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クルマと暮らす 四方八方どこからでも。
家は愛車のショールーム

クルマと暮らす 四方八方どこからでも。家は愛車のショールーム

ガレージを取り囲む四角い箱

「愛車を家の中に入れたい」。それが、一戸建てを建てた理由だった。家の中でクルマを毎日眺めて過ごすという番屋亜紀彦さんの理想は、3年半前、この家の完成とともに叶えられた。

シンプルな箱型の建物の正面。大きなドアが開かれると、中央に陣取るのは、愛車スカイラインGT-R。天井まで吹き抜けになったそのガレージを取り囲むように、1階の右手にキッチン、左手にリビング、2階にはベッドルームが2部屋配置されている。食事の時も、リビングでくつろぐ時も、廊下を渡る時も、ガラス張りのそのガレージを、四方八方から眺められる。まさにクルマが主役。家というよりまるでショールームだ。

新興住宅街の中のシンプルでモダンな家。


シャープで明るいキッチンはガレージに隣接。

「18年前から乗っている古いクルマですが、もともと好きな車種で愛着があります。レース用につくられたクルマだから、乗用車にはない感覚がありますね。リビングのソファに座って低い位置から見たり、いろいろな角度から楽しんでいます。お酒を飲みながら眺めたりするのも好きですね」

設計士へのリクエストは、ガレージを家の中に作ることと、シンプルなデザインにすること。白一色のガラス張りの空間の向こうに、広々とした空地が広がり、開放的な雰囲気だ。

設計士の松崎さんは「振興住宅街の突き当たりにあり、人通りが少ないこと、西側、北側の土地が空いていることを活かしたいと思いました。四方に開口部を大きくとり、視界の開けた設計にすることを提案しました」

段差のないフラットな床、ガラス以外の仕切りのない空間のためか、ガレージと部屋の区別があまり感じられない。クルマと人が同居している感じだ。排気ガスが気になるところだが、そこは強力なダクトで換気しているので心配ない。


リビングもガレージに隣接。ゆったりとクルマを眺めるスペース。
ガレージは天窓から明るい光が入る吹き抜け構造。
無機的な雰囲気がおもしろい、グレーチングの2階廊下から。


「リビングで食事するときも、ガレージのドアを開けてダクトを回しています。部屋の中でバーベキューをしても気になりません」

仕切りだけではなく、よく見るとカーテンなども最小限だ。

「特に必要ないかなと思って、つけていないんです。夜、外からこの家を見るのが好きなんです。明かりが灯ると、暗闇に浮き出てきれいですよ」

広がる、家の楽しみ

キッチンには、基礎と一緒にコンクリートで作ったシンク&ダイニングテーブル。壁に向かって調理するのではなく、対面式にしたいという番屋さんの希望で、キッチンの中央にアイランド型に設置した。スタイリッシュなそのキッチンでは、愛車を眺めながら、料理をしたり、語り合ったり。


筋交いとしての役目も果たす階段。
この家が完成した後に、嫁いできた奥さんの由江さんは、「話には聞いていましたが、初めて来たときにはびっくりしました(笑)。でも住んでみると居心地がいいですね。料理をしながら、リビングのテレビを見たりもできるし、楽しんでいます」

2階は1階と違い、仕切りを設けたプライベートなスペース。中央に吹き抜けをはさむため、2部屋がきっちりと分けられる。グレ―チングの床、ガラス張りの廊下の壁、居室の窓から、やはりガレージが眺められ、どこにいてもクルマとの共同生活を体感できる。


「今は足としての2台目がほしいなと思っています。雨の日など、クルマをあまり出したくないので。その場合には、玄関の脇に駐車スペースを作ろうかと考えています。あとは北側の庭。今は自分で三つ葉をまいて茂らせているんですが、ウッドデッキをつけてテラスにするのもいいかな」

崖地になっており、遮るもののない北側の庭からは、スカイツリーや、花火の打ち上げも見渡せる。オープンな家の楽しみが、また増えそうだ。

番屋邸

設計 atelierA5 建築設計事務所
所在地 千葉県船橋市
構造 木造
規模 地上2階
延床面積 110m2

360°、クルマを眺められる。