Architecture
建築家と協働で生まれた快適空間特徴的な空間に
こだわりを詰め込んで
モノトーンのクールな印象のインテリア
「家に対するこだわりが大きかった」という小山さん夫妻。ともに都内の建材メーカーに勤め、大学では、小山さんはプロダクト系、奥さんは建築系の学科で学んだという。
「自分たちの空間」をつくり出したいという思いは人一倍強くなるが、そのために建築家にしたリクエストのひとつが白を基調としたインテリアと床のテクスチュアだった。
「木などを使ったナチュラルな空間というより、もうちょっとクールなイメージにして、他の家との違いを出したいと思って」(小山さん)
「あと、外壁は黒にしたいというのも明確にお伝えしましたね」と話すのは奥さん。「街の中にある色として真っ白というのは少し違和感があったので、街に融けこむような色合いで、かつ、もう少しシンボライズしたいというのもあって黒を選んだ」と小山さんは言う。
窓にこだわる
仕事で住宅建材のデザインも手がける小山さんは、当然のこと、窓使いにも強くこだわった。採光や、外観、プランとの兼ね合いからだけでなく、通風までも考慮して建築家と話を詰めていったという。
たとえば、2階のリビングの窓は閉まっていると気づかないが、2つ並んだ窓はその真ん中に向けて開くように、左右で開く方向が逆勝手の製品が採用された。これは左と右のどちらから風が吹いてきても内部に風が入るようにとの、プロならではの細かい配慮から生まれたアイデアだった。
特徴的な外観
三角屋根の家を前後にヴォリュームをスライドさせてつくったという特徴的な外観は、建築家の木下さんから出されたアイデアだった。「三角屋根は家の原型でもあり憧れもあったんですが、単なる三角屋根ではなく、ずらすことでこれまでなかったような形を提案していただいて、2人ともすぐに気に入りました」(小山さん)
このスライドさせるアイデアによって、内外にいろいろな空間/居場所がつくられているが、これは小山夫妻からのリクエストを建築家が読み替えたところから生まれたものだという。「スキップフロアとか、激しい空間構成もウェルカムですという、設計者からするとありがたいリクエストをいただいたんですが、現実的には高さ方向に余裕がなくスキップフロアにしようにもなかなか難しかった。一方で平面的にはゆとりがあったので、断面方向での変化を平面の方へと読み替えてみたんです」(木下さん)
小物でさらに快適な空間に
この読み替え案も夫妻はすっと受け入れたが、木下さんはその理由のひとつとしてこんなことを指摘した。「お2人は小物のセンスが良くて、前に住まわれていたマンションでもうまく家具などを使って細かなコーナーがたくさんできているような感じがあった。われわれが提案したプランを受け入れてもらえたのも、自分たちでそれぞれの場所を小物とかを配置しながら、さらに気持ちのいい空間にできる自信があったからではないか」
そう言われて空間を見渡すと、各部屋にはセンスの良い小物たちがうまく配置され、それぞれの空間を特徴づけている。中でも注目したのは、ダイニングの壁に取り付けられた時計だ。
「数字の11、12は私が学生時代にステンドグラス教室に通っていたときにモビール用につくったパーツで、9は手芸でブレスレットにしていたものです。3は6と同じ型文字なんですが、3は手芸用のビーズを貼っています。そして、1と2と10は主人が雑貨屋さんで買って来たものなんです」(奥さん)
この時計のアイデアは、奥さんが以前からずっと実現したかったものという。このようなお話をうかがっていたら、この時計が、木下さんが指摘したお二人のセンスの良さを表すと同時に、家づくりのこだわりを寡黙にだがしっかりと物語る、そんなシンボルのように見えてきた。
設計 KINO architects
所在地 東京都
構造 木造
規模 地上2階
延床面積 83m2