Column

ニュー・パティスリィ-2-等々力「PÂTISSERIE
ASAKO IWAYANAGI」

ニュー・パティスリィ-2- 等々力の新店 AWAKO IWAYANAGI

世田谷・等々力にオープンした、パティスリィ アサコ イワヤナギ。人気パティシエール、岩柳麻子さんの新店だ。スタイリッシュな店内に並ぶ、独創的で豊かな味わいのケーキや焼き菓子の数々を紹介する。

人気パティシエールの新店

武蔵小山、銀座や白金などに展開する洋菓子店「パティスリィ ドゥ・ボン・クーフゥ」をはじめ、多くの人気店を手がけてきたパティシエール、岩柳麻子さん。彼女が昨年末、等々力に新店「パティスリィ アサコ イワヤナギ」をオープンさせた。店の目の前に大井町線が走るこの場所は、多摩サイクリングロードからも近く、聞くと岩柳さん自身も日頃からロードバイクに乗っているというバイク愛好者。近所に住む人たちはもちろん、サイクリングで通りかかった人も自転車をとめてお茶ができる店として親しんでもらいたいとこの地に出店を決めたという。

店内はコンクリート打ちっ放しのスタイリッシュな空間。設計を担当した、建築家のご主人、宿澤巧さんは「店内がきらびやかになりすぎないよう過剰な装飾はせず、ケーキが美しく見えるよう、照明の照度や、ガラスの大きさなど細部に至るまでに工夫しました」と話す。また、日が沈んだ頃になると、照明を落とした店内にガラスケースのなかのケーキが一層引き立ち、まるで美術館にいるような雰囲気が感じられる。店内奥はキッチンスペースになっていて、それを隠すのではなく大きなガラス扉で囲むことで、奥行きと開放感を演出。また、お客さんがどの位置にいても、作り手の顔が見られるようになっていて、ライヴ感のある空気を楽しむことができる。


店舗の向かい側に大井町線。店は等々力駅と尾山台のほぼ中央に位置する。ちなみに木枠で囲んだ窓は全開でき、暖かくなったら、外に椅子を置いてバーのように使うこともできるという。
店舗の向かい側に大井町線。店は等々力駅と尾山台のほぼ中央に位置する。ちなみに木枠で囲んだ窓は全開でき、暖かくなったら、外に椅子を置いてバーのように使うこともできるという。
「素材を隠さず、生かして見せる」も設計のコンセプト。既存の天井をはがし、木片ツキ板合板をはめて圧迫感のない仕上がりに。高さが出たことで店全体が広々とした印象を受ける。
「素材を隠さず、生かして見せる」も設計のコンセプト。既存の天井をはがし、木毛板をはめて圧迫感のない仕上がりに。高さが出たことで店全体が広々とした印象を受ける。
岩柳さんの新店と聞き、電車を乗り継いで訪れるファンも少なくないが、近所に住む人や自転車に乗って立ち寄る人も多い。また、男性のお客さんも多いので、男性が入りやすい雰囲気という点も支持される理由の一つかもしれない。
岩柳さんの新店と聞き、電車を乗り継いで訪れるファンも少なくないが、近所に住む人や自転車に乗って立ち寄る人も多い。また、男性のお客さんも多いので、男性が入りやすい雰囲気という点も支持される理由の一つかもしれない。

夜は店内の照明を絞り、昼とはまた違う表情になる。
夜は店内の照明を絞ることで、昼とはまた違った表情になる。

独創的で個性豊かなケーキ

店舗の中央に置かれたショーケースの中に個性豊かなケーキや焼き菓子が並ぶ。基本的に「自分が食べたい!と思うケーキを作る」と話す岩柳さん。中でも、シェフのスペシャリテ「クレア」は、以前よりケーキ教室で紹介していたレアチーズのムースで、お客さんからのたくさんのリクエストによって商品化された、特に思い入れのある一品だ。真っ白な求肥の中には、色鮮やかなカシスのソースがたっぷり。ソースは季節によって、パッションフルーツやシャインマスカットなどに変わる予定で、旬の味わいを楽しむことができる。そのほかにもフランスのブリーチーズ、ブリー・ド・モーを使った「白カビのチーズケーキ」や、サワークリームとクリームチーズを使った「2層の半生チーズケーキ」などチーズケーキが常時3、4種類並ぶ。また、宿澤さんの実家、山梨の宿沢フルーツ農園から届く季節ごとのフルーツを使ったケーキが多いのも特徴。定番商品もそのときどきの旬のフルーツを使うことで、さまざまな味を楽しむことができる。また、峠をイメージしたユニークなかたちのモンブランも登場。ケーキを通じて、シェフの自由な発想と遊び心が感じられる。


シェフのスペシャリテ「クレア」。レアチーズムースの中にいちごやカシスなど季節のソースをしのばせ、それを求肥で包み込んだシェフのスペシャリテ。もっちりとした求肥の食感、甘酸っぱいフルーツのソースが絶妙。
シェフのスペシャリテ「クレア」。レアチーズムースの中にいちごやカシスなど季節のソースをしのばせ、それを求肥で包み込んだシェフのスペシャリテ。もっちりとした求肥の食感、甘酸っぱいフルーツのソースが絶妙。
和栗の峠をイメージしたというその名も「峠モンブラン」。クレームシャンティの中に入った、黒糖ゆべしがアクセントに。
和栗の峠をイメージしたというその名も「峠モンブラン」。クレームシャンティの中に入った、黒糖ゆべしがアクセントに。
岩柳さんが好きというピスタチオのケーキ「ピスターシュ」。純ピスタチオクリームに黒さくらんぼピューレで煮たいちごのコンポートをサンド。紅茶の生地の香りがほのかに広がる。
岩柳さんが好きというピスタチオのケーキ「クレーム ピスターシュ」。純ピスタチオクリームに黒さくらんぼピューレで煮たいちごのコンポートをサンド。紅茶の生地の香りがほのかに広がる。
ブルーベリーがのった「2層の半生チーズケーキ」は、ふわふわの優しい食感が印象的。まったりとしたコクが味わえる「白カビのチーズケーキ」はお酒にも紅茶にも合う。
ブルーベリーがのった「2層の半生チーズケーキ」は、ふわふわの優しい食感が印象的。まったりとしたコクが味わえる「白カビチーズケーキ」はお酒にも紅茶にも合う。
宿沢フルーツ農園で採れた果実で作るコンフィチュール。それを使った季節のコンフィチュールタルトも人気。キッシュに使用される野菜も宿沢フルーツ農園のもの。
宿沢フルーツ農園で採れた果実で作るコンフィチュール。それを使った季節のコンフィチュールタルトも人気。キッシュに使用される野菜も宿沢フルーツ農園のもの。

楽しみが広がるパティスリィ

1月15日のグランドオープン以降、店内でカフェスペースの営業もスタートした。ショーケースに並ぶスイーツと合わせて、厳選したドリンクを楽しむことができる。たとえばコンパスコーヒーの豆を使用したオリジナルブレンドのコーヒー、南部鉄器ポットで提供されるハイビスカスティーやカモミールはティージュの茶葉を使用。シニアソムリエの粟田さんが選ぶ、赤と白のワインはチーズケーキと好相性だ。また、店奥のスペースでは、ソムリエによるワイン教室や、岩柳さんが教えるケーキ教室の開講も予定。春になるとショーケースを一部改装し、宿沢フルーツ農園から届くフレッシュな果実をふんだんに用いたジェラートの提供も始まるという。これからますます目が離せないパティスリィ。来るたびに楽しみが広がりそうだ。


宿沢フルーツ農園の完熟フルーツを煮詰めた贅沢なコンフィチュール。左からもも&すもも、ゆず、ぶどう、かき、さくらんぼ、すもも、もも。各600円。しっとりとしたパウンドケーキ、生チョコのような濃縮タイプのブラウニーやほろほろとした食感のサブレなど焼き菓子も種類豊富。
宿沢フルーツ農園の完熟フルーツを煮詰めた贅沢なコンフィチュール。左からもも&すもも、ゆず、ぶどう、かき、さくらんぼ、すもも。各600円。しっとりとしたパウンドケーキ、生チョコのような濃縮タイプのブラウニーやほろほろとした食感のサブレなど焼き菓子も種類豊富。
四角に切り分けたフランスのチョコレート菓子・パヴェ 塩ショコラも並ぶ。フルーツトマトやほろ苦いチョコレートなどさまざまな味がある。焼き菓子は詰め合わせもできる。
オリジナルのチョコレート菓子・パヴェ 塩ショコラも並ぶ。フルーツトマトやほろ苦いチョコレートなどさまざまな味がある。焼き菓子は詰め合わせもできる。
宿沢フルーツ農園のドライフルーツ。デラウェアやピオーネ、丸ごとすももなど果実の濃厚な味わいをしっかり凝縮。各600円。
宿沢フルーツ農園のドライフルーツ。デラウェアやピオーネ、丸ごとすももなど果実の濃厚な味わいをしっかり凝縮。各600円。
こちらがカフェスペース。ケーキとドリンクを合わせて頼むとケーキは100円引きになる。
こちらがカフェスペース。ケーキとドリンクを合わせて頼むとケーキは100円引きになる。
大きなガラス扉からキッチンの作業風景を見ることができる。
大きなガラス扉からキッチンの作業風景を見ることができる。

PÂTISSERIE ASAKO IWAYANAGI
東京都世田谷区等々力4-4-5
03-6432-3878
10:00〜19:00
月曜定休(月曜日祝日の場合は翌日休み)