Style of Life
葉山の週末住宅外国人が暮らしていた古民家を
豊かな感性で住みこなす
古民家を週末住宅に
豊かな自然に恵まれ、別荘地として人気の葉山。デザイン関係の仕事に携わる小島トモさん・ムーさん夫妻は、5年前からこの地に建つ古民家を週末住宅にして、東京・昭島市の自宅と行き来する暮らしを送っている。
じつは週末住宅の場所として葉山を選んだのは、偶然のことだったという。
「趣味の小舟をオーダーするために初めて葉山に来た時、周辺を散策したら雰囲気がよくてすっかり気に入ってしまって」とトモさん。初めての葉山訪問からわずか1週間後にはこの古民家を見つけ、住むことを決めてしまったのだというから驚きだ。
「以前から古民家に興味があったので、不動産屋さんに古民家を探してもらいました。この家は、元々は網元さんの家だったようですね。その後イギリス人のオーナーが所有して、何人か外国人の方が借りていたと聞きました」(トモさん)。そんな歴史を持つためか、不便な古民家暮らしのイメージとは異なり、外国人目線で暮らしやすく手が加えられていたのが、この家の大きな特徴。例えば、リビングは床暖房完備で、さらに薪ストーブも。キッチンは大きなステンレス製のものに取り替えられ、浴室には檜風呂まで設置されているのだ。「古民家そのままだと生活しにくいところもあると思うので、床暖房や使いやすそうなキッチンを見て、とても気に入りました」(ムーさん)。
猫好きの二人はこの家を「猫の巣」と名付け、週末葉山生活をスタートさせた。
新旧和洋を織り交ぜて
「猫の巣」の室内に足を踏み入れるとまず、夫妻が鮮やかな赤色に塗り替えた襖と床の間が目に入る。一見奇抜なようだが、古民家ならではの深い木の色と調和しているのが不思議でおもしろい。配された家具や小物には、古道具と現代的なものが違和感なく入り混じり、“主役”の猫の置物があちこちに。また、古建具の欄間を絵のように壁に飾ったり、キッチンの照明にイカ釣り漁船のランプを使ったりするアイディアもお見事だ。「あえて和の空間のルールは無視して、カジュアルに使えるようにインテリアを考えました」とトモさん。
古民家の魅力に、前住人の海外テイストが加わり、そこにさらに二人の豊かな感性がミックスされたことで、唯一無二の空間が生み出されているのだろう。
大勢の仲間が集う
もともと家に人を招くことが好きだった夫妻。この週末住宅でも毎週のように仲間が集い、お酒を酌み交わしながら語らっているそうだ。「ここでは、2人きりでゆっくりしていることの方が珍しいですね」と笑うムーさん。「東京の友人もこちらの友人もたくさん集まって、まるでコミュニティーセンターみたい」とトモさんも笑う。
「美味しい魚が手に入ったから来ない?」など、急に声をかけることが多いというが、「座」の空間なので人数が増えても座る場所を気にしなくていいというのも、この家の魅力なのだそう。「30人来たこともありますよ」とトモさん。「家に来たみんながリラックスして楽しんでくれるのは、この家の力が大きいと思います。この家には不思議な力がありますね」。
つながり、広がる暮らし
葉山に通うようになってから、新たな人とのつながりがたくさんできたという夫妻。「排他的じゃなく、横のつながりを大切にする地域なので、年齢も職業も違うたくさんの友人ができました」(トモさん)。宴で友人たちと交わす会話から、仕事やライフワークのヒントが見つかることも。この家を中心にして、暮らしが大きく変わっているのを実感しているという。
今後は、庭にDIYでバーカウンターをつくる計画もあるとのこと。「猫の巣」の週末は、ますます賑やかになりそうだ。