Renovation

築40年の木造住宅をフルリノベ都心のアウトドアリビングで
景色&バーベキューを堪能する

築40年の木造住宅をフルリノベ  都心のアウトドアリビングで 景色&バーベキューを堪能する

全館空調を実現

オーストラリアから来日して30年というマーク・ホドビーさんがご家族と暮らすのは、格式高い街並みが広がる、“城南五山”(東京)のひとつ島津山エリア。2年半ほど前、傾斜地に建つ築40年の外国人用賃貸住宅を購入し、フルリノベーションした。空が広がる高台ならではの景色を楽しんでいる。
「それまでは同じ敷地に建つお隣に6年くらい住んでいました。隣人とは親しくしていて家を行き来していたので、この家の眺望の良さはよく知っていました(笑)。売却の話を聞いてリノベーションを前提に購入することにしたのです」(マークさん)

設計は、近所の友人宅のリノベーションを手掛けた建築家の森吉直剛さんに依頼。ホドビー夫妻がまず希望したのは、「どこにいても暑すぎず寒すぎない家」で、全館空調にすることだった。
「築年数が経っていたため、一度スケルトン状態まで解体し、内装も外装もすべてやり直しました。耐震補強をしつつ、ズレていた床レベルも調整。そして、全館空調にするには高気密高断熱が必要なため、開口部分は断熱サッシに交換し、耐熱材を隅々まで吹き付けました。さらに、温度調節だけでなく調湿機能ももった機器を設置。築40年の木造住宅のリノベーションで、全館空調を実現したのです」(森吉さん)

住まわれて2年を過ぎたご夫妻は、「部屋も廊下もすべて適切な温度で管理されているので、季節に関係なく常に心地よく過ごせます」と大満足。最後まで悩んだ床暖房は、「入れない選択をして正解だった」(並子さん)という。

木造2階建ての地上部分をリノベーション。屋根は太陽光パネルが取り付けられるよう補強済み。
木造2階建ての地上部分をリノベーション。屋根は太陽光パネルが取り付けられるよう補強済み。
玄関ドアの脇にはブラックボードがあり、子どもたちが描いたイラストで客人をお出迎え。
玄関ドアの脇にはブラックボードがあり、子どもたちが描いたイラストで客人をお出迎え。
玄関ホール。上履きと下履きを分けられるように、墨モルタルの土間とカーペットで変化をつけた。
玄関ホール。上履きと下履きを分けられるように、墨モルタルの土間とカーペットで変化をつけた。
崖側から見る。住居部分の下のスペースは、セキュリティ会社の会長を務めるマークさんの事務所。
崖側から見る。住居部分の下のスペースは、セキュリティ会社の会長を務めるマークさんの事務所。
玄関脇の作業ルーム内に、全館空調機『デシカホームエア』(ダイキン)を設置。調湿換気機能付き。
玄関脇の作業ルーム内に、全館空調機『デシカホームエア』(ダイキン)を設置。調湿換気機能付き。

崖地が生み出す絶景のアウトドアリビング

ホドビー邸の最大の特徴は、都心の崖地という立地を生かした開放的な空間である。ご夫妻が口を揃える、「気軽に人を呼べる家」というコンセプトにもつながっている。

以前は、2部屋に分かれていたリビングとダイニングだが、内壁を取り除いて広々としたワンルームにした。また、「オーストラリアではバーベキューを日常的に行うので、広いテラスは必須でした」というマークさんの希望から、リビングから続くテラス部分は倍に拡張。建具は木製の大きな窓から網戸まで壁に収納できる引込戸を採用し、ブラインドも天井のブラインドBOXに収納できるようにした。フルオープンできることで、室内と室外が一続きになり、アウトドアリビングとして活躍している。

東側に開いたこのテラスで過ごす時間がお気に入りというマークさん。日の出を眺めたり、朝食を取ったり、コーヒー片手に読書したり、昼寝したり・・・と、テラスを満喫している。
「そのままキャンプ用のテーブルを出して、ここで仕事をすることもありますよ(笑)」

明るく開放的なLDK。目の前には東京・品川の街並みが広がる。四季折々の緑も楽しめる。
明るく開放的なLDK。目の前には東京・品川の街並みが広がる。四季折々の緑も楽しめる。
フルオープンのサッシを開け放てば、LDKとテラスが一体化し、より開放的に。バーベキューグリル(右)は日常的に大活躍。
フルオープンのサッシを開け放てば、LDKとテラスが一体化し、より開放的に。バーベキューグリル(右)は日常的に大活躍。
ダイニングの椅子は広島の家具屋でオーダーしたもの。照明はイタリアの『ルミナベッラ』。
ダイニングの椅子は広島の家具屋でオーダーしたもの。照明はイタリアの『ルミナベッラ』。
強化ガラスを用いた手すりが視線を遮らず、景色を堪能できる。屋根もあるため、多少の雨でも大丈夫。
強化ガラスを用いた手すりが視線を遮らず、景色を堪能できる。屋根もあるため、多少の雨でも大丈夫。

人が集まるアイランドキッチン

テラスと対面に配したキッチンはアイランドをセレクト。『キッチンハウス』で出会ったヴィンテージ風の木目のキッチンは、並子さんのイメージ通りだったという。
「キッチンは家族や招いた人たちが囲めるタイプがいいなと思い、アイランドにしました。カウンター付きということもあってキッチンまわりには人が集まってきます。キッチンからの眺めも最高で、料理をしていても楽しくなりますね(笑)」(並子さん)

つい先日も子どもから大人まで30人近くが集まり、バーベキューパーティをしたという。
「大人たちはテラスやキッチンまわりでお酒を飲みながらおしゃべりしていて、子どもたちは暖炉の前のソファで遊んでいる・・・。大人も子どももそのときの気分で自由に寛げる居場所があり、それぞれが心地いい時間を過ごしているのが、見ているこちらも嬉しくなりますね」(並子さん)

ヴィンテージ風の木目のキッチンを引き立たせる、ピュアホワイトの壁側収納も『キッチンハウス』でオーダー。
ヴィンテージ風の木目のキッチンを引き立たせる、ピュアホワイトの壁側収納も『キッチンハウス』でオーダー。
オーブン料理が得意な並子さんのリクエストで、ミーレのオーブンが2つ。ワイングラスは専用のラックをつけて収納。「地震のときも安心です」(並子さん)
オーブン料理が得意な並子さんのリクエストで、ミーレのオーブンが2つ。ワイングラスは専用のラックをつけて収納。「地震のときも安心です」(並子さん)
食器洗い機もミーレ。「大型なので、フライパンやボウルなどまで入り、とても便利です」(並子さん)
食器洗い機もミーレ。「大型なので、フライパンやボウルなどまで入り、とても便利です」(並子さん)
キッチンの奥はパントリー、サニタリールームと続く。水回りの動線を考え、回遊性をもたせた。手前の冷蔵庫は マーベ。前面にあるカスタムディスペンサーからウォーターフィルターを通した氷と水が出る。
キッチンの奥はパントリー、サニタリールームと続く。水回りの動線を考え、回遊性をもたせた。手前の冷蔵庫は マーベ。前面にあるカスタムディスペンサーからウォーターフィルターを通した氷と水が出る。
元は外国人用の賃貸住宅だったため、各ベッドルームにシャワールームがあるだけでお風呂はなかった。「老後を考えて、1階で生活が完結するようにお風呂を造りました」(並子さん)
元は外国人用の賃貸住宅だったため、各ベッドルームにシャワールームがあるだけでお風呂はなかった。「老後を考えて、1階で生活が完結するようにお風呂を造りました」(並子さん)
キッチンから玄関へと回遊できるようになっている。左の赤いタオルウォーマーはタオル以外も乾かせて重宝しているとのこと。
キッチンから玄関へと回遊できるようになっている。左の赤いタオルウォーマーはタオル以外も乾かせて重宝しているとのこと。
2階のマスターベッドルームに併設したウォーキングクローゼット(左)と書斎。奥はトイレになっている。
2階のマスターベッドルームに併設したウォーキングクローゼット(左)と書斎。奥はトイレになっている。
2階のマスターベッドルーム。左側の窓はリノベーションのときに設けた。ここからの眺めも絶景。
2階のマスターベッドルーム。左側の窓はリノベーションのときに設けた。ここからの眺めも絶景。

減築して生まれた吹き抜け

「パチパチという音や薪が燃えるにおい、また炎を見ていると癒されますね」という並子さん。広いリビングのアクセントにもなっている暖炉は、もともと設置してあったものを再利用。もとの壁は取り除き、耐震補強をしてレンガ調タイルを貼って仕上げた。

リビング上部の吹き抜けは今回設けたもの。2階の一室を減築し、吹き抜けにしたことで光を取り込み、より明るく開放的な空間となった。1階と2階で会話をすることも楽しく、子どもたちが2階で過ごしているときでも気配を感じられるのが良いという。

築40年の木造住宅を大々的にリノベーションし、マークさんご一家の生活スタイルに合わせた空間が誕生した。
「今後は屋根に太陽光パネルをつけたり、新鮮な飲料水も確保できる貯水タンクを設置することも考えています。災害の多い日本では、ライフラインは自分たちで支えるようにしなければいけないと思いますからね」(マークさん)

既存の住宅からあった暖炉。大きなソファは『IKEA』。家族4人で、だれが寝そべるか、取りあいだそう。
既存の住宅からあった暖炉。大きなソファは『IKEA』。家族4人で、だれが寝そべるか、取りあいだそう。
吹き抜け部分。既存の梁をそのまま生かし、空間のアクセントに。斜めに入る光が心地よい。
吹き抜け部分。既存の梁をそのまま生かし、空間のアクセントに。斜めに入る光が心地よい。
2階の寝室をひとつ減築して吹き抜け(右側)を造った。天井まで延びた書棚には子どもたちの楽しい本が収納されていた。
2階の寝室をひとつ減築して吹き抜け(右側)を造った。天井まで延びた書棚には子どもたちの楽しい本が収納されていた。
インターナショナルスクールに通う花ちゃん(14歳)と海くん(12歳)の部屋。仕切るのはブラックボードの板で、遊び心満載。
インターナショナルスクールに通う花ちゃん(14歳)と海くん(12歳)の部屋。仕切るのはブラックボードの板で、遊び心満載。
花ちゃんの部屋。勾配天井を生かし、可愛らしい空間に変身。
花ちゃんの部屋。勾配天井を生かし、可愛らしい空間に変身。
海くんの部屋から花ちゃんの部屋を見る。2人ともラグビーに夢中とのこと。
海くんの部屋から花ちゃんの部屋を見る。2人ともラグビーに夢中とのこと。

設計 一級建築士事務所 森吉直剛アトリエ
所在地 東京都品川区
構造 木造
規模 地上2階
延床面積 224㎡