Style of Life
快適な暮らしの工夫を満載家族が自由に集い合う
風が通り抜ける家
家族の成長を楽しむ
家を建てる時、鈴木邸のいちばんのリクエストは、「白い箱を下さい」というものだった。
「家を育てたい、という思いがありました。当時はまだ長男が4歳くらい。子供の成長と比例するかのように、家も変化していくのを楽しみたいと思ったんです」
こう語るのは、ライフオーガナイザーとして活躍する鈴木尚子さん。漆喰の白い壁には、言われてみればお子さんの成長の後を伺わせる汚れが。
「汚れの位置がどんどん上の方に来ていますよね。これこそが家が育つということだなと思うんです。子供がのびのびと成長してくれることを優先していたので、あまりうるさく注意したりはしませんでした。壁が汚れたらいつか全部塗り替えればいいのですから」
大らかなそのポリシーは、家の外構からも感じられる。フェンスなどがなく、レンガ敷きのアプローチが玄関へと続く庭先。その向こうに立つ高台の白い一軒家には、オープンな雰囲気が漂っている。
自然素材を活かした造りに
尚子さんはもともと鎌倉育ち。自然を感じる雰囲気にしたいという思いが、開放感のある家づくりに反映された。
「天窓を取り付けたり、天井を高くしたりして、閉塞感のない造りを目指しました。自然素材にもこだわって、壁には珪藻土を塗ってもらいました」
天然石の床に吹き抜けの天井。天窓から日が差し込む玄関のドアは、尚子さんが絵を描き、それに合わせて造ってもらったものだという。
「色々と注文はしましたが、収納のための空間には特にこだわりました。当時、ちょうど片付けに興味を持つようになってきた頃だったので、どうしたら快適に暮らせるかを考えて間取りをリクエストしました」
それは、寝室は小さくしてもいいからシューズクローゼットを大きく作ってもらうこと、嫁入り箪笥、雰囲気が合わなくなったキャビネットなどをそのまま入れられる大きさのクローゼットやパントリーを造ってもらうこと、など。
快適に暮らす収納のコツ
「ものがすごく多い家なんです。その上もともと片付けられない性格だったので、色んなものが溢れかえっていました。でも、子育てで煮詰まっていたある時、ひとつ片付けてみたらとてもすっきりとした気分になったんです。片付けることによって頭の中も片付いて、生活が楽になり楽しくなる。そういうことに気づき、それを伝えたくて今の仕事をするようになりました」
その言葉の通り、クローゼットやチェストの中はたくさんの生活用品が、見事にすっきりと機能的に整理されている。
「夫も片付けが下手なので、自分で簡単にやってもらうにはどうしたらよいかというのも考えました。クローゼットにパンツハンガーを置いて、自分でそこにかけてもらったり、かごを作って脱いだものを入れるだけにしてみたり。するとやってくれるようになったので、私も楽になりました。脱ぎ散らかしは夫婦げんかの素ですから(笑)」
キッチンはシンプルに使いやすく
キッチンの脇には、生活道具のほとんどを収納できるパントリーを設けた。これはキッチン側と廊下側に、ふたつの出入り口があるところがポイント。
「以前住んでいた家も、パントリーが回廊型に設置された造りになっていて、ぜひうちもそうしたいと。家事の動線がとてもいいんです。生活に必要なもののほとんどすべてをここに集約しています」
キッチンはシルバーと黒と木のカラーだけでシンプルに業務用っぽく、男前なイメージでまとめた。
「主人も料理をしますし、男の人が立っても似合うような空間にしたいと思って。でも80%は私が使うので、棚などは私の手が届く位置で、かつ頭が引っかからない高さに設計してもらいました」
ダイニングに面したキッチンカウンターの下には、小さな棚が。
「空きスペースを活かして、食器やカトラリーを入れる棚を造ってもらったんです。ここからカトラリーを取り出して、ダイニングテーブルに並べるのが長女の仕事。扉の内側にはお手伝い記録の紙を張って、掃除機をかけたりお風呂掃除をしたときなどにポイントをあげています」
人を招きよせる家
鈴木邸は、小学校6年生の長男、1年生の長女と夫の4人家族。そして1階の一区画に祖父母が暮らす2世帯住宅になっている。
「祖父母と暮らせるようになったのはとても良かったですね。私も仕事に取り組むことができたし、子供達の成長にも祖父母の健康にも良い影響があったと思っています」
天井の高い明るいリビングダイニングで、週に2回は祖父母も呼んで全員で食事をとる。リビングにはアウトドアなどの趣味が多彩な夫のためのホビールームも。
「私がこういうのがあるといいんじゃない? と提案したんです。主人も気に入っていますね。みんなそれぞれ好きなことを自由にやりながら、でも何となくリビングで一緒にいる、というのがうちのスタイルです」
休日はオープンな広い庭でバーベキューをしたり、サンマを焼いたり、長男のサッカーの練習を夫が見守ったりと、庭の活用頻度も高い。
「主人は、平日は都心で働いているので、休日は家で、特に庭で過ごす時間が楽しいようです。ガーデニングにも凝っていて、庭の木も苗木を買ってきて育ててくれました」
自然を感じる風通しのよい家。そんな雰囲気に惹かれてか、友人たちもよく訪れる。何十人も招いてパーティーをすることもあるのだとか。
「家を建てた時、開放的で遊びに来た人が帰りたがらない家にしたい、と思っていました。そうしたら、本当に帰らなくって(笑)。でもそんな居心地の良さを感じてもらえるのはうれしいし、住んでいても満足感を感じますね。あえて遊びにいかなくても充実した時間が過ごせるので、家での生活を楽しんでいます」