鎌倉山に暮らす“非日常的”な空間でオフの時間を満喫する

鎌倉山に暮らす“非日常的”な空間で
オフの時間を満喫する

発端はロンドンだった。海外勤務で2004年から住んでいたロンドンで、ご主人に建築家の知り合いができた。「家に呼んでいただいて、この建築見に行った方がいいよとか、ディテールの写真を見せてもらってこの部分がすごいとかいろいろ教えてもらったんですね。もともと建築やインテリアが好きだったんですが、その出会いがきっかけにもなってヨーロッパの建築巡りをけっこうしたんですよ。それで、日本に帰ってきたら家を建てたいなと思ったんです」

ヨーロッパでは仕事で行った先の近くに見るべきものがあれば出かけて行った。そうして25カ国くらい建築を見て回ったという。


2階のLDKに面したバルコニー。鎌倉山に建てられたこの家のお隣には緑深い庭園があり、素晴らしい借景を提供している。

「いちばん良かったのがピーター・ズントー。スイスのバルスにあるスパとか教会がなかでも好きですね。それを建築家の黒崎敏さんにお伝えしました。家のイメージはズントーで、それから安藤忠雄も好きで…と」

モダンなコンクリートの家に憧れつつ、冷たい印象で人を寄せ付けないような感じにはしたくなかったし、ヨーロッパ的になってしまうのもよくないので日本的な何かを盛り込みたい、とも伝えたという。「その日本的な何かがよく分からなかったんですけど、黒崎さんからの回答は、たとえばこの木の天井とかコンクリートの壁の杉板模様とか水平窓の横長のプロポーションとか、そういったものでしたね」。


日本的に高さを抑えて水平に連続する風景をみせる大開口。

収納棚の下には、ご主人の好きな建築の本がディスプレイされている。

2階の5角形の形状は敷地からそのまま導かれた。天井は野地板と梁を5角形に組み上げた。


お好み焼がつくれるステンレスのテーブルは12名座れる。来客時には大活躍だ。

バルコニーでの夫妻。この日は晴天で、相模湾にはセイリングを楽しむヨットが多く浮かんでいた。


“非日常性”を求めて

あとご主人がこだわったのは“非日常性”。デザインホテルが好きで、家でもホテルみたいな、日常の生活とは違う感じがほしかったのと、平日と週末のオンオフの違いをはっきりとつけたかった。

「以前住んでいたのが芝浦の高層マンションで、それはそれで便利だったんですが、毎日、朝7時くらいに家を出て帰宅が11時とか12時。それで土日は疲れて何もできない。それを解消したいというのがあって、最初ここは週末の別荘で金曜日の夜出て土日を過ごすというスタイルで考えていました。東京から離れて非日常的な時間を過ごすというのが大きかったんですが、だんだん建築への要求が高くなって、じゃあこちらに住もうということになったんです」


ガラスの壁は、来客の意識を海とは逆に方向づける。上り切って振り返ったときに、絶景にサプライズするという仕掛けだ。

1階から階段を通して見上げると2階の木の天井がホワイトの中に印象的に浮かび上がる。左側に見えるのがアトリエ。


朝から晩まで時間に追われる日常を離れて、ここでは仕事をいっさい忘れてゆったりと過ごしリフレッシュにつとめたい。だから、リビングはゆったりと過ごせる広さにこだわった。

「主人は休みの日はつねにリビングにいますね」と奥さん。「ご主人の部屋はいりますかって設計時に聞かれたましたが、僕はつねにリビングにいるので部屋はいらないですっていうくらい、広いリビングにはこだわりましたね。家が出来上がったあとに僕の部屋もほしかったかなあってことになりましたけど(笑)」

この家では、家の中でさらにオンオフが切り替えられる。「ベッドルームの床が、リビングの白タイルと違ってローズウッドで暗い感じなんですね。あと日中も光が直接は入らない。なので寝るときにはリビングよりさらに落ち着くわけですね。リビングにいると素晴らしい景色は見えるし明るいんですけど、下の部屋は寝るためだけの落ち着いた感じの空間。戸を閉めると完全に閉ざされるのでとても静かで、家のなかでのオンオフというのができるんです」とご主人。


奥さんが絵付けの作業をするアトリエ。庭に面した壁は、ズントーのバルスのスの壁面からインスパイアされた。45mm という短いピッチで杉板の型枠が組まれたため、通常の打ち放しよりも繊細な印象。

「お風呂はひとつだけこだわって、レインシャワーを付けました。あとはホテルみたいな感じということでおまかせでした」。

玄関は欧米風に段差を付けないつくりにした。

玄関ホールの壁に草間彌生のカボチャのリトグラフ。その奥にある戸を開けると、ベッドルームとバスのスペースがある。


“広島風お好み焼”にこだわる

外資系の企業に勤めるご主人は週末に海外からのゲストを招くことがある。そこでこだわったのが、お好み焼をふるまえるテーブルだ。

「広島に転勤になったときは、好きで週に6食とか7食とかお好み焼を食べていました。それで、家を建てるんだったらお好み焼のできるテーブルをとにかくつくりたいと。それが、建築とはまったく別のところで設計時の大きなリクエストのひとつとしてありましたね。ズントー+安藤忠雄+お好み焼というすごい組み合わせでお願いしたわけです(笑)」 


2階は1階から海の方向へ大きく張り出している。杉板模様の付いたRCの壁が、駐車スペースから玄関まで続く。

Le 49
設計 黒崎敏/APOLLO
所在地 神奈川県鎌倉市
構造 鉄骨造+一部RC造
規模 地上2階
延床面積 174.3 m2