Renovation
狭小だが開放感のある家都心近くの住宅街に
つくられた“異空間”
「たまたま購入前に通りかかったことがあるのですが、とても静かな住宅街のイメージで、駅からけっこう近いにもかかわらず開発が進んでおらず、ちょっと不思議な場所だな、という印象がありました」
玄関が脇にあるのは、以前この家が下宿屋であった名残り。購入前に、建って40年を超える家を見た時「建物自体にいい印象はもたなかった」という。しかし、都心から近いという利便性と、そのような立地にもかかわらず静かな環境に惹かれて、家は建築家のお兄さんに頼めばどうにかしてくれるだろうとリノヴェーションして住むことに。
狭いが広さの感じられる空間
道路側以外の三方がくっつくように隣家と接している家は暗く、また敷地自体も40m2と狭小だったため、池村さんからは「陰気な感じをなんとかしてほしい」ということと同時に「広さを感じられるようにしてほしい、できるだけ広いスペースがひとつほしい」と、お兄さんにリクエストしたという。
これらの要望から、吹き抜けた階段室の屋根(トップライト)にFRP波板を使って光をふんだんに取り入れ、2階のリビングダイニングは天井をつくらず屋根裏を見せるつくりに。FRPはキッチンの床にも使用して階下のスペースへと光を透過させている。
素材感を感じさせる
より広く感じさせるということで階段には薄くても強度のあるスチールが用いられている。階段室とその上のFRPのトップライトとの連続感をつくりながらできるだけ開放的な空間にするために材の厚みをおさえたのだという。
スチールを採用したのには、もうひとつ理由がある。家の近くまで続く商店街の空気感を内部にまで延長したいと考えたのだという。狭めの道ゆえにモノがとても近く、またリアルに感じられる。そうした商店街との連続感を感じられるように、この玄関すぐの空間に素材感をリアルに感じられるようなスチール材を使ったのだという。
蔵のような外観に対して内部では多様な素材感があり、また狭小ながらも明るく開放感も感じ取れる池村邸。この家もまた、“異空間”のようなこの不思議なエリアの中で“異空間”のような存在感を放っている、そんな風に感じられた。
設計 池村圭造/UA
所在地 東京都世田谷区
構造 木造
規模 地上2階
延床面積 53.59m2