Style of Life
葉山の景観に溶け込む広大な庭とともに暮らす
真っ白な平屋の家
庭のグリーンを自らアレンジ
緑豊かな葉山の地に、小川さんが家を建てたのは7年程前。
「都内で2年くらい土地を探していたのですが、理想的なものになかなか出会えなくて。それが葉山に来て1日で決まったんです」。
坂道を下ったところに開ける広大な敷地。その向こうには野生の鯉も泳ぐ小川が流れている。
「初めて来たときは雑草だらけで、その中にボロボロの小屋が建っているだけでした。でもひと目でここだ、と思ったんです」。
敷地面積のほとんどを占める庭には、小川さんが選んだ植栽を、大きいものは業者に頼み、小さいものは自分で植樹。7年を経て見事に大きく成長した。
「庭は洋服のコーディネートと同じ。咲く花や葉っぱの色、形を想定して植えるものを選びました」。
赤系の葉やシルバーグリーンの葉など、多彩なグリーンが森のように茂る中に、真っ白な平屋の家が静かに佇む。
自然を邪魔せず一体となる
「最初は中古でも良かったのですが、土地が気に入ったので建てるしかなくなったんです。HPを見てイメージが合った設計事務所に依頼しました」。
小川さんが望んだのは“生活する家”であること。
「最初の案はL字型のガラス張りで、別荘っぽかったんです。毎日暮らす家なので、もっとシンプルな間取りが望みでした。天窓などもつけないで、できるだけフラットな形にしてもらいました」。
十字の壁を軸に、広々としたLDK、ベッドルーム、子供部屋、ゲスト用の和室などが並ぶ。
「当初は木造の2階建てを建てるつもりだったのですが、建築家が出してきたのが平屋の造りだったんです。2階建てにすると家の後ろの木が隠れてしまうし、光や風を邪魔してしまう、と。それを聞いてなるほどなと思いました。まわりの環境に合わせて設計することで自然といっしょになれる、ということはそれまで考えていなかったですね」。
庭に向けて開かれたLDKの大きな開口部はもちろん、玄関もトイレも、窓のない空間は存在しない。光と風が通り抜けるフラットな家は、まわりの景観と一体となって、葉山の自然の中に暮らす醍醐味を味わわせてくれる。
カラフルな色彩が映える
月日が経つにつれ表情が変わっていくのも魅力の無垢のナラ材の床、十字型の漆喰の壁。自然素材が活かされたシンプルで直線的な箱は、小川さんの選んだインテリアが彩りを添えている。
「いちばん最初に買ったのはリビングのソファーです。それを基準に色々と揃えていきました」。
チュニジアのアンティークのキリムを使ったソファーの色、キッチンのオープンシェルフに収められた食器の色、壁に飾られたアーティストや子供たちの作品の色。様々な色彩が溢れているのが魅力。
「気に入った物が見つかるまで絶対買いたくないんです。だから、子供たちの勉強机もいまだに無いんです」。
納得のいくものがなかった子供部屋のベッドは、1段のベッドを無理やり積み重ねて2段にして、DIYで色を塗った。包装紙を額装したり、フライングタイガーで購入したフラッグを飾ったり、子供部屋にも楽しさが溢れている。
家も家族ものびやかに
庭では、アンティークのテラコッタで作った小道や、錆びついた椅子やオブジェが味を出す。
「家も庭も、アメリカ的にはしたくない。ヨーロッパ風にしたいと思いました」。
ヨーロッパのガーデンのような敷地の中、取り付けられたブランコや鉄棒、ターザンロープなどで遊ぶ子供たち。大木にもはしごを使ってあっという間に登ってしまう。
「ここで暮らすとこういう風に育ちます(笑)」と、小川さん。
「自然を求めて葉山に来たわけではないのですが、ここに住んでみると、もっと奥まったところにいきたいと思いますね。他の建物が視界に入らない湖畔とか」。
喧噪を離れた場所に、家族だけの満ち足りた時間があった。