Style of Life
鎌倉の山と海に囲まれて歴史ある街になじむ
温もりの伝わる家
素材感にこだわって
素材の温かさや風合いが伝わってくる生活まわりの道具。自宅の1階で、そんなものたちを集めたインテリアショップを営む浅川あやさん。
「お店を開きたくて、土地から探したんです。本当はもっと山の中でも良かったのですが、住むこととお店とのバランスを考えてここに決めました」。
その場所は、鶴岡八幡宮の前身である元八幡宮のはす向い。参道沿いに建つ浅川邸は、黒い塗装が経年で少し変化し、浅川さんがセレクトする生活雑貨のように、味わい深さを感じさせている。
「外壁はジョリパット仕上げで、炭を手で塗ってもらっているんです。苔がついてきて所々色合いが変わってきたのが嬉しいですね」。
ファサードには野草のように茂る植栽が、鎌倉の豊かな自然を思わせる。
「鎌倉石を敷いてもらい、自然に映えているような植物を植えてもらいました。鳥が種を運んできたりして、勝手に育ったものもありますが(笑)」。
錆び付いた郵便受けは、新品で購入したものだそう。海まで徒歩10分という立地。潮風があっという間に金属を風化させるようだ。
夫とふたりでプランニング
家の設計は、建築家を入れずにご主人とふたりで考えた設計図をもとに、工務店と相談した。
「大枠は夫、細かいところは私が考えました」。
ご主人の案で3階にもってきたリビングは、窓から元八幡宮の緑や、遠くに鎌倉山の景色も見渡せ、日だまりのように明るくて暖かい。リビング、ダイニング、キッチンがワンフロアになっていて、段差をつけることで何となく区切られている。
「これも主人のアイデアなんです。仕切りがないかわりに、変化をつけたいと。良かったのは段差に腰かけられること(笑)。パーティーの時などみんなそれぞれ好き勝手に座って、和んでいます」。
多いときは30人くらい集まったこともあるのだとか。ワンフロアの大空間に、窓から広がる景色が開放感を感じさせる。
部屋中を見渡せるキッチン
「ハンモックはどうしても付けたくて。そのために梁をつけてもらって、これも憧れだったジャン・プルーヴェのウォールランプを取り付けました」。
3人入れるという大きなハンモックで、ゆっくり寛ぐのが家族のお気に入り。6歳の長男も大好きなのだそうだ。
「お料理をする時間がいちばん長いので、キッチンはオープンにしてもらいました。カウンターに立っていて子供の様子が目に入るのがいいですね。」。
ざっくりと取り付けた収納は、後からDIYで棚板を付け、浅川さんセレクトの器を陳列。収納は上部を開けて、照明の光が通るようにしたのもこだわりのひとつだ。
「アイランドも使いやすいサイズや形を考えて、業者にオーダーしました。天板と側面の板は分かれているのが普通ですが、継ぎ目がでるのが嫌で、ステンレスでL字型につなげてもらいました。大きいので窓から吊り上げて入れるしかなくて、工事の人が“誰がこんなもの作ったんだ”って(笑)」。
海が近くにある暮らし
2階は主寝室に子供部屋、バスルーム。夏は海からあがってシャワーに直行するのだそうだ。真っ白なタイル貼りの空間に、ジャグジー付きのバスタブの贅沢な造りが羨ましい。
「窓から八幡さまの緑が見えるように、バスルームはこの位置がいいと主人が考えたんです。子供も大好きで、いつも浮輪を持って入っています」。
白い壁に囲まれた浅川邸は、年に1回ペンキを塗り替える。だから落書きなども気にしない。子供部屋は長男くんが自由にペイントした絵が楽しい。
「ここだけはOKにしているんです。絵から少しずつ成長の様子も分かり、見ていると面白いですよ」。
素材にこだわる浅川さんのもの選びのように、シンプルだけど心地いい、そんな暮らしが偲ばれた。