Architecture
開放感とプライバシーを両立すみずみまで陽光が行き渡る
光庭が導く心地よい空間
![開放感とプライバシーを両立 すみずみまで陽光が行き渡る 光庭が導く心地よい空間 開放感とプライバシーを両立 すみずみまで陽光が行き渡る 光庭が導く心地よい空間](https://img.100life.jp/2020/04/13135638/200420mat-1080x480.jpg)
ピロティで駐車がスムーズに
松村さんご夫妻と長男(14歳)、長女(9歳)の4人が暮らすのは、東京・世田谷の閑静な住宅街。複数駅・路線が利用できるアクセス良好な地である。ここにはご主人が学生時代まで過ごした実家があり、ご両親が移り住んだ後、8年ほど生活。2年半前に、自分たちの家族構成やライフスタイルに合わせて建て替えた。
設計を担当したのは、向山建築設計事務所の向山博さん。奥さまが自宅の町名で検索した際、向山さんが手がけた同じ町名の作品に出会ったという。「奇をてらわず、シンプルで住みやすそうなところに魅かれました」と話す。
松村邸の敷地は、四方を住宅に囲まれた私道の奥に位置し、接道はわずか2m。
「間口が狭いため、以前の家では、S字カーブを描くようにして車を入れていました。おかげでずいぶん運転技術が上がりましたよ(笑)。建て替える際の最初の希望は、簡単に駐車できるようにしてほしいということでした」(ご主人)
この問題を解決するために向山さんが提案したのは、玄関前をピロティにすること。南側の庭まで連続した広々としたスペースを取り、車をまっすぐ入れてそのまま駐車できるようにした。
「駐車が楽になったので、以前乗っていた四駆車に買い替えたいと思っています」とご主人。自転車を利用している奥さまにとっても、「雨ざらしにならずによい」と好評である。
![周囲を住宅に囲まれた私道の奥に建つ。控えめな開口の外観が印象的。玄関前をピロティにすることで、駐車が楽に。荷物の出し入れも雨に濡れず便利。](https://img.100life.jp/2020/04/13135435/200420mat-001-1024x683.jpg)
![2階の廊下の足元に設けた小窓から、長女が手を振ってくれた。開口が少なめのファサードの中にも遊び心が。](https://img.100life.jp/2020/04/13135441/200420mat-002-683x1024.jpg)
![階段下は大容量の靴を収納できるスペースを確保。アパレル関係に勤務するご主人の靴が多いそう。](https://img.100life.jp/2020/04/13135448/200420mat-003-683x1024.jpg)
![階段はフローリングと同じ無垢材を使用。玄関を入り、階段の反対側には子ども部屋が2つ並ぶ。](https://img.100life.jp/2020/04/13135454/200420mat-004-1024x683.jpg)
![子ども部屋の壁には有孔ボートが貼られ、各自が自由に使用。長女はショップのディスプレイ風にオシャレに整理整頓。](https://img.100life.jp/2020/04/13135501/200420mat-005-1024x683.jpg)
![主寝室。部屋の前の廊下から続く濃紺の絨毯が落ち着いた雰囲気。](https://img.100life.jp/2020/04/13135508/200420mat-006-1024x683.jpg)
光を取り入れながらプライバシーを確保
松村邸は1階に個室をまとめ、2階はダイニングキッチンを中心とした共有スペースとなっている。
「もともとここに住んでいたので、日差しの具合や近隣の生活の様子を把握していました。以前の家は日中でも照明をつけなくてはいけないほど暗かったため、LDKは2階にすることが必須でした」(奥さま)
「周囲の建物が近いため、外周の開口を極力減らし、2階中央に“光庭”を設けることを考えました」とは向山さん。
リビング、ダイニングキッチン、ワークスペースを取り囲むように配置することで、各部屋のすみずみまで自然光が届き、プライバシーを守りつつも明るく開放的な空間を実現した。
同時に、「テレビを見ながら食事したり、勉強したりする、だらしない状況を避けたい」という奥さまの考えにも対応。テレビを置いたリビングから、ダイニングやワークスペースを離し、光庭によってスペースをゆるやかに区切った。ガラスにより視線が抜けるため、圧迫感はなく、実際以上に広がりを感じられる。また、光庭越しになんとなく家族の様子を感じ取ることもでき、広いワンルームとは異なった、この程よい距離感が心地良さを生んでいる。
![リビングから光庭を通して、右奥のダイニング、正面のワークスペースが見える。光庭に面した窓はFIX窓を採用し、採光と眺めを重視した。](https://img.100life.jp/2020/04/13135514/200420mat-007-1024x683.jpg)
![中央の光庭を囲むようにワークスペース(奥)、ダイニング、左側のリビングへ続く。](https://img.100life.jp/2020/04/13135521/200420mat-008-1024x683.jpg)
![光庭の床は屋内よりも20cm高くし、ステージのような造りに。光庭前の廊下を通って、奥のリビングへ。](https://img.100life.jp/2020/04/13135527/200420mat-009-683x1024.jpg)
![三角形のFIX窓により、光庭から階段へたっぷりの日差しが入り、1階まで光を届けている。](https://img.100life.jp/2020/04/13135535/200420mat-010-683x1024.jpg)
![ワークスペースの背面には水回りと収納を集め、家事動線を考えた造りに。大型のウォーキングクローゼットも設置し、上部には約7畳のロフトも。](https://img.100life.jp/2020/04/13135540/200420mat-011-683x1024.jpg)
![ワークスペースを奥まった位置に配したことで、仕事や勉強への集中力もアップ。空を眺めて気分転換も。](https://img.100life.jp/2020/04/13135547/200420mat-013-683x1024.jpg)
2階を見渡せる対面キッチン
2階全体の様子が見渡せる位置に配したキッチンは、オールステンレスの対面式。背面の造り付け棚はネイビーをチョイスした。
「以前の家はキッチンが独立していて、扉を介してダイニングだったので、その行き来が不便で、キッチンとダイニングの距離を短くしたかったんです(笑)。また、白っぽいキッチンも避けたいと思いました」(奥さん)
無機質なステンレスの光沢を木製のヴィンテージテーブルやさりげなく飾られた植物が引き立てる。スタイリッシュでありながらあたたかみのあるカフェのような雰囲気を放っている。
![北沢産業でフルオーダーしたオールステンレスのキッチン。左側のベンチは家事の合間に腰掛けたり、物を置いたりするのにも便利とのこと。](https://img.100life.jp/2020/04/13135554/200420mat-014-1024x683.jpg)
![ダイニングテーブルは北欧のヴィンテージ。エクステンション付きで来客人数によって変更できる。オランダのスクールチェアをコーディネート。](https://img.100life.jp/2020/04/16211449/200420mat-015-re.jpg)
![「早く炊けて、ふっくら美味しいですよ」と、ご飯はガスで炊く奥さま。あらかじめガス栓を設置した。](https://img.100life.jp/2020/04/13135607/200420mat-016-683x1024.jpg)
![鍋やフライパンもすっぽり入る、『AEG』の大型食洗機。「家事の時短には絶対的なアイテムですね。1回まわすだけで全て洗えますよ」(奥さま)。働く主婦の味方である。](https://img.100life.jp/2020/04/16211718/5D4_0491-683x1024.jpg)
光庭からつながる贅沢な屋上
ご主人の念願だった“屋上”は、光庭に設置された階段でつながり、ダイニングキッチンの真上に位置する。スペースもダイニングキッチンと同じ13畳という贅沢な広さで、天気の良い日は富士山や東京タワー、東京スカイツリーをひとり占めできる。
夏場は大きなプールを置き、日焼けを楽しんでいるというご主人。「ぼくの部屋です(笑)」というほど、屋上で過ごす時間が長いと話す。
「夏場でも水だと冷たいのでは、という話になり、工事中に突然、お湯が出る仕様に変更してもらいました。大正解でしたね」と嬉しそうに話すご主人。その居心地の良さがますます屋上での滞在時間を延ばしているようだ。
夏休みには、奥さまの中学時代からの友人たちが子ども連れで泊まりに来るのが恒例行事に。ご主人が子どもたちのプールの監視員(?)と化し、奥さまたちは安心して光庭やキッチンまわりで話に花を咲かせているという。
光庭を介して程よくつながり、さまざまな居場所がある松村邸。外観からは想像がつかない、閉じつつも開放感のある空間で、家族それぞれの時間を楽しんでいる。
![人工芝を敷いた屋上。サッカーボールを蹴ったり、バーベキューをしたり。夏場は大きなプールを設置する。](https://img.100life.jp/2020/04/13135619/200420mat-018-1024x683.jpg)
![夏場に登場するビッグサイズのプール。奥さまの友人のお子さんたちがみんなで入っても余裕の大きさ。(写真/ご家族提供)](https://img.100life.jp/2020/04/13140308/200420mat-019-1.jpg)
![光庭からダイニングを見る。階段を上がれば屋上に。](https://img.100life.jp/2020/04/13135627/200420mat-020-683x1024.jpg)
![中学2年の長男はすでに180cmを超え、学年で1番の長身に。決して小柄ではないご主人よりも大きい。](https://img.100life.jp/2020/04/13135633/200420mat-021-683x1024.jpg)
松村邸
設計 向山建築設計事務所
所在地 東京都世田谷区
構造 木造
規模 地上2階
延床面積 127.51㎡