Architecture
リビングを中心に回遊集う人がつながる
オープンな空間
楽しさを共有できる家に
木立の中にふいに現われるモダン建築。家主Yさんが、結婚を機に実家の南側の敷地に建てたその家は、林の中で存在感を放ちつつ、静かに佇む。
「近くに住んでいる大鷹を保護する条例があって、鷹がびっくりするような派手な外観は、許可されないんですよね。建築家の人と相談して、最終的に今のような形になりました」
母屋の日照を確保するため、構造は平屋に近い形に。仕切りのないリビング、ダイニング、キッチンが、バスルームやベッドルームとスキップフロアでつながっているという、2階建てでありながらもワンルームのような設計だ。
「もともと建築やデザインが好きで、色々な雑誌を見て研究しました。リビングをメインにしてみんなが集える家、仕事から帰ってきて楽しくなれる家が理想でしたね」
奥さんは、取材時はちょうど臨月。このお正月は新しい家族とともに迎えることになる。そのため子供のことを考えて、床も木材を選んだ。木目を活かした暖かな雰囲気と、オープンな空間で、新しい家族との生活がスタートする。
リビングを中心に、人と空気が回遊
Yさんのリクエストを受けて設計を担当した横関さんは、
「頭をおさえる条件があったので、それを逆に利用して横に広がるような設計にしました。玄関からリビングを通り、2階の子供部屋に登って、またキッチンに下りてくる、全体を渦巻き状に回る“回遊する家”がテーマです」
リビングにいながら家全体を見渡せ、どこにいても家族の雰囲気を感じることができる。オープンな空間はパーティーにも最適で、よく友人を招くのだという。
「居場所がたくさんある家なので、来る人も寛げるみたいですね。階段に座ったり、吹き抜けのところのテーブルから下を眺めていたり、みんなそれぞれ好きなように過ごしています」
キッチンに立つ奥さんは、
「ちょうど窓と向かい合った位置にキッチンがあり、お料理を作りながら、外の景色を眺めることができるのがいいですね。私がいちばん好きな場所は、窓の前のソファー。ここから木立を眺めるのがお気に入りです。このソファーは、人が来たときなど、争奪戦になるんです」
リビングは、森より少し高い位置にくるように設計されていて、少し上から外を見下ろすことで、視界が広がる。大きな窓は、全て壁に内蔵することもでき、開け放てば開放感と、木々の新鮮な空気を感じることができる。リビングに面した林の中には、Yさんが子供の頃よく登った木があり、この下でバーベキューパーティーも開かれるのだそうだ。
目の届く距離を大切に
2階の子供部屋は、現在ワンルームだが、いずれは中央に仕切りを設けて、2部屋に分けられるようシンメトリーに設計した。将来、家族が増えるのを考えてのことだ。
「最小限ベッドが置けるくらいのスペースがあればいいというのがコンセプトなんです。子供は、目の届くところで勉強してほしいと思っています。リビングや、吹き抜けのスペースに作り付けで備えた机が活用されるでしょうね」
将来の子供部屋には、今はYさんの趣味の道具が。愛用のマウンテンバイクや、古道具屋で見つけた軍のアンティークの椅子など、大切なものとの暮らしも、楽しんでいるようだ。これも夢だったハンモックは、1階のリビングにかけて使用していたが、奥さんの出産を前にして一旦、撤収。
「しばらくは子供が中心となりますが、子供が大きくなってきても、遊び場がたくさんある家、楽しみが広がる家だと思います」
子供との生活が、この家にまた新たな温もりを与えていく。
設計 ジャムズ
所在地 埼玉県
構造 木造
規模 地上2階
延床面積 106.39m2