Architecture
IoTと伝統技術の融合未来に向けて始動する
これからの心地よい住まい
ファサードに緑のスクリーン
南側に広い抜けのある敷地。自宅兼事務所を建てる場所を探していた建築家・早川友和さんは、初めてここを訪れて即決した。
「17.5坪の狭小敷地です。まわりも全く普通の住宅街。ここで自然と共存しながら未来を意識した住宅を、今までにない方法でつくりたいと思いました」。
常緑のグリーンが2階3階のバルコニーを覆い尽くすファサードは、まるで緑のスクリーン。
「南向きなので植物もよく育ちます。2、3階の住居部分は吹き抜けなのですが、窓際にはあえてフロア毎に庇を深くつけて、その天井を鏡面仕上げにしています」。
バルコニーにボックス型に配置されたプランターが庇のミラーに反射して、住居の中まで緑に包まれる雰囲気に。
「小さい住まいに慎ましやかにではなく、小さくても大らかに住まうことを大切にしたいと思います」。
未来的デザインに日本らしさを
モルタルの床に、アイアンを亜鉛めっきした階段、構造材をむき出しにした天井…。LDKは近未来的な雰囲気を漂わせる。
「建物をそのまま仕上げに見せられるような仕上がりを目指しました。狭小スペースをどう使うかも考えて、窓際には造り付けのソファーをベンチのように並べました。家具をきっちりと決めれば、無駄がないと思うんです」。
1階の事務所、バスルームへと下る階段の手前にはキッチンを配置。
「キッチン台とアイランドの間が階段につながる廊下にもなっています。その辺のアイデアは日本っぽいと言われるんですけどね」。
海外の友人が訪れることも多いという早川邸。キッチンはじめほとんどの家具は早川さんがデザインして発注したものだが、すべて日本製にこだわった。
「メイドインジャパンの技術、日本のものづくりを大事にしたいという思いがあるんです。例えばソファーの座り心地とか、細やかな心配りがモダンだけど日本っぽいねと、海外の友人に言ってもらえるのがうれしいですね」。
IoT化で生活を快適に
3階には、2面の大きな開口部のある明るいベッドルーム、倉庫兼趣味の部屋などのプライベート空間を設けた。倉庫兼趣味の部屋へは、1フロア3m程ある吹き抜けの窓際に設けられた渡り廊下を通って行く。ここで音楽にふける時間を過ごすそうだ。
「昔はデスメタルバンドを組んでいて(笑)、CDも2000枚くらい持っていたんです。本もたくさんありましたがサブスクリクションを利用したり、データ化できるものはデータ化したりして、ミニマルにしました。物質にこだわらず、その使い方だけを学んで生活に落としていきたいと思います」。
この家を語る上でもうひとつ外せないのが、住宅設備のIoT化。音声デバイス、ハブ、端末を組み合わせたシステムが日常生活をサポートする。例えば、「OK、グーグル、レベル1!」と言えば、蛍光色の照明が、「レベル2!」で電球色の電球が自動で点灯。ブラインドも音声や太陽に合わせて自動で開閉し、冬の寒い日の朝はガスヒーターがオートマチックに起動する。
「IoTはこれからの住宅の鍵になると思います。いずれ建材の一部のように浸透するのではないでしょうか。新しい技術をここで検証してお客様に提案したいと思っています」。
屋上ガーデニングを楽しむ
屋上で育てているグリーンも、タイマーを使って自動的に水やりができるシステムを構築。旅行など長期の外出も安心できる。まわりの住宅街が見渡せる屋上は、都会のオアシスのようなスペースだ。
「朝は夏でも涼しくて、ここでコーヒーを淹れて飲んだり、ヨガをやったりして過ごします。気持ちがいいですよ」。
育てているのは観賞用植物のほかレモン、シークァーサーなど柑橘類に、ケール、ビーツなどの健康野菜。これらをミキサーにかけてスムージーにするのだそうだ。
「ごみごみした住宅街の中でも、自給自足のような暮らしができたらなと思っています。新しい技術を使って便利にしつつ、アナログのよいところも取り入れていきたい。リビングの庇もそうですが、日本の古来の生活を新しく解釈して暮らしていきたいですね」。