Renovation
家族で楽しむ円形プランの家こだわりのテクスチュアは
古材のテイスト
こう話すのは挽田未朋(みほ)さん。以前住んでいたのは、お父様に壁に木を張ってもらい、また珪藻土を自分たちで塗るなどして、リフォームした家。自ら手を入れるほどに思い入れ気に入ってもいたが、その反面、素人仕事のせいかどこかちぐはぐな感じがあって違和感も感じていたという。
それが昨年、叔父の持ち物だった家を購入することになり、こんどはプロの手で本格的に家を改造することに。設計も建築家に依頼した。そして出てきたのが矩形の中に円形をはめ込むプランだった。
家族一緒の時間を楽しむ円形プラン
「夫の休みがわたしのとはずれていて、帰りも遅く、朝は“行ってきまーす”って言って起こしてから出かけるという感じで時間帯もまったく合わないので、リビングとダイニングを大きくしてほしいと最初にお願いしました」
たまに夜一緒に食事ができたり夏休みや春休みで未朋さんが休みの時には、しっかりと家族の時間を過ごせる場所がほしい。円形プランはそう思ってした建築家へのリクエストから生まれたものだった。
そして、この曲面壁を古材のようなテイストの仕上げにすることもリクエスト。建築家からはベイマツ材に塗ったペンキをサンドペーパーで落とすことで古いテイストを出す方法を提案された。いわゆるエイジング加工だ。しかし、実際には、下地処理をせずにそのままペンキを塗るだけでほどよく目が出て古材にペンキを塗った感じになったため、それを仕上げとして採用した。
家具のテクスチュアにもこだわる
前の家では自ら珪藻土を塗り、今回は曲面壁の古材風の仕上がりにもこだわった未朋さん。家具でも同じようにそのテクスチュア、素材感にこだわった。
リビングに置かれた存在感たっぷりの棚はテーブル、ベンチと同じCRUSH CRASHという家具シリーズの製品。古材を使用して製作されたもので、エイジング加工が本物のアンティーク家具と見まがうほどのテクスチュアをもたらしている。
ダイニングテーブルの天板にも古材が使用され、同じようにエイジング加工が施されている。脚には工業用ミシンとして使われていたものが転用されていてどっしりとした重量感が印象的だ。
雑誌などを一緒に見ながら、好きな家具のテイストを伝え、実際に家具を選ぶ際にも、携帯でその場で撮った写真を送るなどして建築家からアドバイスをもらったという。「空間の出来上がりのイメージができていなかったんですが、いいと思うものはいろいろとあったので、それがどうだろうというのは1回1回確認しましたね」
リビングとダイニングを隔てる壁は取ってより広い空間にしたかったが構造の問題で取ることが出来なかった。しかしこれも住んでみると「子供と一緒に過ごせるという意味でも、逆に別々にテレビを見、音楽を聴くこともできるという意味でもこの壁はあって良かった」と感じているという。
“納得のいくもの”を手に入れた未朋さん。この家に「帰ってくるのが毎日楽しみです」と話す彼女の満足気な笑顔が印象に残った。
設計 富永哲史建築設計室
所在地 東京都町田市
構造 RC造