DIY
もと医院兼住居をリノベ古いものに命を吹き込む
独創的なアイデアとDIY
DIYの楽しみを知った
かつて医院だった築45年の家屋を購入。5年ほど前にリノベーションした映像作家の髙木聡さん。
「古いものが好きなので、リノベーションが前提でした。新しくつくるよりはリメイクし、再構築したい。もと医院という箱も、アレンジしがいがあるんじゃないかと」。
最初に相談したのはリノベーションデザイン会社FIELDGARAGEの原直樹さんだった。
「仕切りを取り払ったり、床を張り替えたり、あとはキッチンの設計など、ざっくりしたイメージを考えてもらった後、僕にふさわしい面白い会社があると、HandiHouse projectさんを紹介してもらったんです」。
服のリメイクなど本業以外でもものづくりが好きだった髙木さん。施主と一緒にDIYで家づくりを行うHandiHouse projectと出会ったことで、その創作意欲が炸裂する。
「道具の使い方など入り口を色々教えてもらったことで、はまっていきましたね。ここまでやってしまうとは、当初は思ってなかったのですが(笑)」。
画一的にはしたくない
お子さんがレゴブロックで作った表札、幾重にも色を塗り重ねた玄関まわり。そこから1歩中に入ると映画の世界のようなワンダーランドに。
「無垢の床に白い壁というイメージはあったけど、決めた感じが好きじゃないんです。映画のセットにしてもわざと壁を汚したりして自然な感じを出しますし」。
画一的にしたくないと悩んでいた壁にはOSB合板を使い、上から白いペンキを塗布。ムラが出て“適当な感じ”に仕上がったことで、俄然やる気に。
「玄関ドアや階段はウレタン塗装がされていたので、電動カンナなどで表面をはがしました。階段はHandiHouse projectさんが持ってきた4色の塗料を一段ずつ塗り分け、手すりは片方に家の地下から出てきた給湯管、もう片方に以前から持っていたサルスベリの木を使いました」。
固定観念にとらわれない発想がユニーク。1枚1枚作品のように、同じものが存在しないドアは、レントゲン室で使われていたという鉛をまわりにあしらったり、どこかから拾ってきたトタン板をアレンジしたり。
「最初に作ったのは仕事部屋のドアなんです」。
古材の板に車輪、古い棚、木のコブなどを取り付け、古下駄や撮影用のマイク、ハワイのお土産まで、あらゆるものをディスプレイ。
「工事中しばらく間があいた時期があって、戻ってきたらこれができていてすごく驚きました(笑)」というのは、HandiHouse projectの坂田裕貴さん。仕事部屋に通じるそのドアは、この家全体を象徴するかのようだ。
手作り感あふれるキッチン
「打ち捨てられているものが気になる」と拾い集めたもののほかに、この家をコラージュする古道具は、アンティークショップを営む妻が持ってきたもの。その妻の希望は主にキッチンに反映された。
「もともと仕切りはなるべく排除したかったのですが、特にキッチンは、当時まだ幼かった3人の息子に目が届くようオープンにしたいと妻が希望しました」。
リビングとつながった6畳ほどの空間は、中央にコンクリートの腰壁で囲ったアイランドキッチンを設置。広々としたステンレスのキッチン台はオーダーしたもので、収納扉などは設けず、古道具を引出しとしてアレンジした。
「閉じるという考え方があまりないんです。調理器具なども、金網や金具など色んな材料でつくったもので吊るしています」。
棚を吊るすチェーンはアイアン塗料をしてエイジング加工。業務用レンジフードの武骨な味わいとマッチしている。
まだまだDIYは進行中
「キッチンのブロックはHandiHouse projectさんに教わってDIYしました。子供たちもモルタルを混ぜるところから手伝ってくれましたよ」。
床のオイル塗装、壁の塗装、キッチンの腰壁の造作などはほとんど家族で行ったそう。
「引っ越してきてから少しずつ進めていったので、子供が学校から帰ってくるとHandiHouse projectのスタッフが家にいることが多かったんです。だから今でも家族ぐるみの付き合いです」。
毎年、大晦日の年越しは髙木邸で行うのだとか。リノベーションから5年。成長した子供たちの部屋をそろそろ仕切りたいと聞き、使えそうなドアの材料などを坂田さんが運んでくる。この家はまだまだ変貌していきそうだ。
「部屋に暖炉をつけたいし、庭にはピザ釜を作りたいと思っているんです。何風の家?と聞かれても答えられないけれど、この家で古いものに命を吹き込みつつ、思いついたことを形にしていきたいですね」。