ピアノを囲んで心弾む時間大人も子どもも集う楽しさと豊かさが溢れる暮らし

ピアノを囲んで心弾む時間大人も子どもも集う
楽しさと豊かさが溢れる暮らし

南側を閉じつつ光を取り入れる

都心からもほど近く、寺社や大きな公園が点在する緑豊かな住宅街の一角。もともとこの辺りに住み、同じ中学校出身というAさん夫妻は、学生時代を過ごし、環境の良さを知り尽くしたこの地に、長男の小学校入学に合わせて家を建てた。「土地探しを始めた頃は、私の転勤で神戸にいました。東京のこの辺りで良い土地があればと知人に頼んでいたのですが、なかなか良い物件が出てこなくて。ここが出てきたときは即決でした」とご主人。

ご夫妻が一目で気に入ったというその土地は、東、北、西の三方を道路に面した開放的な敷地。ただ、日当たりが良く広々としている反面、プライバシーが確保しづらく、セキュリティ面が懸念されたという。また、南側の隣家も迫っていることもあり、建築家から提案されたのは、“南側を閉じる”プランだった。「明るい家を希望していたので、最初は南側を閉じるなんて大丈夫かなと思いましたが、夏場は暑すぎたり、外からの視線を気にして結局はカーテンを閉め切ることになるなら、とそのプランを採用することにしました」(ご主人)

思い切って南側に建物を寄せ、東側の庭に面して大きな窓を設けた。LDKと玄関の土間スペースの延長にはテラスを造り、室内外の一体感をアップ。土間スペースの吹き抜けがさらなる開放感を高めている。また、西側には西日の直射を避けるスクリーンウォールを設け、ほどよく日差しをコントロール。2階の窓から差し込むやわかな光が、吹き抜けを通して1階でも感じられる。そして、リビングの窓は、道行く人と目線が合わないように、横長のスリット窓を高めの位置に設けた。
光や風、視界の抜けなどに配慮したいくつもの工夫により、南側を閉じても1日中明るく心地よい家が完成した。


南側(右)は全面収納に。東側(奥)に大きな開口を設けた。

南側(右)は全面収納に。東側(奥)に大きな開口を設けた。

一段高くなっているリビングの、さらに上部につけたスリット窓。位置が高いため、外の人の視線を気にせず生活できる。

一段高くなっているリビングの、さらに上部につけたスリット窓。位置が高いため、外の人の視線を気にせず生活できる。

2階の西側に設けたスクリーンウォール。西日をやわらげるだけでなく、防犯性も高めている。

2階の西側に設けたスクリーンウォール。西日をやわらげるだけでなく、防犯性も高めている。

2階から土間スペースの吹き抜けを見る。軽やかな階段が採光や通風を邪魔しない。

2階から土間スペースの吹き抜けを見る。軽やかな階段が採光や通風を邪魔しない。


三方を道路に面した敷地。1階部分の外壁は、種類の異なるガルバリム鋼板を貼り分け、インパクト大。職人技が光る。

三方を道路に面した敷地。1階部分の外壁は、種類の異なるガルバリム鋼板を貼り分け、インパクト大。職人技が光る。


料理しながら、飲みながら、機能的なキッチン

家を建てるにあたり、建築情報番組を毎週録画してチェックし、住宅雑誌も読み込んで研究していたというAさん夫妻。建築家に渡した要望は、A4用紙3枚にもなったという。機能面やトータルバランスなどプロの視点の助言が加わり、整理されていくなかで、特にこだわったのは、キッチンを中心とした人が集まる家だった。「飲んだり食べたりするのが好きで、人を招くことも大好き」というご夫妻のもとには、多いときには20人ほどの友人が集まるという。大勢集まっても、それぞれに居場所がある家を望んだ。

キッチンは作業性を考慮して、約4mの長いカウンターを採用。幅を1mと広く取り、スタンディングバーのように、キッチンに立っていても会話が楽しめるようにした。

また、友人たちが集まるときにふるまわれるのが、ご主人の打つピザ。そのため、カウンターの素材は石質を使用。作業スペースや通路を広めにし、友人たちが気軽に加われるよう考慮した。
ご主人の打つピザは毎回大好評のよう。「おいしいよ!」とは息子さんたち。「話題も注目も全部持っていかれます」と奥さまも笑う。


会話が弾む対面式のキッチンは、真っ白で機能的。通路側も広めに取り、家族や友人が一緒に作業できる仕様にした。

会話が弾む対面式のキッチンは、真っ白で機能的。通路側も広めに取り、家族や友人が一緒に作業できる仕様にした。

南側は壁一面収納に。「見せる収納が苦手なので、仕舞う収納にした」と奥さま。収納上の間接照明がオシャレ。ダイニングテーブルはキッチンカウンターの質感に合わせて探した。

南側は壁一面収納に。「見せる収納が苦手なので、仕舞う収納にした」と奥さま。収納上の間接照明がオシャレ。ダイニングテーブルはキッチンカウンターの質感に合わせて探した。


ピアノを囲んでゲストがくつろぐ

音大出身の奥さまのグランドピアノが置かれたリビングは、まるで舞台のような空間。ピアノを囲んで腰掛けられるようにと段差をつけ、ピアノを照らすように計算された照明が空間を盛り上げる。

ホームパーティでは、「音楽好きの友人が多いので、みんな気軽にピアノを弾いていますよ」と奥さま。自由にピアノを奏で、お酒を飲みながら歌い出したりと、ゲストが思い思いにリラックスして過ごされているようだ。

リビングからつながるテラスには、水盤を設けた。夏場の子どものプールとしてはもちろん、お湯も出る仕様にして足湯としても活用できるようにした。
バーベキューをするときは、アウトドア歴30年以上というご主人の出番。水盤の水を抜けば、ゲストが腰掛けるのにほど良い高さとなる。

ほかにも、階段の踊り場や玄関の土間など、さっと座れるスペースがそこここにあるA邸。キッチンからダイニングやリビング、そして土間へと続く広々としたワンルームの空間は、ゲストそれぞれの居場所があり、多くの人が集まっても余裕で受け止めてくれる。


段差をつけたリビング。弾いていないときのグランドピアノは美しいインテリアとして愉しませてくれる。

段差をつけたリビング。弾いていないときのグランドピアノは美しいインテリアとして愉しませてくれる。

東側テラスに設けた水盤。お気に入りのスペースに座ったご主人が子どもたちの様子を見守る。

東側テラスに設けた水盤。お気に入りのスペースに座ったご主人が子どもたちの様子を見守る。

キッチンカウンター奥のスペースは奥さまの作業スペース。窓越しにテラスで遊ぶ子どもたちの様子が見える。

キッチンカウンター奥のスペースは奥さまの作業スペース。窓越しにテラスで遊ぶ子どもたちの様子が見える。

広い土間スペース。奥が玄関。全面に設置した収納には、多彩な趣味をもつご主人のアウトドアグッズやサーフボードなどが整理整頓されている。

広い土間スペース。奥が玄関。全面に設置した収納には、多彩な趣味をもつご主人のアウトドアグッズやサーフボードなどが整理整頓されている。


自然と子どもが集まる家に

「家づくりにおいて、子どもを中心に考えたわけではないのですが、結果的に子どものお友達たちがよく出入りする家になりました」とは奥さま。水盤をはじめ、土間スペースの吹き抜けに設置された採光通風窓につながるタラップは子どもたちの恰好の遊び場に。また、回遊性があり、段差があるのも、子どもたちが好きそうな造りである。ふらりときて、土間の収納からサッカーボールやスケボーを取って遊びにいく子どももいるとか。「建築家の中では、子どもが出入りする家が“良い家”といわれているとうかがい、まさにそうだなと思っています」(奥さま)

奥さまが弾くピアノに合わせて、息子さんたちが歌うこともしばしば。「仕事から帰宅するとき、妻と子どもたちの歌声が聞こえてくるというのは、なんとも心地良いですね」と目を細めるご主人。実は、Aさん家族が全員揃って暮らすのは今年の4月から。それまでの3年間は、ご主人は単身赴任で、このたび偶然東京転勤が決まったという。それだけに、のびやかに育つ子どもたちと共に過ごす時間をかみしめていらっしゃるように感じた。


長男(手前・小4)と次男(小2)が歌を披露してくれた。澄んだのびやかな声は、さすが!音楽家のお子さん、という印象。

長男(手前・小4)と次男(小2)が歌を披露してくれた。澄んだのびやかな声は、さすが!音楽家のお子さん、という印象。

採光通風窓の開閉や掃除のために取り付けたタラップは子どもたちに人気の遊び場。

採光通風窓の開閉や掃除のために取り付けたタラップは子どもたちに人気の遊び場。

2階の子供部屋。いずれは2つに分けることも視野に入れた造りに。この部屋以外は全て間接照明。

2階の子供部屋。いずれは2つに分けることも視野に入れた造りに。この部屋以外は全て間接照明。

2階の和室。現在は子どもたちのサッカー部屋になっているそう。窓の奥に西日を避けるスクリーンウォールを設置している。

2階の和室。現在は子どもたちのサッカー部屋になっているそう。窓の奥に西日を避けるスクリーンウォールを設置している。


A邸
設計 志柿敦啓建築設計事務所
施工(株)アーキッシュギャラリー
所在地 東京都調布市
構造 木造
規模 地上2階
延床面積 129.91 m2