Architecture
鎌倉山に暮らす“非日常的”な空間で
オフの時間を満喫する
ヨーロッパでは仕事で行った先の近くに見るべきものがあれば出かけて行った。そうして25カ国くらい建築を見て回ったという。
モダンなコンクリートの家に憧れつつ、冷たい印象で人を寄せ付けないような感じにはしたくなかったし、ヨーロッパ的になってしまうのもよくないので日本的な何かを盛り込みたい、とも伝えたという。「その日本的な何かがよく分からなかったんですけど、黒崎さんからの回答は、たとえばこの木の天井とかコンクリートの壁の杉板模様とか水平窓の横長のプロポーションとか、そういったものでしたね」。
“非日常性”を求めて
あとご主人がこだわったのは“非日常性”。デザインホテルが好きで、家でもホテルみたいな、日常の生活とは違う感じがほしかったのと、平日と週末のオンオフの違いをはっきりとつけたかった。
「以前住んでいたのが芝浦の高層マンションで、それはそれで便利だったんですが、毎日、朝7時くらいに家を出て帰宅が11時とか12時。それで土日は疲れて何もできない。それを解消したいというのがあって、最初ここは週末の別荘で金曜日の夜出て土日を過ごすというスタイルで考えていました。東京から離れて非日常的な時間を過ごすというのが大きかったんですが、だんだん建築への要求が高くなって、じゃあこちらに住もうということになったんです」
「主人は休みの日はつねにリビングにいますね」と奥さん。「ご主人の部屋はいりますかって設計時に聞かれたましたが、僕はつねにリビングにいるので部屋はいらないですっていうくらい、広いリビングにはこだわりましたね。家が出来上がったあとに僕の部屋もほしかったかなあってことになりましたけど(笑)」
この家では、家の中でさらにオンオフが切り替えられる。「ベッドルームの床が、リビングの白タイルと違ってローズウッドで暗い感じなんですね。あと日中も光が直接は入らない。なので寝るときにはリビングよりさらに落ち着くわけですね。リビングにいると素晴らしい景色は見えるし明るいんですけど、下の部屋は寝るためだけの落ち着いた感じの空間。戸を閉めると完全に閉ざされるのでとても静かで、家のなかでのオンオフというのができるんです」とご主人。
“広島風お好み焼”にこだわる
外資系の企業に勤めるご主人は週末に海外からのゲストを招くことがある。そこでこだわったのが、お好み焼をふるまえるテーブルだ。
「広島に転勤になったときは、好きで週に6食とか7食とかお好み焼を食べていました。それで、家を建てるんだったらお好み焼のできるテーブルをとにかくつくりたいと。それが、建築とはまったく別のところで設計時の大きなリクエストのひとつとしてありましたね。ズントー+安藤忠雄+お好み焼というすごい組み合わせでお願いしたわけです(笑)」
設計 黒崎敏/APOLLO
所在地 神奈川県鎌倉市
構造 鉄骨造+一部RC造
規模 地上2階
延床面積 174.3m2