Architecture
職住一体の建築家の自邸 ゆるやかに居場所をつなげ、
仕事と生活の場をひとつに
様々な役目を持つ開口枠で空間を分ける
建築家の小田内晃彦さんの職住一体の自邸は、働く場所と生活する場所を分けず、家族で共有するスタイルだ。食卓で平日はクライアントとの打ち合わせをし、書棚には建築関係の書籍と共に奏人(かなと)くんの絵本も並ぶ。
「家の一部に小さなオフィススペースを作るのではなく、すべての場所がオフィスであり、同時にすべてのスペースが家族が暮らす家になるよう考えました。平日の日中、妻と子どもが外出している間、使っていない部屋があるのはもったいないですから(笑)」
4つの木製の開口枠が、それぞれのシーンをゆるやかに分ける役割を担っている。
「開口枠で空間を分けることで、家族がそれぞれ好きな場所で過ごしていてもお互いの気配が感じられます。この付かず離れずの距離感が、私たち家族にとって心地良く過ごせる絶妙なさじ加減のようです」
建築の一部が家具にもなる
4つの開口枠は空間を分けるだけでなく、時にデスク、時にベンチ、そしてカウンターテーブル、収納庫、子どもの遊び場と、臨機応変に用途を変える。開口枠内に設置したカーテンや引き戸を間仕切りとして使えば、プライベートを独立させることも可能だ。
また、1階の4つの空間は床材が違う。ダイニングはモルタル、ソファのある部屋はフローリング、キッチンがリノリウム、テラスにはウッドデッキ。どんなことをして過ごすスペースなのか、床材が雄弁に語ってくれる。
大きく回遊できる家
2階は主寝室や2つの子ども部屋、洗面所とバスルームなどで構成されている。ダイニング側とキッチン側にある2つの階段を使い、大きく回遊できる。
1階は4つの開口枠が様々な役目を果たしているのと同様、2階は回遊経路が場所によって役割が変化するのがおもしろい。洗面台が廊下になり、子ども部屋ではデスクとなるのだ。
収納スペースはたっぷりと
「住宅を設計する際、事前にお施主様の持ち物を細かくヒアリングし、収納するものと場所を整理します。自邸もどこに何を収納するのかをあらかじめ決めて設計しました」
たとえば、ダイニングとキッチンの間の収納扉は、下15cmほど開けて、ルンバが自動で帰ってこれる基地に。仕事で使う建材のサンプルは、自然光が入る場所の近くで収納。ドライヤーを入れる引き出しにはコンセントを設置し、簡単に出し入れできるようにしている。
三角屋根の家の形が好き、という奥様のリクエストで、4つの家型が重なるように寄り添う外観になっている。室内は三角屋根を生かした三角天井。
“家”を感じるファサードと室内で、帰ってくるのが楽しみな小田内家の“我が家”になっている。
小田内邸
設計 小田内晃彦建築設計事務所
所在地 千葉県鎌ケ谷市
構造 木造
規模 地上2階
延床面積 138㎡