インテリアショップのアクタスで働いていた時に知り合ったという川岸玄月さんと緑さんは、おふたりとも大の家具好き。ちなみにハンス・ウェグナーの家具が大好きという玄月さんは、今もアクタスにお勤めだそう。
この流山市のお宅は、両親が暮らしていた築35年の緑さんの実家。その家を少しずつリフォームしながら住んでいる。
「4年前まで隣町のマンションに住んでいたのですが、この1軒家に住んでからリフォームの楽しさに目覚めてしまいました。趣味は何ですかと聞かれれば、リフォームと答えます(笑)。年に1度はふたりで家中のペンキ塗り作業をしています。たとえばトマトソースがはねてシミができてしまっても、ペンキをさっと塗って修復終了です」と緑さん。
プロにも頼むけれど、自分たちでも手を入れる。大工さんが綺麗に貼ってくれた床は、あえて自分たちでオイルを塗って味出し。キッチンのタイルも玄月さんが貼った。今はリビングと廊下の間のドアを変える工事を画策中とか。
「ほんとうに少しずつ少しずつ手直ししていますし、次はどこを変えようかって常に考えているので、この家のリフォームに終わりはないと思います。家に遊びに来た親戚に『この家の工事、まだ終ってないの?』と心配されるほどです(笑)」
「この家のテーマは、イタリアの小さな街にあるような、カフェ兼Bar兼雑貨屋さんのイメージです」と言うように、キッチンのカウンターの居心地がすこぶるよいのだ。お客様が多く、このカウンターで何時間も過ごしていくというお話も頷ける。
カウンターの天板は、茨城の仕立屋で使われていたものを古道具屋で見つけたものだそう。スツールに置かれた緑さんの手作りレザーのクッションが適度にお尻に柔らかく、居心地の良さがさらにアップ。
陰影と解放感の両方を楽しめる木製ドア
家を設計する際、窓を大きくとって、なるべく部屋を明るく……と考える人は多いだろうけれど、川岸宅はその逆。窓を作れそうな場所に木製のドアを作り、あえて光を遮断している。
「北欧の石造りの家は窓が小さいので、部屋の中の陰影が美しいですよね。そんな感じの家に憧れたんです。木のドアを閉めると部屋が暗くなるので、天窓からの光がとてもキレイに映えるんです。部屋にたくさん光を入れたい気分のときはドアを開けるとパッと明るくなります。陰影の美しさと開放的な雰囲気の両方が楽しめる木製のドアはとても気に入っています」
リビングの一角に、ガラス窓の入ったパーティションで区切られた細長いスペースがしつらえてある。CDの収納がされていたり、奥は緑さんの作業スペースにもなっている。このスペースがとても重宝するのだそうだ。
「ここにお客さんが泊まっていくこともあります。何にでも使えるとても便利なスペースなんです。急な来客の時には、ここに散らかっているものをとりあえず放り込んだり(笑)」
このパーティションの前の机は、緑さんの作業スペースだ。アンティークビーズやレザーを使ったアクセサリーや小物を作っている。イタリアングレーハウンドのハウちゃんの首輪も緑さんのお手製。週末は家でマーケットを開くことも。雑貨屋さんっぽい家が、そのまま文字通りお店になる瞬間だ。