Green
木漏れ日の落ちる家東京ながら、別荘のように
自然を感じながら暮らす
ちょっと別荘ライクに
「自然とともにある別荘暮らしみたいなものをイメージしていました」と話すのは建築家の内田雄介さん。内田さんが建てた自宅兼事務所は、東京ながら周囲に緑が多く残る稲城市にある。
自然に囲まれた伸び伸びとした環境で育った内田さんには、もともと都心に近いエリアに住むイメージはなく、この自然環境にいかにとけ込んだ建物にするかを考えながら設計を進めたという。
そのライフスタイルとは、四季折々の季節を楽しむというものだった。「春には桜が咲き、桜が散ったら新緑を眺めて楽しみ、梅雨が過ぎると初夏が訪れ、やがて紅葉の季節になる。赤く色づいた木々を見た後には、雪が降って山が白く染まるのを見て感動したりとか」
四季だけでなく1日の変化も楽しむ
こうしたことを楽しむには東西にそれぞれ開けられた大きめの開口がその役割を大いに果たすが、同時に、家の両端に位置するこの開口から入る光によって、当然ながら、四季よりももっと短い時間単位での変化、つまり1日の変化も感じ取って楽しむことができる。
しかし、1日の中で刻一刻と変化する日照条件は、時間により家の中で光環境のベストな場所を変えていく。
「南向きのリビングがひとつあるだけだと、お昼ごろにいちばん明るくて気持ちよく過ごせるけれど、他の時間帯ではそれほどでもないということにもなる。そこでうちでは、東西の両方に居場所をつくっているんです。それで朝だと東側の部屋の日が昇ってきて明るい場所で朝食を取る。日が傾いて来たら西側で夕日を眺めながら食事を取ったりとか、1日の太陽のリズムに合わせて自分たちがちょっとずつ移動して、光や風を楽しめるようにしました」
木漏れ日の家
この家では、このように東西の開口から見える景色と同じ開口から入ってくる光とが大きな存在感を発しているが、採光に関しては、この他にトップライトから落ちてくるやわらかい光も見逃せない。この光で内田さんは陰影のある明るさのようなものを表現したかったという。
「この家は“木漏れ日の家”というタイトルを付けました。森を抜けていく時に上から光が落ちてきてなんとなく心地いい――そんな雰囲気を表現したかったんですね。妻のほうから明るい家にしたいというリクエストがあって、その明るさをどう表現しようかとても悩んだんですが、そこで、部屋全体が明るくなくても、明るい面があるだけで人間は心理的に明るく感じるんじゃないかと思ったんです」
こうして東京ながら別荘ライクな暮らしを手に入れた夫妻に、この家でのお気に入りを聞いてみた。「わたしは東側のリビングで子どもと遊んでいることが多いので、リビングから見える景色が、ヤマザクラが咲いたり山が紅葉したりと四季でどんどん変わっていくのが好きですね」(奥さん)
でも、奥さんと同じで東のリビングから見える景色ももちろん気に入っている。雪景色がとてもきれいで、山をバックに吹雪いている様を見ながらお酒を楽しんだこともあるという。「ソファに座りながら、ああ、いいなあとしみじみと思いましたね」
設計 内田雄介設計室
所在地 東京都
構造 木造
規模 地上2階
延床面積 131.58m2