DIY
家族総出でDIY手作りの温もりが伝わる
白壁の別荘風一軒家
ユニークな造りにひと目ぼれ
登山客で賑わう高尾山の近く。住宅地として開発された山の頂上に、酒向さんは築28年の一軒家を見つけた。
「この山の下で生まれて育ったんです。結婚後も実家で暮らしていたのですが、家を購入することになって探していたところここを見つけました。40~50年前の別荘のような造りが面白くて、ひと目で気に入ってしまいましたね」
天井の梁をむき出しにした三角屋根、ロフトのような2階、純和風の庭園。デザインにこだわって建てられたことが伺えるこの家を、DIYをして改築。
「主人とふたりで、時には子供たちも手伝ってくれて、2年くらいかけてリフォームしていきました」
夫とふたりで大改造
1階の、現在ダイニングのある場所はもと和室で、寝室はキッチンだったという。壁をぶち抜き、リビングダイニングにするところから始めたのだそう。
「初めてのことだったので、インターネットでDIYをしている人のブログなどを見て造っていきました。手探りで着手して、やりながら考えるという感じでしたね」
キッチンとリビングの境目など、仕切りが必要なスペースには、板と石膏ボードで壁を作成。ディスプレイのためニッチも設けて、珪藻土を塗装した。閉鎖的に感じられた階段の仕切りは取り払い、抜けのある手すりに。キッチンは目地を入れてタイルを貼り、ナチュラルなテイストに仕上げた。
「使い勝手も考えて、お皿を縦に収納できる棚を取り付けたり、動きやすいよう作業台の幅に変化をつけたり、キッチンも色々と工夫しました」
トイレは床にパイン材を敷き、洗面台にはタイルを貼った。これだけをほぼ自力で行ったというから驚く。
「電気とガスの撤去と立ち上げ、あとはユニットバスを入れてもらったくらいで、業者にはほとんど頼んでいません」
念願のアトリエもDIYで
家の中だけでなく、玄関や裏の自転車置き場、庭なども次々に着手。そして布小物作家である志保さんのアトリエも約1年半をかけて完成した。
「ブロックを積んで4隅に柱を立て木を載せて、石膏ボードを貼り、珪藻土を塗って・・・。日々少しずつ造っていきました」
庭に建つ家の離れのようなそのアトリエは、漆喰の壁にアンティーク調のドアが南欧風。このドアも、無垢の扉を買ってきてグリーンに塗装したもの。
「いつか庭にアトリエが欲しいと思っていたんです。静かなので集中できますね。子供たちが帰ってくるまで、1日中ここで過ごすことが多いです」
アトリエの中は、アンティークの家具や雑貨などで溢れている。古びた白いキャビネットには、作品のための素材の布が並ぶ。夫はアンティーク雑貨店の経営者であり、ビーズランプなどの制作にもあたる。アトリエ内にはその夫の創ったビーズランプが揺れ、どこかノスタルジックな雰囲気だ。
「ふたりともものづくりに関わる仕事なんです。主人とはイメージが一緒で、私のイメージを伝えると理解してくれるのも早いですね。だから家のDIYもスムーズに進めることができました」
家からアトリエの入り口までは、ふたりでタイルや板を敷きつめた。1枚1枚、手作業で仕上げた温もりが伝わってくる。
子供たちの創造性を活かす
中1の長女と小5の長男の部屋はロフト風の2階にあり、リビングからもその気配が感じられる。長女の部屋は、女の子らしく壁をピンクに塗装。長男の部屋は、男の子らしくガンダムのプラモデルなどがあふれている。
「私たちの影響か、子供たちも絵を描いたり、何かを作ったりすることが好きみたいですね」
図工の授業で創った作品や、父親と一緒に創ったビーズランプなど、子供たちの手作りの作品が、手作りの空間を飾る。
「この辺りは本当に自然に恵まれているので、子供たちものびのびと育っています。息子は、近所でいろいろなものを拾ってくるんです。鳥の羽とか木の実とか、大事そうに持ち帰ってくるので、小物として飾ったりしています」
長男が拾ってきたヒヤシンスの花、すずかけの実、2年前家族で訪れたパリで買ったアンティークの雑貨…。家族の思い出も大切な家のインテリアとなっている。
自然の中で暮らす贅沢
2面に大きな窓が広がるリビングからは、庭のグリーンが眺められる。庭は、まず購入当初あった大きな岩を移動させ、現在アトリエのある場所に穴を掘って埋めた。そして一部分にテラコッタを敷き、木や花などを植えて造園。
「お庭ではバーベキューもよくやりますし、気候のいい時は外で食事したりもしますね。小さい畑も造って家庭菜園を楽しんでいます。イチゴやブルーベリーもその場で摘んで食べられるくらいたくさん実がなるんですよ。自分の庭から食材が採れるのはうれしいですね」
玄関や隣の家との仕切りの、ルーバー状フェンスもDIYで。風通しのいいリビングから庭を眺めていると、自然の中に建つ別荘にいるかのような心地よさ。家族との日常の暮らしを楽しむ、贅沢な時間が白亜の一軒家に流れていく。