ミラノサローネ 2012 - 4 - “シンプルな発見”がコンセプト木+樹脂のハイブリッドテーブル

ミラノサローネ 2012 – 4 – “シンプルな発見”がコンセプト
木+樹脂のハイブリッドテーブル

今年のミラノサローネ(4 月17 日~ 22 日)に出品し注目を引いた日本人建築家の作品をシリーズで紹介してきたが、その最終回となる今回は、スキーマ建築計画の長坂常さんに、ミラノ市内の2 カ所で行った家具展示について話をうかがった。

スパツィオ・ロッサーナ・オルランディとトルトーナ地区の施設の2カ所で家具を出品されていますが、それぞれどのような作品なのでしょうか。

「オルランディのほうは、アンティークのテーブルを使ったものです。アンティークなので天板がフラットではない。それをフラットにするために、天板の周りに型枠を組んで顔料を混ぜたエポキシ樹脂を流し込んでつくっています。そうすると、深さによって色の濃淡に違いが出る。浅いところは下地である木の表情が強く出て、深いところは樹脂の色が強く出てくる。アンフラットをフラットにすることでムラのある表情になるわけです。そういうシンプルな発見がこのテーブルの基本コンセプトですね」


スパツィオ・ロッサーナ・オルランディでの展示風景。(トップの写真とも、撮影=太田拓実)


“ピールド”と“ラフタード”

「2008年に、たまたまあったアンティークのテーブルの天板がデコボコで、使うに使えないからということでつくったのがこのコンセプトでの最初の作品です。その後、ちょっと間が空いて11年の4月にミラノではじめて発表したピールド(peeled)というシリーズではさらに展開して、木に“うづくり”という仕上げを施しています。そのうづくりによって木の表面に凸凹の差が出て木目と色合いが微妙に重なっていくというものです。


アンティークをもとにつくられたテーブル

“うづくり”を施してくつくられたテーブル。2011年ミラノサローネで、オルランディにて発表。これがきっかけで、エスタブリッシュ&サンズから出品することに。


トルトーナ地区のエスタブリッシュ&サンズから出品されたものは、このピールドのコンセプトで製作されたものです。オルランディのほうはアンティークなので、サイズは元の家具によってまちまちですが、こちらは天板の大きさが決まっていて2380×1200mm。ともに、オランダでつくられたものです。

このほか、ラフタード(raftered)というタイトルでつくっているものもあります。木材を寄せ集めて1mm、2mm、3mmと段差を付けてつくった天板に樹脂を流し込む。その段差によって色の濃淡が出て、深いところが濃くて浅いところが透明に近い感じになるというものです。日本ではCIBONEより発表していて色は7色、ヨーロッパ製作のものの色はこれから決めるところです」


エスタブリッシュ&サンズから出品されたテーブル。ピールドのコンセプトでつくられている。(撮影=太田拓実)


“見た目”評価とコンセプトでの評価

現地での評判はどうでしたか。

「日本だときれいだねっていう反応が多く、どのようにつくられているかについては関心があまり高くないように思いますが、向こうの反応は違いました。展示したオルランディという場所が、デザインが本当に好きな人たちが集まってくるところで、目の肥えた人たちが多いというのがあると思いますが、色が樹脂の深さによって変わるということを理解し、かつ、それをコンセプトにしてつくっていることも理解して評価する。どちらがいいとは言えませんが、日本だとコンセプトよりも見た目の美しさのほうを評価し、感性で判断する。建築でもそういう違いを感じますね」 

まったく違う素材を組み合わせている作品ですが、その組み合わせの妙みたいなものへの反応は?

「それはヨーロッパでも日本でもありますね。古いものと新しいものの組み合わせだけでなく、ナチュラルとケミカルの融合みたいなこともあって、ハイブリッドな感じ。私がデザインしたAesop Aoyamaというお店では、古い家屋を壊したときに出た材料を使って棚をつくったんですが、そこでは縦方向だけ古材を使っています。私の作品では、そういうハイブリッドなところに興味をもってもらうということがあるようです」