Architecture

公園の前の狭小住宅内と外を緩やかにつなぐ
インナーバルコニーのある家

目の前の借景を活かして

都心の人気の住宅街。緑豊かな公園の目の前という立地に、夫の父親の代から一戸建てを構えていた渡辺さんご家族。
「前の家に10年程住んで、建て替えることを決めました。父から譲り受けるにあたっては、“明るい家にする”ということが条件でした」と、夫の耕治さん。とはいえ、単に明るいだけではなく、陰影がしっかり表現された落ち着きのある家が、夫婦揃っての希望だった。
「ふたりともアメリカに暮らしたことがあり、映画の『グリーンカード』に出てくるような家がいいね、と言っていたんです」。
特に映画に出てくるサンルームに憧れたそう。妻のあきとさんは、
「キッチンに立つと、広々としたリビングの向こうにフラットにサンルームがつながる、そんな空間を希望しました」。
おふたりの考えを具現化したのはssideの杉山純一さん。公園とつながるかのような広々としたLDKを2階に、コンパクトな寝室を1階に。斜線制限のある17坪の5角形の角地を最大限に活用して、プランニングを行った。


天井高も確保した開放感のあるLDK。キッチンから全体が見渡せる。
天井高も確保した開放感のあるLDK。キッチンから全体が見渡せる。
外壁にはフレキシブルボードを使用。ワイルドで荒々しい雰囲気を出した。
外壁にはフレキシブルボードを使用。ワイルドで荒々しい雰囲気を出した。


バルコニーを部屋の一部に

「プランの打ち合わせのほとんどは、サンルームのデザインに費やされました」。
色々なやりとりの中で、憧れのサンルームは“インナーバルコニー”というカタチになった。
「サンルームを部屋っぽく使いたい、というご希望で、それなら家の中にバルコニーがあるようにしてしまおうと。共に相談を重ねる中で生まれたアイデアです」と杉山さん。
5角形の先端を舟の舳先に見立て、インナーバルコニーの中央に。そこを軸に左右対称にLDKにつながっていく。バルコニーは室内側にペアガラスの引き戸、道路側に型板ガラスの大きな開口を設け、天候によって自由に開け閉めできるようにした。
「夏はほとんど開けっ放しにしていますね。バルコニーには防水をかけているのでビニールプールを出したり、秋にはお月見をしたり。ここがあるだけで生活が全く変わりました」。
東南の角地だが、道路を挟んで隣家が建つ南側にはあえて開口を設けなかった。そのため、トップライトから降りる光や、東の公園側から西側の開口に抜ける光が強調され、陰影のある空間となった。


無垢のオークの床が心地いいリビングダイニング。照明はあまりつけず、自然光で暮らすのが好きだとか。
無垢のオークの床が心地いいリビングダイニング。照明はあまりつけず、自然光で暮らすのが好きだとか。
インナーバルコニーにはレッドシダーのデッキを。「緑は公園に委託し、サンルーム的には使っていないんです(笑)」。
インナーバルコニーにはレッドシダーのデッキを。「緑は公園に委託し、サンルーム的には使っていないんです(笑)」。
窓を閉めれば、バルコニーがリビングの一部に。アンティークな型板ガラスが、レトロな雰囲気も添える。
窓を閉めれば、バルコニーがリビングの一部に。アンティークな型板ガラスが、レトロな雰囲気も添える。
公園の緑をフレームのように切り取る。リビング側の引き戸を閉めれば寒暖の調整も。
公園の緑をフレームのように切り取る。リビング側の引き戸を閉めれば寒暖の調整も。


家族の気配を感じるLDK

リビングダイニングを見渡すことができるアイランドキッチンは、ステンレスでオーダー。
「私たちの身長に合わせて造ってもらったので、使いやすいですね。家具はあまり置きたくなかったので、収納の棚も造作してもらいました。作業台としても便利なので、建て替えてからお料理を作ることも多くなりました」。
色ムラのあるダイニングテーブルは、ssideがこの家のイメージに合わせて見つけてきたものだそう。
「ピカピカの新品ではなく、荒々しさ、素材感がこの家の特徴だと思っています。外観もダーク色で“固まり”を感じさせるので、ロフトへの階段はあえて強い色を選びました」(杉山さん)。
リビング中央の存在感のある階段を上がると、耕治さんの趣味のレコードなどを収めたロフトがある。仕切りのないひとつの空間が、家族それぞれの大事な時間をつないでいる。


中央に階段を。キッチンからはリビングで遊ぶ長女はるねちゃんを見守ることもできる。
中央に階段を。キッチンからはリビングで遊ぶ長女はるねちゃんを見守ることもできる。
キッチンは掃除のしやすいステンレスで造作。高さを揃えて収納棚も造り付けに。奥にはパントリーを設けた。
キッチンは掃除のしやすいステンレスで造作。高さを揃えて収納棚も造り付けに。奥にはパントリーを設けた。
キッチンからつながった収納棚のダイニング側には、アルバムなどを収めている。
キッチンからつながった収納棚のダイニング側には、アルバムなどを収めている。
木と鉄骨の脚の組み合わせが、武骨な雰囲気のダイニングテーブル。
木と鉄骨の脚の組み合わせが、武骨な雰囲気のダイニングテーブル。


ロフトへ上がる階段は木製。アイアンの手すりが荒々しさを添える。
ロフトへ上がる階段は木製。アイアンの手すりが荒々しさを添える。
たくさんのレコードを所蔵するロフトは、秘密基地の雰囲気。
たくさんのレコードを所蔵するロフトは、秘密基地の雰囲気。


機能性を追求した1階

広々とした2階と対照的に、1階はベッドルーム、ウォークインクローゼット、バスルームと、必要なスペースを機能的にまとめた。
「前の家の住みにくさを検証し、動線を考えました。仕事で夜遅く帰った日は、2階にあがらず1階だけで済んでしまうこともありますよ」。
アメリカ生活の影響がいちばん反映されたというバスルームは、お風呂、洗面、トイレを一体に。洗濯からアイロンかけまで同じスペースでできるなど、ランドリールームとしても活躍する。冬は冷え込みがちな1階だが、蓄熱暖房機を玄関に置いたことで、1階はもちろん家全体が暖かいのだそう。
「寒いのが嫌いで、アメリカのセントラルヒーティングに憧れていたんです(笑)。蓄熱暖房機はssideさんの提案なのですが、おかげで冬も半袖で過ごすことができ、1年中快適に暮らせています。設計前はこんな狭い土地で何ができるの? と思いましたが、時間をかけて考えただけのことはあったなと思っていますね」。


ベッドルームと子ども部屋の間は、いずれカーテンで仕切れるようレールを設置。リフォームで壁をつくることもできるレイアウトに。
ベッドルームと子ども部屋の間は、いずれカーテンで仕切れるようレールを設置。リフォームで壁をつくることもできるレイアウトに。
ベッドルームは横すべり出し窓に。明るくなりすぎずゆっくり眠れる。
ベッドルームは横すべり出し窓に。明るくなりすぎずゆっくり眠れる。
夜中に蓄熱する蓄熱暖房機を、玄関に設置。これ1台で冬も家中暖かい。
夜中に蓄熱する蓄熱暖房機を、玄関に設置。これ1台で冬も家中暖かい。


ランドリールームとしても有効な、広々したバスルーム。
ランドリールームとしても有効な、広々したバスルーム。
洗濯ものはアイロンをかけて隣のWICへ、と動線がよい。
洗濯ものはアイロンをかけて隣のWICへ、と動線がよい。


3畳の広さのあるウォークインクローゼット。家族3人の衣類をここに収納。
3畳の広さのあるウォークインクローゼット。家族3人の衣類をここに収納。
インナーバルコニーは家族の団欒の場に。毎日、緑に癒される。
インナーバルコニーは家族の団欒の場に。毎日、緑に癒される。


渡辺邸
設計 sside建築設計事務所
   狭小住宅プロジェクトCOHACO
所在地 東京都世田谷区
構造 木造
規模 地上2階+ロフト
延床面積 78.78m2