Style of Life
懐かしさと温かさ手を加えることで近づく
家族の理想の形
妥協なくプランニング
イメージは、“西洋に憧れる大正時代の日本人”。古いものが好きだという夏目あや子さんの思いがつまった家は、2年前に建てられた。
「主人の実家の蔵があった場所に、新築することになったんです。自分のイメージを伝えたかったので、大工さんとはいろいろお話させてもらいました。工事の間は、まだ小さかった子供を連れて、毎日のように現場を訪れていましたね」
夫もあや子さんも、ともに建築学科を卒業。細かい図面は描いてもらったが、プランは自分たちで考えた。
「できあがってからやり直しになっては申し訳ないので、こちらの希望はちゃんと伝えておこうと。リサイクルショップやホームセンターなどを回って買ってきたものを、“これを使って下さい”、とお願いしたりもしましたね。最初はうるさい施主だと思われていたようですが(笑)、だんだんと分かってもらえたようです」
例えば、玄関のタイルや、リビングから見える2階の窓枠、キッチンの収納などは、自分たちが使いたいものを見つけてきて、それに合わせて設計してもらった。キッチンのオープンカウンターも、工事用の足場板を使って張ってもらったものだ。
「“こんな汚いのでいいの?” と言われましたが、“いや、これがいいんです”、と。どうしてもイメージが伝わらないところはそのままにしてもらい、後から自分たちで手を加えられるようにしておきました。8割完成していればいいと思っていましたね」
傷つくことを恐れない家に
あみこもの作家として雑貨などを制作するあや子さんのためのアトリエは、艶のある枠がイメージと違っていたので、白いペンキをわざと剥げた感じに塗装した。シャビーな雰囲気が、アンティークやヴィンテージの家具が配置されたリビングになじんでいる。
「味わいのある感じを出したかったんです。漆喰の壁にすることは決めていたのですが、それにはアイアンの手すりが似合うと思って、いろいろ探しました。結局、群馬のアイアンの作家に作ってもらったものを、階段の手すりにつけてもらいましたが、これも大工さん泣かせだったようですね」
漆喰の壁に無垢の杉の床は、天然素材にこだわったこともあるが、ふたりの子供を育てる家、ということを考えての選択だという。
「クロスだと破れると後が大変ですが、塗装なら自分で塗り直せばいいし、塗料を塗ってもらっている床も、傷が気になれば塗り直すことができます。新築だからといって、あまり子供にこうしてはダメ! とは言いたくなかったんです。傷つくことを恐れなくていい家、傷ついてもそれが自然に感じられるような家にしたかったですね」
床の塗料はもともとホームセンターで見つけてきたものを大工さんに塗ってもらった。ある程度時間が経ったら、手を加えるつもりなのだそうだ。
アトリエは1階に、キッチンからの動線を考えて設置。あえてシャビーに仕上げ、小屋のような雰囲気に。[/caption]
DIYでイメージを形に
自分たちで手を加えたい、という思いは、小さな飾りつけの棚や家具など、あらゆるところに表現されている。窓枠も、夫がDIYで既製の窓の上にはめ込んだものだ。
「アルミサッシの無機質な感じが嫌だったことと、断熱・蓄熱のために、ポリカーボネートという素材に木の枠をはめて作りました。冬はかなり暖かく過ごせますね。それに外からは家の中が見えず、中には光がやさしい感じで入ってくるので、ちょうどよかったと思っています」
洗面所もプラスチックの壁が味気ない、と古い木材を利用して壁面を作って目隠し。ルーバーフェンスを使ってサッシの窓も覆い隠した。そこにあや子さんが100円ショップで買ったグッズを使ってディスプレイ。電気スイッチのまわりを、フォトフレームで飾ったり、木箱をリメイクしたり。
「お金をかけるところにはかけているんですけど、かからないところにはかけていない家なんです」
あや子さんは百均グッズを使って作る雑貨のワークショップなども開催。そのオリジナリティ豊かなアイデアが、懐かしさと温かさを演出している。
まだまだ進化し続ける
「細かいものは私が作るのですが、大きなものの寸法合わせなどが苦手で、主人担当ですね」
キッチンのシンク下は、底板をつけず、ぴったり収まるスライド式の引き出しを夫が作成。DIYは、すっかり日常の仕事であり趣味となっているようだ。
「今やりかけているのは、家のフェンスです。土台だけ作ってもらって、そこに板塀をはっていこうとしています。あとは両親が住んでいる母屋の手入れと、以前ボイラー室だったところを何かに利用できないかと。でも、休日は子供たちを遊びにも連れていきたいし、なかなか進まないのですが」
家の前には、手作りの砂場やネットで購入したブランコが。祖父母にも見守られながら、子供たちもすくすくと育っている。まだまだ進化していく家に、その成長が刻まれていくようだ。