サローネ・サテライトは、キャリアをスタートして間もない若手デザイナーの作品発表の場。見本市会場の西門側に専用入り口があり、ここだけは無料で入場できる。出展者は世界各国から単独、ユニット、あるいはデザイン学校単位などさまざま。今年は日本人デザイナーの出展も多く見受けられ、他国に比べると繊細でよく練られた作品という印象を与えていた。優れた作品は「サローネ・サテライト・アワード」にノミネートされ、サテライト内の専用のコーナーに展示、審査の後、1位〜3位が決定する。今年は、ポルトガル出身でミラノで活躍するTania da Cruzによるコルクウォールが1位、エジプト人3人によるユニットRe Designのプラスチック袋から再生した繊維によるテキスタイルが2位、3位を台湾出身でロンドンを拠点とするPoetic LabとStudio Shikaiのコラボレーションによる吹きガラス照明が獲得した。
Tania da Cruz タニア・ダ・クルス(イタリア)
「BRAQUE TILE」Tania da Cruzデザイン。ジョルジュ・ブラックの作品「Le Portuguais」にインスピレーションを得、デザイナー自身の故郷であるポルトガルの重要な産物コルクを使った防音タイルウォール。2013年Salone Satellite Awards1位獲得。 「POPCORK」Tania da Cruzデザイン。生のコルクは熱を加えると、膨張し、互いにくっつく性質があることを利用して成型した照明。加熱→膨張というプロセスがポップコーンを思わせるという言葉遊びのネーミング。www.taniadacruz.com
Triple Bottom Line トリプル・ボトム・ライン(日本)
「 OTTO」柳澤郷司デザイン。パソコンやスマートフォン用のマルチソケット。8つのデバイスに対応。コードの混乱状態を美しい有機的なフォルムの中に解決。
Robert Van Embricqs ロベルト・ヴァン・エンブリクス(オランダ)
「Rising Chair」Robert Van Embricqsデザイン。一枚の木の板にカッティングをほどこし、立体の家具を作り出す。機能性と美しさの両方を同時に追求した結果だという。
「Rising Chair」変容の様子。
Studiobject ストゥディオブジェクト(イギリス)
「In Wire」手頃な価格で丈夫なオフィス家具、しかも親しみやすいデザインが目指すところ。ワイヤーを曲げただけの壁面利用家具。単純だからこそ、フレキシブルな使い方が楽しめる。©Gustav Almestål
www.studiobject.com
Poetic Lab+Studio Shikai ポエティック・ラブ+ストゥディオ・シカイ(台湾)
「Ripple」吹きガラスを通した光のゆらぎ。ガラスごとに異なる陰影が現れる。二人のデザイナー、Shi-Kai TsengとHanshi Chenによるコラボレーション「Beyond Object」のなかの一つ。今年のDesign Report Award賞とSalone Satellite Awardの3位を獲得した。flavors.me
Merbourne Movement メルボルン・ムーヴメント(オーストラリア)
「Ribbon Chair」Vivianne Kollevrisデザイン。強化繊維を使うことによってわずか22mmの厚さながら軽く堅牢な構造を実現。メルボルン・ムーヴメントは、デザイナーKjell Grantが1999年に設立したデザイナー集団。>www.melbournemovement.com vivprojects.com
OWN オウン(ポルトガル)
「ARCO」Miguel Soeiroデザイン。ネオンの特性を生かした柔らかな動きは、お馴染みの素材の新しい一面を引き出す。長時間露光の写真を見ているようなイメージだという。
「ASTE」Miguel Soieroデザイン。4本のアクリル柱を頂点でまとめ、そこを軸に広げながらねじりを加えた。シンプルだがひねりのあるデザインのフロアランプ。
www.own.pt
Cosentino & Spanio コセンティーノ&スパニオ(スイス)
「Loony Cabinet」Nicola Cosentino&Stefano Spanioデザイン。デザインというものが、紙に描かれた2次元の世界から3次元の物体に移り変わるところに注目した3作品。
右のサイドテーブルは見る角度を変えるとまっすぐ立っているように、左のスツールは置く角度を変えることによって傾いた立方体のように見える。
「Scaffale」遠近法を実体化した棚。www.cosentinospanio.com
VITRO ヴィトロ(日本)
「DEW」高橋良爾デザイン。線香花火、散る桜といった“終わりを告げるもの”に特別な思いを抱く日本人の心を、滴り落ちる光の雫によって表現。光を帯びた雫が生まれ、そして消滅する、その静かな繰り返しを眺めるうちに心は穏やかに浄化されていくという。水はLEDを仕込んだ棒の先端から滴り、小さなポンプで循環している。vitroproject.jp
Danielle Trofe ダニエラ・トゥロフ(アメリカ)
「The Live Screen」Danielle Trofeデザイン。都市生活シーンにおけるグリーンの新しい形を提案。単に観葉植物を置くのではなく、植物をインテリアと一体化させるのが目的。 各柱の内部にセットされた貯水容器に水と液体肥料を入れると、エアポンプで最上部まで送られ、重力に従って各ポットに循環していく。ポット内は病気などを防ぐため土ではなくハイドロボールを使用。danielletrofe.com
YOY ヨイ(日本)
「Canvas」小野直紀&山本侑樹デザイン。 椅子が描かれたキャンバスは、実は椅子。伸縮性の高い布で木とアルミでできたフレームを覆ってある。
「Extend」小野直紀&山本侑樹デザイン。机の延長の空間に本をセットできるブックエンド。長さの調整可能。スチール製。
yoy-idea.jp
Markus Johansson マークス・ヨハンソン(スウェーデン)
明快なラインのユーモラスなプロダクトが並ぶ。
「Walking Cabinet」Markus Johanssonデザイン。今にも動き出し、歩いてどこかへ行ってしまうような錯覚を起こさせる。二つをくっつけて、あるいは少し離して並べるのも面白い。
「Pippi」Markus Johanssonデザイン。円錐のカラフェと球体の蓋。なんということはないかもしれないが愛らしく、卓上が和む。Pippiとはスウェーデン語で鳥を指す。
Acqua Alta アックア・アルタ(イタリア)
「La Salina」Giorgia Zanellato & Daniele Bortottoデザイン。ヴェネツィアの建物の大理石の柱が海水である運河の水に浸食された姿を表現したテーブルライト。LED仕様。
「La Giudecca」Giorgia Zanellato & Daniele Bortottoデザイン。船着き場の階段と水の色をモチーフにした。水の不均一な色を表現したところがポイント。
「Murano」Giorgia Zanellato & Daniele Bortottoデザイン。ヴェネツィアの海の香りを彷彿するルームフレグランス。ムラーノ島で作られたガラス器の中にある3本の柱は、ヴェネツィアの海路の標をイメージ。セラミック製の柱が香りを空気中に発散する。
www.acquaalta-collection.com
Kenji Fukushima Design ケンジ・フクシマ・デザイン(日本)
Alexander Rehn アレキサンダー・レーン(ドイツ)
「Cay」Alexander Rehnデザイン。形を変えることによって、座る、寝るなど自由な使い方ができるソファ。
「X Rey」Alexander Rehnデザイン。1970年代に発表されたブルーノ・レイの椅子「Rey」にインスパイアされて製作。座面と脚の間に装着された金具によって、座ると宙に浮いているような感覚を覚えるという。www.alexanderrehn.com
RE Design Studio リ・デザイン・ストゥディオ(エジプト)
「Plastex」Hadwa Omran、Hend Riad、Mariam Hazemデザイン。捨てられる運命にあるプラスチック袋(いわゆるレジ袋)から再生した繊維とリサイクルコットンを組み合わせたテキスタイルを使ったスツールや物入れ。Salone Satellite Award2位入賞。 綿生産の伝統を持つエジプトの古くからある綿工場で製造。丈夫で耐久性に優れ、水や太陽、ほこりにも強い。www.re-designstudio.net
ミラノ・サローネ特集 第1回「椅子」
ミラノ・サローネ特集 第2回「トピックス」
ミラノ・サローネ特集 第3回「照明」
ミラノ・サローネ特集 第4回「注目の若手デザイナー」