自分サイズの暮らしを探す1000坪の広大な敷地に建つ9坪の小さな家

自分サイズの暮らしを探す1000坪の広大な敷地に建つ
9坪の小さな家

3間×3間。建坪9坪の小さな家が、建築家の町田泰彦さんのお宅だ。が、その敷地面積はなんと1000坪。実はその1000坪の土地の中には、町田さんが初めて設計した、ご両親のための別荘も建っている。

「自分の手で初めて設計したのがその別荘でした。この家とはまったく違う、大きなモダン建築です。しばらくそこに住んでいたのですが、リタイアした親が越してくる計画があったので、自分らしい身の丈にあった家を、自分の手で建てたくなったんです」

ここ益子町在住の若手大工と一緒に町田さん自ら金槌をふるい、約4ヶ月間の工期で家を完成させた。


古道具屋で手に入れたガラス窓から、柔らかな光がさしこむ。家のほとんどに杉材を使用。窓の2本の柱は、玄関の框や床の間に使われる「槐(えんじゅ)」を使っている。

古道具屋で手に入れたガラス窓から、柔らかな光がさしこむ。家のほとんどに杉材を使用。窓の2本の柱は、玄関の框や床の間に使われる「槐(えんじゅ)」を使っている。

バルコニーの幅は狭い。「人が立てるだけの幅に収めました」。子どもが足をかけて登ることができないように、上の柵の板は手前に打ち付けてある。

バルコニーの幅は狭い。「人が立てるだけの幅に収めました」。子どもが足をかけて登ることができないように、柵の一番上の板を内側に打ち付けてある。

仕事の合間に、益子の焼物でゆうこさんと静かなお茶の時間を楽しむ。

仕事の合間に、益子の焼物でゆうこさんと静かなお茶の時間を楽しむ。

家を建てるために切った杉を、製材所で加工してもらい、外壁に使用。

家を建てるために切った杉を、製材所で加工してもらい、外壁に使用。

麻紐で吊るした物干し竿の竹が、この家のチャームポイントに。

麻紐で吊るした物干し竿の竹が、この家のチャームポイントに。

後から網戸や雨戸を追加するできるよう、あらかじめ溝を切ってある。

後から網戸や雨戸を追加できるよう、あらかじめ溝を切ってある。

華奢な脚で、地面から浮いたように建っている。大きめのツリーハウスのような風情。

華奢な脚で、地面から浮いたように建つ高床式住居。大きめのツリーハウスのような風情。


杉林を切り開くことから自分で始める。

「自分で木を切り、重機で整地をするところから始めました。クライアントのための家なら基礎はしっかり作りますが、この家は敢えて簡単な基礎にしました」

4隅は30センチほど掘り下げて柱を立てているけれど、他の部分は、わずか10センチほどしか基礎が地面に埋まっていない。

「2010年の冬に完成したのですが、約1年後の3月に東日本大震災がありました。このあたりの震度は6弱。地震の時は家にいたのですが、すぐに外に出て、『すぐにこの家は倒れるな、まだ一年しか住んでないのにもったいないな』と思いながら呆然と揺れる家を眺めていました。けれど、大丈夫だったんです。揺られたことで、かえってドアの建てつけがよくなったほどでした(笑)」


友人の鉄の作家にオーダーしたハシゴを使い、ロフトに登る

友人の鉄の作家にオーダーしたハシゴを使い、ロフトに登る。

6歳のとわちゃん、3歳のさわちゃん。上手にハシゴを登り降りする。

6歳のとわちゃん、3歳のさわちゃん。上手にハシゴを登り降りする。

益子の照明作家、佐藤孔怡さんの作品。

益子の照明作家、佐藤孔怡さんの作品。

古道具屋で見つけた箪笥の上に、自作の棚を乗せている。ここに家族4人分の服が収められている。

古道具屋で見つけた箪笥の上に、自作の棚を乗せている。この中に家族4人分の服が収められている。

鍵や認印などを入れておくのに便利な玄関横の収納BOX は、壁をくりぬいてハメこんである。

鍵や認印などを入れておくのに便利な玄関横の収納BOX は、壁をくりぬいてハメこんである。

洗面台は斜めにカットした天板で、スペースを有効に利用。

洗面台は斜めにカットした天板で、スペースを有効に利用。

陶器はもちろん、コーヒーフィルターホルダー、フォークやヘラ、カッティングボードなど、益子のアーティストの作品が生活の中に自然に溶け込んでいる。

陶器はもちろん、コーヒーフィルターホルダー、フォークやヘラ、カッティングボードなど、益子のアーティストの作品が生活の中に自然に溶け込んでいる。


“家”を問い直す。

狭い土地にギリギリ立てた都心の狭小住宅とは違い、町田さんの家は、“住まうこと”を見つめ直した結果の9坪の家。そこには様々な工夫が凝らされている。

「寝室として使っているロフトへは、ハシゴで登ります。子どもが登れるか心配しましたが、取り越し苦労でした。子どもの能力はあなどれませんね(笑)とても上手にするすると登っていきます」

2010年の完成から3年目を迎えた今、居住スペースを少し広げたいと考えているそう。

「今現在、風呂は親の別荘に入りに行っているので、こっちの家に風呂を作りたいと思っています。さらにはカマドのあるキッチンも作りたいですね。そして今のキッチンの場所をリビングにして、念願のソファを置きたいです」

気持ちの良い素材を吟味し、必要最低限のスペースで暮らす。“家ってなんだろう”を常に考える、建築家らしい住まい方がここにはある。