Style of Life
アンティークな箱との出会い古いものが映える
都会のガレージハウス
“アンティークな箱”に合う家を
東京・新宿とは思えないほどの静かな住宅街に、Sさん夫妻と愛犬2匹が暮らす家がある。この家を建てる原動力となったのは、ある家具との出会いだった。「妻も私も、もともと家具屋や雑貨屋などのお店巡りが好きで、よく目黒通り周辺を見て回っていたんです。あるとき目黒のアンティークショップで出会ったのがこの“箱”。2人とも一目惚れして、衝動買いしてしまいました」とご主人。また、奥さまも、「それまでリビングで使っていたガラステーブルをもっと味のあるものにしたかったので、この“箱”をリビングのローテーブルとして使いたいと思ったんです。でも、以前住んでいたマンションでは雰囲気が合わなくて。この“箱”に合う家を造りたいね、と2人で話すようになりました」と当時を振り返る。
その“箱”とは、アンティークの船旅用の大型トランク。150年前のイギリス製で、重厚感のあるボディに使い込まれたレザーや金具の風合いなど経年のダメージがなんともカッコイイ。もともとアンティークやヴィンテージに興味があったご夫妻。都会的ではあるが、“古いものが映える家”をコンセプトに家づくりがスタートした。
お気に入りの照明やパーツを持ち込んで
「設計会社は直感で決めました」とは奥さま。「インターネットを見ていて、私たちの好きなテイストの作品が多く、イメージが伝わりそう」と、すぐに電話し、即日打合せをしたお相手が、株式会社ホープスの清野廣道さんだ。「初めてお会いしたときから、私たちのやりたいイメージをすぐにキャッチしてくれました。あまりの伝わりやすさに驚いたほどです」とご主人。
アンティークのトランクだけでなく、照明、タオルかけなどのパーツ、壁の塗料など気に入ったものを見つけると、“○○に使って欲しい”とご夫妻の方から持ち込んだという。「今回は何が出てくるのか、毎回それが楽しみでもありました」と当時を思い出して笑う清野さん。「そのたびにお2人のセンスの良さを感じましたね。こちらはお2人のこだわりや希望をヒアリングして、あれもしたい、これもしたいと広がるイメージを整理し、引き算していく作業でした。暮らしながら、お2人が自由に雰囲気を造っていけるように、シンプルな家を造ることを心掛けました」(清野さん)。
建築家が探し当てた家具屋でオーダー
S邸の大型家具は、家の雰囲気に合わせた造作家具が設えてある。清野さんが目黒通り周辺の家具屋を20軒近く探しまわり、「ここならお2人のイメージに合うものを造ってくれると確信した」という職人気質の家具屋を紹介。Sさん夫妻もとても気に入り、寸法やデザインの相談に入ったという。
「月に1回は人を招いていますね」というご主人。ダイニングテーブルは、アンティークのチャーチチェアが6脚置ける大きめサイズを希望した。また、パーティーのときには料理好きなご主人もゲストに料理をふるまうため、キッチンには大きな作業台を設けた。
完成した造作家具は、ヴィンテージ風の味があり、アンティークのトランクとも自然になじむ。Sさん夫妻のイメージどおりだったという。感性の合う建築家との出会いがあったからこそ、これらの家具が生まれたといえるだろう。
念願のビルトインガレージ
家を建てるにあたり、ご主人が熱望したのがビルトインガレージ。すぐ隣には書斎を設け、大好きな車を見ながら好きなことができる、まるで隠れ家のようなスペースになっている。「休日はコーヒー片手に、ここに籠ることも多いですね。最近凝り始めたアウトドアグッズの手入れをしたり、雑誌を読んだり。気ままに過ごす時間が心地よいです」(ご主人)
一方、読書好きでインドア派の奥さまは、「犬と一緒にリビングで過ごすことがほとんど」と話す。「男くさいものをガレージの1か所にまとめ、ほかの共有スペースは私のこだわりも反映されています」と奥さま。「邪魔にならない程度に増やしている」という植物がさりげなく飾られ、真っ白い壁にはリゾート風の装飾、アーチ型のニッチには季節を意識したものが並ぶ。奥さまの女性らしい細やかな配慮が随所に感じられる。
光がたっぷり入る真っ白なモダンな空間に、アンティークの古い物が美しく映え、落ち着きと心地よさを生み出しているS邸。古いものと新しいものを上手に組み合わせながら、お2人らしい住まいづくりを愉しまれていくことだろう。