Style of Life
“開かれた家”を目指しておいしい記憶をつくり、
地域に寄り添う。
尾崎家の建替え時のテーマのひとつがこれだった。キッチンがメインと言っても、生活感が出過ぎるのは嫌だったので、“見せるところはちゃんと見せつつ隠すものは隠す“と明確に線引き。収納の奥行きの寸法から、調味料や調理道具の置き場所まで、出来る限り具体的に建築家に伝えた。目指したのは「機能的かつ質実剛健」だ。
おいしい記憶
キッチンをつくる際には、2人のお嬢さんの将来のことにまで思いが及んだ。「ここで私が料理をする姿を見て、また舌でその味を覚えれば、大人になっても、きっとそういうことって忘れないと思うし、おいしい記憶ってすごく残るんじゃないか」と奥さん。「一緒に過ごした時間とともに、そうした記憶ってすごく温かいものだと思うから、その両方を子どもたちに残してあげたいなと」
アイランドにしたのは、将来ここで料理教室を開くことも考えて。「現時点で私がきちんと教えられるのは、パンぐらいですけど」と話す奥さんはサロンのようなものにできればと考えている。「パンの日もあれば、近所の奥さんか知り合いの先生を呼んで、たとえば、今月はこれをみんなで覚えるみたいな感じで」
大人が似合う家
建築家が設計したものでは白を基調に繊細・華奢なデザインのものがわりと多く見られるが、尾崎家のインテリアは大地の香りが漂うかのようなどっしりとした趣が特徴的。
“男らしい家”というのが建築家へのリクエストにあったそうだ。「お人形がいっぱいあって花柄のカーテンがしてあるところにこの人住んでいるんだって知ったら、ちょっと興ざめしちゃいますよね、どんな素敵な人であっても。だからまず、男の人が似合うような家にしたかったというのもありましたね。もちろん自分がそういう男っぽい感じの、頑丈でごっつい感じが好きなんですけれども」
「私たち夫婦はどちらも似たような格好をしているんですが、その大人2人が馴染むような家、似合うような家が良かったんですね」とも。子どもが女の子2人なので、普通にシンプルにつくっても自然に華やかな家になる、という建築家の読みもあった。
公民館みたいな場所
この家には、とてもフランクで開放的な奥さんにふさわしいスペースが1階にある。料理教室の構想とも重なるが、近所の人たちが集まるサロン的な性格で、近隣のコミュニティの中心になるようなもの、というイメージが初めからあった。設計時には“公民館みたいな場所”というのがそのコンセプトだった。
「昔はよく近所の人が気軽にお茶を飲みに来ることがあったけど、今はそういうのがあまりないじゃないですか。私がいるかなと思って来てくれるぐらいでもちろんいいから、みんなが来れるようなスペースがあればいいかなと」
「あくまでも近隣に開かれた何かをつくりたいというのが前提で、自分ができることを考えていった」結果、雑貨屋を開くことに。現在は、キッチン雑貨とステーショナリー、ベビー小物を中心にした品揃えで、現在は水木金の3日間、営業しているという。
開かれた家
1階のスペースに関しては、こんな構想も披露してくれた。「ゆくゆくは教室とかも開きたいと思っています。私だけが教えるのではなく、誰か先生を招いてもいいという感じで、今よりもっと開かれた家を目指して」
「幼稚園からの帰りに近所のママがお子さんを連れてきてうちの子とそのまま遊ぶことが多いんですが、子どものほうが最近は慣れちゃって、ママがお店で喋っていると、うちの子がいなくても、子ども部屋が玄関入ってすぐなので、もう遊び始めているんですね」
こう奥さんが話す尾崎家は一般家庭と比べすでに十分に開かれているが、さらにまた、地域へと開いていくのだという。ある意味、“地域へと開く実験住宅”とも言うべき尾崎家のこれからの展開が楽しみだ。
設計 ニコ設計室
所在地 東京都練馬区
構造 木造
規模 地上2階
延床面積 85m2