DIY
手作りでアレンジ独創性を発揮する
家は白いキャンバス
ベースだけをまずは建設
廃材を使ったネオ・パッチワークが話題を呼んでいるクリエイターのユーゴさんが、アトリエを備えた一軒家を建てたのは3年前。都心の人気住宅街、半地下に工房、1、2階に家族、愛猫と暮らす自宅を構える。
「もともと建っていた古い家をリノベーションして住むつもりだったんです。でも、アトリエをここにもってくることになり、広いスペースが必要だったので、建て替えることになって」
そのため、当初の予算内に収めることが課題だった。
「ベースだけ作ってもらえば、後はどうにでもなるという考えで、とりあえず箱だけを作ろうと思いました。アトリエは作業台やミシンが置けるスペースを確保することをリクエストして、キッチンはシンクやコンロまわりだけを作ってもらって、後から少しずつ手を加えていくことにしました」
棚や収納などは、知人に頼んで後から設置。ユーゴさんの作品であるネオ・パッチワークのカーテンや、すだれなども活用した、オリジナリティ豊かな空間が誕生した。
気兼ねなく訪れられる家。
「スタッフや私の友人、子供たちの友人など、人の出入りが多い家なので、人がいっぱい集まれる家、というのが設計のテーマでした」
庭に面した階段を登ったところが玄関なのだが、そこにはドアではなくガラスの引き戸が。中に入ると、正面にキッチンがあり、リビングと一体の空間になっている。
「アメリカのホームドラマが好きだったのですが、玄関をあけてすぐにリビングのある、向こうの家に憧れていて。その方が、家にくるお客さんが気を使わなくて済むと思うんですね。キッチンに立ちながら、お客さんと交流できるのもいいし。入口に面しているので、普段も、食事の支度をしているときに、帰ってきた娘たちを“おかえりなさい”と、迎えられるのが気に入っています」
玄関である引き戸の手前、家の外にはなぜか洗面台が設置されている。
「人の家に行ったときに、まず洗面を借りるのが、プライベートをのぞく感じがして、私にはためらわれるんです。だから、家にあがる前に使ってもらえるといいと思って、手洗いは外につけました」
人をもてなすことが多い、ユーゴさんの心遣いが感じられる。さびた金属がシャビーな味を出している洗面台は、益子在住の作家さんにつくってもらったものだとか。
「その作家さんの作品がとても気に入っていて、いつか家を建てたら、この人のテーブルでご飯食べたい、と思っていました。ダイニングのテーブルは、ひと目でこの家に合う、と思って購入したものです」
カラフルなパッチワークが随所に。
「とりあえずベースだけつくった」家だが、当初からユーゴさんの感性も活かされた。例えば、キッチンは白いタイルにこだわって、あみだ状に配置。玄関には自分であちこちから集めたタイルを並べて、職人さんに貼ってもらった。洗面所の台も、あまった床板に自分で色を塗り、カットしてはめ込んだ。カラフルな色彩が、その作品をイメージさせる。
「できるだけあるものを無駄にしたくない、というのが仕事のコンセプトなので、この敷地にあった古家のドアなども再利用しましたね」
洗面所のドアは、もともとあったドアに、廃材の布をパッチワーク状に貼ったもので、以前、個展にも出展した作品。色々なカラーのグラデーションが、白い空間に映える。
「色ものが好きなので、外壁や内装は爽やかに白を選びました。その方がインテリアを邪魔しないと思ったんです」
「叔母の大切にしていたスカーフを譲ってもらって作ったものなど、全部手作りです。2階も壁だけ作ってもらって、後は自分たちで作りあげていった感じですね。まだ作業途中でもありますが」
かつて稜線をテーマに個展を開いたことのあるユーゴさん。壁面の下の部分には、やわらかな曲線がデザインされている
「私が線を描き、設計士さんの教え子が木をカットして、取り付けてくれたものなんです。家中に施されていますよ」
さり気ないこだわりと手作り感が、この家の魅力なのかもしれない。
仕事の疲れを癒してくれる。
庭は中学校のプールに隣接し、2階の窓からは、真っ青なプールが目に飛び込んでくる。
「毎日、朝からとても賑やかです。この家も、人がたくさんやってくるし、庭ではバーベキューをしたり、誕生会を開いたり、キッチンで友達と料理を作ったりと、いつも賑やかですね」
現在は、実家が経営していた工場の跡地に、色々なジャンルのクリエイターが利用できる工房を建設中。家事と仕事に毎日忙しいユーゴさんだが、庭に面したバルコニーの椅子が寛ぎの場だとか。
「椅子にゆっくりと腰かけて、ビールを飲んだりしています。ここで過ごす時間がとても好きですね」
庭にはぶどう棚を設け、ブルーベリー、ハーブ類などを栽培。鮮やかなグリーンを前に、バルコニーで過ごす満ち足りた時間。一軒家で過ごす悦びが伝わってくる。