Renovation
難しくも面白いリノベーション築35年の「洋館」を、
モダンに生まれ変わらせる
![難しくも面白い 中古リノベーション 築35年の洋館を、 モダンに生まれ変わらせる 難しくも面白い 中古リノベーション 築35年の洋館を、 モダンに生まれ変わらせる](https://img.100life.jp/2015/10/151012_ino.jpg)
見つけたのは個性的な中古物件
建築設計関係の仕事をする井上亮(まこと)さん、アクセサリーデザイナーの亜矢子さんご夫妻が、川崎市梶ヶ谷の築35年の中古戸建を購入したのは、2013年8月のこと。「以前はマンション住まいでしたが、子どもが生まれたことをきっかけに、戸建に住みたいと思うようになりました」と亜矢子さんは話す。
物件選びは、住宅のプロである亮さんが担当し、半年ほどあれこれ探してまわったそう。「この家を見たときにピンときたんです。庭を囲んでL字に建つ形、中2階に独立して設けられた和室、つくりつけの家具など、前の持ち主のこだわりが詰まっていて、面白いな、クセが強いな、と感じました。同時に、『こうやって手を入れてみたい!』というイメージが膨らみました」と、亮さんは出会いを語る。
クリエイターたちのコラボレーションワーク
家を購入したあと、亮さんはすぐにイメージを図面に書き起こした。亮さんは以前、建築家平田晃久さんの事務所で働いていたこともある一級建築士で、こうした作業はお手のもの。そして「こういうことをやりたいんだけどお願いできる?」と声をかけたのが、建築設計事務所アイボリィアーキテクチュアの原崎寛明さんだった。
原崎さんは一時期亮さんとともに仕事をしていたことがあり、当時から何かと気の合う関係。現在はアイボリィアーキテクチュアを立ち上げ、既存の枠にとらわれない自由な試みを実現した物件を手がけている。
「原崎君に頼めば、融通をきかせてくれて、自分たちの暮らし、好みに合う家ができあがると思いました」と亮さん。現場監督や内装施工を担当したのは、原崎さんの事務所が入るシェアスタジオのメンバーで若手クリエイターの劉功眞さん、大工は亮さんの後輩のお父様と、フットワークの軽いメンバーが集まり、妥協のないリノベーションが始まった。
「元の家はフローリングも窓枠も濃い茶色。シャンデリアもあって“豪華な洋館”といったイメージでした。いい部分は残しつつも、自分たちが暮らしやすい家につくり直しました」と夫妻は話す。リノベーション工事は2013年10月に始まり、翌2014年1月に完成を迎えた。
![亮さんの職業柄、建築関係の書籍が並ぶ本棚。](https://img.100life.jp/2015/10/151012_ino_003-350x233.jpg)
![「最近芝刈り機を買いました」(亮さん)。庭にはハナミズキとキンモクセイの木が植わっていて、季節感をたっぷり味わえる。](https://img.100life.jp/2015/10/151012_ino_004-350x233.jpg)
![靴箱の上に飾られているアートは亮さんの作品。ものづくりが好きで、暇があると何かつくりたくなるそう。](https://img.100life.jp/2015/10/151012_ino_005-350x233.jpg)
![愛犬のももちゃん。4歳の女の子。マンション時代から飼っていたが、この家にはすぐに馴染んだそう。](https://img.100life.jp/2015/10/151012_ino_006-350x233.jpg)
壁材と床材にオリジナリティを
「まずやってみたかったのはLVL材を内装材として使うことでした」と話す亮さん。LVL材とは、通常は梁などの構造材として使う木材で、薄い板を何枚も貼り合わせたもの。今回は、その積層面のストライプを表面にして見せられるLVL内装材を取り寄せてつかった。「板が重なった切断面に表情があるので、思い切って壁の仕上げ材として使ってみることにしました」(亮さん)。
妻の亜矢子さんも、「横に走る木のラインがきれいですよね。洗面所は、あそこまで全面になるとは思っていなかったので、仕上がりを最初見たときはびっくりしましたが、今ではとても気に入っています」と話す。
あまり見かけない淡いグレーの床も印象的だが、原崎さんは「これには苦労しました」と語る。「塗料を何種類か取り寄せて、理科の実験のように、何対何、何対何、と配合の割合を変えたものを大量につくってみて、悩みに悩んで色を決めました。厚みがある無垢材を使っているので踏み心地もいいんですよ」。
井上家には2歳の凛ちゃん、1歳の遥ちゃんの、2人のお嬢さんがいる。この床は、子どもも気持ちよく歩きまわれて汚れも目立たず、家族全員のお気に入りだ。
![薄い板が何層にも重ねられたLVL内装材。リノベーション当時はまだあまり流通しておらず、入手に苦労したそう。](https://img.100life.jp/2015/10/151012_ino_009-350x525.jpg)
![洗面スペースの棚はあえて扉をつけずに使い勝手をよくした。タオルフックは使わないときはたたまれる仕組み。](https://img.100life.jp/2015/10/151012_ino_010-350x525.jpg)
活かせるものは活かす
一方で、大きくて立派なリビングボード、珍しい翡翠色のシステムキッチンなどは、リノベーション前の家に元々あったもの。「こういう家具は、つくりがしっかりしていて、今ではなかなか無いデザインも面白い。せっかくだから残そうと思いました。予算が浮いたのはもちろん、インテリアにメリハリが生まれて、残して良かったと思います」と亜矢子さん。夫妻で新しく選んで買ったポップな北欧テイストの照明や家具との調和も見事だ。
亜矢子さんがアクセサリー制作の仕事場にしているという和室も、ほぼそのままの形で残したそう。「壁は、元の土壁の上から白のペンキを塗りました。あとは押し入れの戸を外して中をこじんまりした作業スペースにしたくらいで、あまりいじっていないんです。実は畳もそのままなので、近々張り替えたいと思っています(笑)」(亮さん)。
![中2階に独立してつくられた和室は、アクセサリーデザイナーである亜矢子さんの仕事場に。壁や襖、敷居を真っ白く塗りすっきりとさせた。](https://img.100life.jp/2015/10/151012_ino_016-350x233.jpg)
![左奥の空間は元は押し入れ。リノベーションで作業スペースに変えた。](https://img.100life.jp/2015/10/151012_ino_017-350x233.jpg)
![中2階の和室の襖を空けると、1階のリビングを見通せる。](https://img.100life.jp/2015/10/151012_ino_018-700x467.jpg)
![蝶々や花などの写真を布にプリントして樹脂で固めた亜矢子さんオリジナルアクセサリー。WEBショップで購入できる。](https://img.100life.jp/2015/10/151012_ino_019-350x233.jpg)
中古物件の面白さを満喫
「中古物件のリノベーションには、新築とは違う面白さがある」と、亮さんと原崎さんは口を揃える。「他人のために建てた家なので、自分好みに生まれ変わらせるのは難しい。難しいけれども面白いんです。建築をやっている人間は、変わった中古物件を再生することに、可能性ややりがいを感じることも多いんですよ」と亮さんは語る。
「一戸建てに引っ越してからは、子どもがさわいでも気にならないし、ダイニングに座って庭を眺めたり、朝の光を浴びるゆったりした時間が好きになりました」と今の生活を楽しんでいる亮さん。亜矢子さんも「せっかく広い庭があるので、手入れをきちんとしようと思います。子どもと一緒に野菜づくりをするのもいいなあ」と、楽しい計画を教えてくれた。
![2階の主寝室。窓の外はテラスバルコニーになっていて、朝の光がよく入る。](https://img.100life.jp/2015/10/151012_ino_020-350x525.jpg)
![施主の井上亮さん(右)と、この家のリノベーションを請け負ったアイボリィアーキテクチュアの原崎寛明さん(左)。](https://img.100life.jp/2015/10/151012_ino_021-350x233.jpg)
![主寝室の棚は元々つくりつけられていたもの。夫妻の好きな色にペイントした。](https://img.100life.jp/2015/10/151012_ino_022-350x233.jpg)
![ダイニングの壁に貼られていたのは、亮さんがさっと描いた絵。](https://img.100life.jp/2015/10/151012_ino_023-350x525.jpg)
アイボリィアーキテクチュア
IVolli architecture
OVCE ハンドメイドアクセサリー
OVCE HANDMADE ACCESSORY
LIUKOBO 劉功眞
LIU KOBO
設計 アイボリィアーキテクチュア
施工 LIU KOBO 劉功眞
所在地 神奈川県川崎市
構造規模 木造2階建(改修)
延床面積 132m2