Style of Life

インダストリアル・スタイル武骨な機能美を
ライフスタイルに取り入れる

インダストリアル・スタイル  武骨な機能美を ライフスタイルに取り入れる
国分寺の駅からもほど近い、閑静な住宅街。黒のガリバリウムの外観が目を引く一軒家が、一法師兼茂さんが一家4人で暮らすお宅だ。

アルミや鉄、亜鉛やステンレスといった様々な金属の素材感、天井などに使われている合板の木目や床の色、白だけではなく黒やグレーなどで塗られた壁が、それぞれの場所で様々な表情を見せている。そして、それらの分量のバランスや、リズム感が抜群にカッコいい。

玄関ドアを開けて通路を進むと、広い中庭に出る。前面の道路からも他の家からも見えない、プライベートな空間だ。
「最初に建築家にお願いしたのは、プライバシーを保てる中庭を作ってほしいという点でした」
中庭を確保することで駐車場のスペースを諦めたものの、中庭に向いたそれぞれの部屋からの眺めや、家の隅々まで光を取りこめる暮らしを楽しむことを選んだそうだ。


玄関から通路を通って中庭に抜ける。グレーチングを通る光が美しい。向かって右側は靴の収納スペース。
玄関から通路を通って中庭に抜ける。グレーチングを通る光が美しい。向かって右側は靴の収納スペース。
向かって右側が中庭。外の道路からは見えないプライベートな空間だ。仕切りが金属のグレーチングから木の格子に変わる。
向かって右側が中庭。外の道路からは見えないプライベートな空間だ。仕切りが金属のグレーチングから木の格子に変わる。


黒の壁とグレーの壁、木の天井と床の分量のバランスが絶妙なリビング。
黒の壁とグレーの壁、木の天井と床の分量のバランスが絶妙なリビング。

キッチンの台には鉄の板が貼られている。錆びが出てきて、それがいい味になっている。
キッチンの台には鉄の板が貼られている。錆びが出てきて、それがいい味になっている。
調理用具や調味料入れも、ステンレスやアルミのもので統一。
調理用具や調味料入れも、ステンレスやアルミのもので統一。
キッチン用品にも、機能美を追求。下はステンレスの業務用キッチンキャビネット。
キッチン用品にも、機能美を追求。下はステンレスの業務用キッチンキャビネット。
軍モノのバッグは、キッチン回りの小物の整理のために出動。
軍モノのバッグは、キッチン回りの小物の整理のために出動。


金属×木のバランスがクール

「工場で使われるような機能重視のものや、業務用のステンレスのアイテム、欧州の軍モノも大好きです」と兼茂さん。一法師さんのお宅が、ストイックでインダストリアルな印象なのは、兼茂さんのコダワリに拠るところが大きいようだ。

「例えばアルミの鍋は、すぐに把手が熱くなってしまいますし、蓋を取るのにも鍋掴みが必要なのですが、そういうちょっと不便さがあるモノの方が逆に愛着を感じることが多いですね」と、清子さんも兼茂さんのコダワリを一緒に楽しんでいるそう。


倉庫や工場などで使われるワイヤーのガードがついた照明器具。インダストリアルな雰囲気がクール。
倉庫や工場などで使われるワイヤーのガードがついた照明器具。インダストリアルな雰囲気がクール。
『パシフィック・ファニチャー・サービス』の時計のデザインは、一法師邸の雰囲気にピッタリ。
『パシフィック・ファニチャー・サービス』の時計のデザインは、一法師邸の雰囲気にピッタリ。
兼茂さんがパーツを集めて自作した照明器具。「パーツをひとつづつ選んで組み合わせる作業は、とても楽しかったです」
兼茂さんがパーツを集めて自作した照明器具。「パーツをひとつづつ選んで組み合わせる作業は、とても楽しかったです」
「優柔不断で照明器具を決められなかったので、天井近くにコンセントを作ってもらい、照明器具はここから電源をとってます」
「優柔不断で照明器具を決められなかったので、天井近くにコンセントを作ってもらい、照明器具はここから電源をとってます」


機能美を優先

リビングと渡り廊下をつなぐスイング式のドアは、食堂の厨房や、倉庫のバックヤードなどでよく使われている業務用のもの。一般家庭ではあまり使われないものだそうだが、兼茂さんのたってのリクエストで取り付けらた。
「スーパー等で見かけるたびに、いつか家を建てる時は絶対採用しようと密かに狙っていました。完全に見た目だけで採用したのですが、両手が塞がっていても、背中で押して開けられたり、子どもでも閉め忘れがないなど、実用面でも優秀でした」

兼茂さんのコダワリは、洗面所の水道の配管でも発揮された。
「本来なら壁の中に配管を隠してしまうものなのですが、敢えて見えるように外に出してもらいました。カッコいいL字のパイプや、元栓のバルブなど、こだわってパーツを探しました」


リビングからバスルームに向かうドアは、ドアの自重で自動的に閉まる業務用のものを設置。
リビングからバスルームに向かうドアは、ドアの自重で自動的に閉まる業務用のものを設置。
バスルームに向かう渡り廊下。天井のパイプは雨の日の洗濯物干しで活躍。スタジオライトのようなデザインの照明がカッコいい。
バスルームに向かう渡り廊下。天井のパイプは雨の日の洗濯物干しで活躍。スタジオライトのようなデザインの照明がカッコいい。


洗面所も、実験用の洗面台など、武骨なアイテムでまとめられている。
洗面所も、実験用の洗面台など、武骨なアイテムでまとめられている。
「水道の配管を見せることにはこだわりました。パイプやL字パーツなど、細かい部分は、直接水道工事の担当者と話をしました」
「水道の配管を見せることにはこだわりました。パイプやL字パーツなど、細かい部分は、直接水道工事の担当者と話をしました」

「ネットで購入したドイツ軍のシーツを、窓のサイズに合わせて縫製し直してもらいました」
「ネットで購入したドイツ軍のシーツを、窓のサイズに合わせて縫製し直してもらいました」
足元の元栓のパーツ選びにもこだわったという兼茂さん。レバーの赤が効いている。
足元の元栓のパーツ選びにもこだわったという兼茂さん。レバーの赤が効いている。
アルミの飯盒を、細々としたものが多い洗面台回りの小物の収納に使うアイディア!
アルミの飯盒を、細々としたものが多い洗面台回りの小物の収納に使うアイディア!
ハーフユニットバスの壁の一部にヒノキを使用。とてもいい香りが楽しめる。
ハーフユニットバスの壁の一部にヒノキを使用。とてもいい香りが楽しめる。


中庭は、2棟の建物を渡り廊下でつなぎ、一方は半透明のポリカーボネイトを立て、反対側はグレーチングや柵で囲い、プライバシーを確保している。

「2階の渡り廊下は、設計の段階では外廊下にする案もあったのですが、風呂やトイレに行くのに一度外に出るのは不便かと思い直し、渡り廊下でつないでもらうことにしました。洗濯物を干したり、サンルーム的にも使えるので、いい判断だったと思っています」

兼茂さんがぜひ使いたかったという蛇籠をとり入れた中庭。
「枯山水をイメージした庭を作りたいのですが、苔の山にするか、植物を植えてグリーンの山にするか、まだ決めかねています。家の中が落ち着いたので、これから手をつけたいと思っています」


プライバシーが保たれた中庭。「庭は枯山水をイメージしたものを考えてるのですが、まだ手をつけられない状態です(笑)」
プライバシーが保たれた中庭。「庭は枯山水をイメージしたものを考えてるのですが、まだ手をつけられない状態です(笑)」
中庭から、各部屋にたっぷり光が入る。洗濯物を大量に干せるベランダの下は、将来寝室にと考えている部屋がある。
中庭から、各部屋にたっぷり光が入る。洗濯物を大量に干せるベランダの下は、将来寝室にと考えている部屋がある。
玄関灯は、道路の街灯に使われる防犯灯をチョイス。
玄関灯は、道路の街灯に使われる防犯灯をチョイス。

一法師邸
設計 宮田一彦(宮田一彦アトリエ)
所在地 東京都国分寺市
構造 木造
規模 地上2階
延床面積 82.98m2
庭の石を入れてあるのは、フランス軍の鍋。
庭の石を入れてあるのは、フランス軍の鍋。
石を詰めた蛇籠で、敷地の境界線を作っている。
石を詰めた蛇籠で、敷地の境界線を作っている。
 
黒のガリバリウム鋼板の外観。郵便物の投函口のついたグレーの玄関ドアがキュート。
黒のガリバリウム鋼板の外観。郵便物の投函口のついたグレーの玄関ドアがキュート。