Renovation
ベルリン郊外、アーティストの家 都会から遠すぎない距離で
築100年の農家をDIYで修復
都会のテイストをキープしたスタイル
映画カメラマンのインゴ・クラニッツさんとビデオ・アーティストのユタ・フォン・サトリさんが住む家は、ベルリンから電車で小一時間、そこから8キロほどの村、ブッフホルツにある。家を手に入れたのが1994年、旧東ドイツの村にある家は、1880年に建てられた立派な建物だったが、社会主義時代の30年間、使われておらず、最初に訪れた時は廃墟のような荒れ具合だった。
南ドイツの田舎育ちで、なんでも工夫して作ってしまうインゴさんは、ベルリンの自宅から通い、徐々に手を加えながら、居心地のいい郊外の我が家を形にした。ユタさんはベルリン育ち、「映画館やギャラリーのある街の生活から、夏は蚊が大量発生したり、ネズミが出たり、はじめは驚きというか、自然の中での生きることに戸惑いもあったわね」と語る。
好きなものに囲まれて暮らす
ベルリンの街中に住んでいたころから、2人はフリーマーケットやアンティークショップが好きで、新しいものを買うより、古くて質のよいアンティークを選ぶことが習慣だった。そんな彼らのスタイルやテイストを知っている友人たちは、キャビネットや棚などをプレゼントしてくれた。アーティストと作品交換したものも多い。ユタさんはそれらを自分たちの空間に取り入れ、たくさんある部屋を個性的なものにした。ものを大切にするインゴさんは壊れているものを修理する。修理した家具や自転車、金継ぎをした器などは、この家の重要な構成要素になっている。
都会と田舎の豊かさ、両方を楽しむ
ベルリンでは毎晩、アート関係のオープニングやイベントがある。ユタさんは都会に通いながらも、のびのびと生活できる居心地のいい広い家にすっかり慣れた。インゴさんはとにかく動いていることが大好き。週末ごとにベルリンからゲストが訪れると、自慢の料理とワインを振る舞う。この秋には旧友のアメリカの大学教授が生徒を連れてワークショップのためにやってくるという。
24年前にベルリンの友人からもらった1メートルにも満たない小さなクルミの木はこの地で大きく育ち、秋にはたくさんの実をつける。リンゴもプラムも自分たちでは食べられないほどの収穫があり、近所に住むアーティストやベルリンの友人と分け合う。都市との程よい距離がインゴさんとユタさんの暮らしを豊かにしているようだ。