリート平板に変わりこれも外のコンクリート平板へとつながっている。「開放的というのをコンセプトにしていたので、外のものが中に入ったりあるいは中のものがそのまま外に出たりというかたちで連続感をつくっています。庭をつくるので庭との距離を心理的に近いものにしたかったというのもあります」(奥村さん)
IN STUDIOからの提案だった中2階の机の置かれたスペース。現在、パソコンの作業や読書に使っているが将来は娘さんの勉強室にもなるという想定で、夫妻ともに気に入っているという。「家で子どもと2人でいてあそこで作業しているときに娘が下にいても何をしているのかがわかる感じがいいですね」(井岡さん)。
奥さんも「この子が下にいても何か言えば顔を合わせられるし会話もできるので一人にさせている感じがしないですし、子どものほうもママがいないという感じにはならないのがいいですね」と話す。
半年ほど住んでみて「“もっとこうすればよかった”ということがないね」ってよく話すという井岡夫妻。コンセントの位置など細かいところまでよく考えこまれた設計のおかげもあるが、希望であった開放性とともにつながりや気配を感じるということがうまく実現されているところからの発言でもあるのだろう。
井岡邸
設計 IN STUDIO
所在地 神奈川県横浜市
構造 木造
規模 地上2階
延床面積 72.28㎡