Style of Life

“間”を紡ぐ建築家の自邸自在に姿を変える空間が
暖かなコミュニティを育む

“間”を紡ぐ建築家の自邸 自在に姿を変える空間が 暖かなコミュニティを生む

曜日と時間で使い方が変わる1階

井の頭線池ノ上駅からほど近い、線路の土手に面して建つ建築家の江頭 豊さんの自邸は、フレキシブルに人と人をつなぐ装置として設計されている。
一家4人で夕食を囲む自邸の1階『DOTEMA』は、平日の昼間はコワーキングスペース、週末はワークショップやキッチンスタジオ等のイベントスペースにもなる。そして同じ敷地内に、4戸の賃貸ワンルームも併設している。

豊さんは朝食を1階のカウンターでゆっくりと摂るのが日課なのだそう。
「子どもたちがバタバタと2階で朝ごはんを食べている間に、僕は1階で優雅にコーヒーなど楽しんでいます(笑)。家族で1階で夕食をとったあとは、そのままここでお酒を飲んで、プロジェクターで映画を楽しむことも多いですね」
平日はノートパソコンを広げて仕事もする。まさにひとつの空間の使い方を臨機応変に変えているのだ。

外のデッキスペースは、1階の土間からシームレスにつながっており、イベント時の交流の場となったり、賃貸の住人達との交流の場になったり、近くの子どもがやって来てブランコで遊ぶ。
自在な使い方ができる“間”が、人と人との関係を紡ぎ、豊かなコミュニティを創造している。

カフェのようなお洒落な空間だけれど、自宅のリビングでもある。棚いっぱいのCDとレコードは豊さんのコレクション。
カフェのようなお洒落な空間だけれど、自宅のリビングでもある。棚いっぱいのCDとレコードは豊さんのコレクション。
キッチンのカウンターの並びにはターンテーブルも。
キッチンのカウンターの並びにはターンテーブルも。
ブルーのタイルが空間に色を添えている。カウンター下のガラスタイルも美しい。照明器具は、ひとつひとつ違う場所で買い集めたものだそう。
ブルーのタイルが空間に色を添えている。カウンター下のガラスタイルも美しい。照明器具は、ひとつひとつ違う場所で買い集めたものだそう。
天井の6面体のスピーカーが空間全体に良い音を響かせる。天井の照明用レールに渡した小さな粒つぶのLEDライトが可愛い。
天井の6面体のスピーカーが空間全体に良い音を響かせる。天井の照明用レールに渡した小さな粒つぶのLEDライトが可愛い。
オールステンレスの本格的なキッチン。将来、飲食店としても活用できるように、ダブルシンク、大型食洗機の設備を整えた。
オールステンレスの本格的なキッチン。将来、飲食店としても活用できるように、ダブルシンク、大型食洗機の設備を整えた。
カウンターはグルリと回遊できるので、子どもたちはキックボードや自転車でグルグル回って遊ぶのがブーム。書籍は自由に手にとって閲覧できる。
カウンターはグルリと回遊できるので、子どもたちはキックボードや自転車でグルグル回って遊ぶのがブーム。書籍は自由に手にとって閲覧できる。
1階には小上がりも(手前)。「1段高い場所はイベントの際にステージとしても使えます」。プロジェクターも設置。
1階には小上がりも(手前)。「1段高い場所はイベントの際にステージとしても使えます」。プロジェクターも設置。
トイレの鏡には女優ライトが。「既存の照明器具を6つ配置しています」。2階の洗面所の鏡も同様の仕様。
トイレの鏡には女優ライトが。「既存の照明器具を6つ配置しています」。2階の洗面所の鏡も同様の仕様。

4戸の賃貸住宅を併設

自邸の隣は4戸の賃貸住宅になっている。江頭さんの以前のお宅は、賃貸住宅があった場所にあったのだそう。
「家の隣に空いていたスペースを買い受けて敷地を広げ、現在の家を作りました」

ウッドデッキは、江頭さん家族、賃貸の住人、そして『DOTEMA』を利用する方の共通の庭。賃貸の住人たちとここでバーベキューを楽しむこともあるのだそう。

ガルバリウムを平葺きした外観。手前の4戸がワンルームの賃貸住宅。現在は満室。
ガルバリウムを平葺きした外観。手前の4戸がワンルームの賃貸住宅。現在は満室。
敷地の奥が自邸と『DOTEMA』。ウッドデッキではバーベキューを楽しむ。コンクリートの擁壁はコの字に曲げてベンチとして使えるようにしている。
敷地の奥が自邸と『DOTEMA』。ウッドデッキではバーベキューを楽しむ。コンクリートの擁壁はコの字に曲げてベンチとして使えるようにしている。
賃貸の4部屋は、それぞれ壁の色が違う。1階はモルタルの土間があり、2階の部屋はロフトが付く。
賃貸の4部屋は、それぞれ壁の色が違う。1階はモルタルの土間があり、2階の部屋はロフトが付く。
1階は、週末や夜間、ガラリと雰囲気を変える。
1階は、週末や夜間、ガラリと雰囲気を変える。
1階には豊さんの仕事部屋も。
1階には豊さんの仕事部屋も。
ステンシルを使い番号をDIYしたロッカーは、コワーキングスペースを利用する方に貸し出している。
ステンシルを使い番号をDIYしたロッカーは、コワーキングスペースを利用する方に貸し出している。

2階の自宅部分はくつろげる雰囲気に

2階は家族のプライベート空間。針葉樹合板の木目を活かした、ナチュラルでリラックスできる雰囲気の第2のリビング。交流の場である1階の『DOTEMA』とは違った魅力を楽しめる。
窓からの眺めも、1階は線路の緑の土手を、2階からは風景の広がりを堪能できる。

天井高を活かし、ロフトを造っている。普段使わないモノや、季節の衣類を収納している。

右側の引き戸を開けると、2階への階段が現れる。1階をパブリックな使い方をする場合に、この引き戸でプライベートな住居と分けている。
右側の引き戸を開けると、2階への階段が現れる。1階をパブリックな使い方をする場合に、この引き戸でプライベートな住居と分けている。
2階のリビングはたっぷりとした天井高。針葉樹合板の壁がくつろげる雰囲気。
2階のリビングはたっぷりとした天井高。針葉樹合板の壁がくつろげる雰囲気。
2階の窓の外は大きく開けていて眺めがいい。「遮る高い建物もないので、遠く三軒茶屋のキャロットタワーも見えます」
2階の窓の外は大きく開けていて眺めがいい。「遮る高い建物もないので、遠く三軒茶屋のキャロットタワーも見えます」
下駄箱は2階に。靴を横向きに並べてディスプレイするように収納するスタイルは、靴のデザインを楽しめる。靴好きなら真似したい方法だ。
下駄箱は2階に。靴を横向きに並べてディスプレイするように収納するスタイルは、靴のデザインを楽しめる。靴好きなら真似したい方法だ。
2階にはロフトも。ロフトは白に塗装。収納として利用している。
2階にはロフトも。ロフトは白に塗装。収納として利用している。
晴くんと優ちゃんの勉強はリビングで。愛想のいい猫のララちゃんが乗っているカウンターテーブルは、子どもたちと一緒にDIYしたのだそう。
晴くんと優ちゃんの勉強はリビングで。愛想のいい猫のララちゃんが乗っているカウンターテーブルは、子どもたちと一緒にDIYしたのだそう。

扉のないシームレスなリビング

寝室とリビングの間は扉をつけず、シームレスな空間に。寝室の傾斜のある天井は巣ごもり感たっぷり。ゆっくりと朝まで熟睡できる。
「今はベッド2つ並べて4人川の字に寝ています」

子どもたちの成長に合わせて2階の空間も、そして1階で育む人々との絆も、変化しながら豊かに成長していくに違いない。

右側がリビング、左側が寝室。扉はつけず、壁でゆるやかに仕切っている。水道管で作ったラックに家族の服を収納。
右側がリビング、左側が寝室。扉はつけず、壁でゆるやかに仕切っている。水道管で作ったラックに家族の服を収納。
この家と広場の模型は7歳の晴くんの作品! 「建物が好きなようで、ゲームの『マインクラフト』でもカッコいい建築を作ってますね」と建築家のお父さんは目を細める。視線が抜ける柱の向こうが2階のミニキッチン。
この家と広場の模型は7歳の晴くんの作品! 「建物が好きなようで、ゲームの『マインクラフト』でもカッコいい建築を作ってますね」と建築家のお父さんは目を細める。視線が抜ける柱の向こうが2階のミニキッチン。
主に葉月さんが使っている部屋。将来は子ども部屋にすることも可能。
主に葉月さんが使っている部屋。将来は子ども部屋にすることも可能。
「バスルームは換気を良くしたかったので、ベランダに面した場所に作りました。目隠しのために柵を高くしています」
「バスルームは換気を良くしたかったので、ベランダに面した場所に作りました。目隠しのために柵を高くしています」
洗濯機が一段高い位置にあるのは、この下が2階に上がる階段になっているため。「洗濯物を出し入れする際、腰をかがめなくて良いので楽です」
洗濯機が一段高い位置にあるのは、この下が2階に上がる階段になっているため。「洗濯物を出し入れする際、腰をかがめなくて良いので楽です」

江頭邸
設計 江頭 豊(DOTEMA)+越浦太朗建築設計事務所
所在地 東京都世田谷区

構造 木造
規模 地上2階

延床面積 195㎡