Architecture
エネルギーをチャージ 理想がいっぱい詰まった
坂の上の家と暮らし
長年の思いを形に
横浜の小高い丘の上。住宅街を見下ろすように建つその家は、ライフオーガナイザー・宇高有香さんの長年の夢が結集した館だ。「中古を含め色々見て歩いたのですが、やはり建築家さんに自分の希望をリクエストして建てたいと思い、土地を探すところから始めました」。
以前からピックアップしていたリストの中から、最もインスピレーションの合った矢作昌夫建築設計事務所に依頼。一緒に土地を見てもらい、この傾斜地に建てることを決めた。「普通の整形地にひかれなかったんです。特に坂のある町にこだわったわけではないのですが、こんな土地も面白いかなと思いました」。
子供の頃から、絵本などで見た家、人が住むところに興味があった、という有香さん。短大ではインテリアを専攻し、いつか自分の家を建てたい、という思いでお金も貯めた。そして3年半かけてプランニング。家づくりをきっかけにライフオーガナイザーという職業に出会い、資格も取得してしまった。
モダンで開放感のある造り
そんな有香さんが特にこだわったのは、「空間の変化とつながりが感じられる家」であること。変わった形が楽しめるそれぞれの空間が、緩やかにつながっている家を目指したのだという。「ドアで仕切っているのはバスルームとトイレくらい。後はきちんとした仕切りは設けませんでした」。坂の上の眺望を活かすため、開口部は大きくとった。リビング、ベッドルームには仕切りがなく、大きなガラス張りの窓からの見晴らしが開放感を与える。
「モダンな雰囲気の家にしたい、というイメージはありましたね。素材はコンクリートと木と白い壁。全部同じにするのではなく、無機質な素材と木の温かさがミックスされた感じにしたいと思いました」。アフリカのムニンガという床材の落ち着いた色合いが、無機質なコンクリートをうまくカバー。さり気なく添えられたグリーンも、シンプルな空間に潤いを与えている。
「キッチンは半クローズ状態にしました。ドアを設けるつもりはなかったのですが、忙しい中で料理に集中できるようにもしておきたい、だからオープンにもしたくなかったんです。ドアはなくても構造壁が間仕切りになって、その横にちょうど冷蔵庫が隠せるし、ほどよい感じですね」。
スウェーデン製の大きな食洗機や、パンを焼くためのオーブンが収まることを考えて、オーダーキッチンに。調理をしながら手を伸ばせる位置に収納を設置したり、レールを付けてもらって中身を引き出しやすくしたり。使い勝手にこだわり設計も3回ほどやり直したという。
スタイルに合わせてフレキシブルに
1階の畳のスペースは、いずれカーテンなどで仕切れば個室としても使えるよう考えた。今はひと部屋の子供部屋も、いずれ2部屋に仕切れるようシンメトリーな設計に。「先に決めつけすぎてしまうと、後から替えられなくなってしまうので。その時のスタイルに合わせて柔軟に対応できるよう、緩やかにしておきました」。子供のおもちゃ入れなども箱のものを使用。成長に合わせてフレキシブルに変えていくことができる。
家づくりとともに、ライフオーガナイザーの仕事に興味を持っていったという有香さん。「もともと片付けが苦手で。それならば、それなりの方法を考えよう、と思ったのがきっかけです。ライフオーガナイザーの勉強をしたのは、せっかく建てた家を守っていくためでもありました」
パワーチャージできる家
心地よく暮らすために行った勉強が、色々なところで活かされた。例えば、キッチンの脇に子供担当の食器棚を設置。食事の前には、長男・通吾君(6歳)、長女・有咲ちゃん(3歳)がここから食器やお箸などを取り出して、テーブルに配膳する。またバスケットを使って、子供たちの日用品を仕分け。それぞれが自分のものを自分で管理することで、成長にもつながりママの負担も軽くなる。
「1日1回でもいい、最後だけはきれいにするといいと思うんです。家族が片付けやすくするにはどうしたらいいか、ということをいつも考えていますね」。家具はダイニングテーブルとベッドだけ。収納するものは作り付けのクローゼットにすっきりと収まっている。「ものは増えたら減らすようにしています。処分するというよりは、好きなものだけを厳選している感覚ですが」
インテリアは、コンクリートやフローリングの床、白い壁に似合ったものが厳選され、見事なコーディネート。有香さんが、この家をいかに愛しているかが伝わってくる。
「とにかくこの家が好きだし、ずっと好きでいたいんです。生活のベースがあってこその毎日。だから、家族が家に帰ってパワーチャージできる、そんな心地よい家にしておくにはどうしたらよいかを、いつも考えていますね」