Family
リクエストは大テーブルと土間大きな屋根の下に
つくられた開放的空間
家らしい家
千葉県流山市の敷地に建つ加藤邸。近隣の住宅で多く見られる寄棟屋根を採用しながら、建物の高さを抑える一方で大きな屋根をいただいたつくりで周囲から際立っている。
出発点は「家らしい家」。「子どもが絵に描くような」と加藤さんは説明を加える。それが設計途中から「三角屋根で大きな屋根」と、より具体的になった。
大きな土間と大きなテーブル
加藤さんからは、このほか、「大きな犬が走り回れる広い土間」「いろいろ出しっぱなしにしていても大丈夫な大きなテーブル」などがリクエストされた。
この要望に応じて、1階の大きな部分を占める土間の中心に大きなテーブルがすえられた。その端の部分から2階へと架けられた階段の存在が目を引く。
形は正方形だが、加藤さんは横長のテーブルをイメージしていたという。「長いテーブルだったら妻が料理を載せられる。将来、息子が勉強もできるし、私もその隣で読書ができる」というように。
このテーブルは1辺が3m近くある。比護さんは「テーブルの水平面は崩したくなかった」というが、これくらい大きいと真ん中にどうしても使えないスペースができてしまう。
そこで、その一部分を階段として使うことに。そうすることで、テーブルが部分的に床ともなって、単なる「大きな家具」ではない、珍しいタイプのテーブルが出来上がった。
キャンプのような開放感
加藤邸は戸外にも近い、気持ちのいい開放感も大きな特徴だ。比護さんは「キャンプが好きだという話をうかがって、キャンプのような開放感のようなものがつくれないか」と思ったという。1階の横長の大開口に面した部分は外部に近い開放感が漂うが、戸を開け放つと文字通り外部ともなる。
建物から突き出た屋根の部分、つまり軒の部分が深いつくりになっているのもこの家の特徴だが、比護さんはこの住宅の境界部分を曖昧にする意図があったという。「軒を深くすることによって街との距離感が変わって外と近い感覚が持てる。オープンにしても外からの視線が気にならない。あと、街の人とのつながりが出てくることも期待しています」
「屋根を架ける方法として、細い垂木をたくさん架けていく方法と、この登り梁にする方法とどちらにするかで悩みました。この家の大らかでラフな雰囲気には、こちらのほうが合うかなというので、梁を少しダイナミックに架ける方向で構造家とも話をして決定しました」(比護さん)
夫妻のお気に入り
加藤夫妻にうかがうと、お2人ともこの家では、テーブル廻りの空間がお気に入りとの返事が返ってきた。「僕は小上がりのところにいることが多いですが、キッチンのところにいると落ち着きますね。あそこから外を眺めると気持ちがいい」。奥さんも「私もキッチンのところに立つのが高さもぴったりですごく落ち着きます」と話す。
さらに「主人がパソコンの前にいることが多いんですが、その横に並んで座るとすごく居心地が良くて、右隣りで息子に絵本を読んだり、あるいは左隣りの場所に座ってテレビを見たりします」と奥さん。
加藤さんは「とにかく開放的で居心地が良いですね。最初は丸見えになるから外からの視線が少し不安なところもあったけど、気になりません」と話す。加藤邸の居心地の良さはこの開放感とほとんど重なり合っている。
設計 ikmo
所在地 千葉県流山市
構造 木造
規模 地上2階
延床面積 88.5m2