Renovation
クリエイティビティを刺激するモダンと伝統が混在
エクレクティックが心地よい
アトリエを活かしてリノベーション
ジュエリーブランド「アトリエシンジ」のデザイナーとして、「amamika lab」のグラフィックデザイナーとして、フォトグラファーとして、共に活躍するクリエイター夫妻。その住居は、かつてジュエリー製作のアトリエだった、3階建ての建物を改装したものだ。むき出しの鉄骨に真っ白な壁が、モダンな雰囲気を醸し出す。
「アトリエの時からのものを、そのまま使っているのが多いんです。例えば、キッチンのダクトは、工房で使用していたものを取り付けました。当時の傷が残っているところが好きなんです」
お互いに仕事でオランダに住んでいた時に知り合った、直井一平さんと、オーストラリア、メルボルン出身のジャニンヌさんが、東京の下町で暮らし始めたのは6年前。ちょうど行われたアトリエの銀座移転に伴い、使わなくなった建物を、アトリエの名残りを活かして、ふたりの趣味を反映させながらリノベーションした。
「壁の色は、当時はグレーだったのですが、全部白に塗り替えました。ヨーロッパでは、汚れたら塗り、その上からまた塗り…、としていくんですよね。塗り重ねられることによってでこぼこになった壁面が、いい味を出してくれると思うんです」
折衷から生まれるオリジナル空間
ショップで使っていたジュエリーケースやショーケース、一平さんの曾祖父から受け継がれた箪笥やテーブルなど、昔からのものを家具としてリサイクル。その一方で、オランダの「ドローグショップ」で買った現代的なグッズや、イケアやコンランショップなどの商品も取り入れる。その自由な感性はクリエーターならではのもの。
「古いものには温もりが感じられます。かと言って古いばかりでも時代を反映しない。だから折衷がいいんです。自分たちのライフスタイルでもあるのですが、エクレクティックがテーマです。音楽も、インディーズ系からボサノバ系までなんでも聴きますが、違うジャンルのものをマッシュアップすることが、自分なりの消化になっている気がします」
好きなものに囲まれて暮らしたい
子供の頃に集めていた、ウルトラマンなどのキャラクターもののフィギュアや、階段には、友人にもらったガンダムのコレクションをディスプレイ。「アトリエシンジ」のオーナーで、ジュエリーデザイナーのお父さんが“師の師”とする人間国宝の故・芹沢銈介氏が、一平さんの誕生のお祝いに贈った、メキシコの古い子供用の椅子も、大切な宝物であり、インテリアのひとつだ。
「ほとんどすべてのものにストーリーがありますね。好きなもの、大切なものに囲まれて過ごしていたいという思いがあります。そうすることで気持ちが落ち着くんです」
リビングのデスク前には、沖縄や屋久島、五島列島熊野、五箇山など、仕事や旅行で訪れた場所で撮影した写真が貼りめぐらされている。
「旅好きなので、国内、海外含めていろいろなところに出かけます。観光というよりは、街の雰囲気を感じたり、人と触れ合ったりすることが目的です。東京はペースが早く、閉塞感があって、ずっといるとクリエイティビティに影響してきます。でも、ちょっと出かけて戻ってくると、東京の良さを再認識できて、また新たな気持ちになれるんです」
豊かな生活が感性を刺激する
趣味の釣りやカヤックなどにもよく出かける。そんな一平さんとの東京での暮らしを楽しんでいるジャニンヌさんは、ガーデニングが趣味。3階のベッドルームのテラスで、葉の色やテクスチャーのコーディネーションを考えながら、植物を育てることを楽しんでいる。ジュエリーのデザインには、植物をモチーフとすることが多いが、
「アイデアは、隅田川沿いをジョギングしている時などに湧いてきますね。動いているとき、人が多い時のほうがいいみたいです。家は落ち着ける場であってほしいです」
リビングには160インチの大型プロジェクターがあり、ふたりで映画を観たり、この夏は友人を呼んでオリンピック観戦も楽しんだ。スカイツリーが見える屋上のテラスでは、バーベキューをしたり、気候のいいときには、朝ごはんをとることも。思い出を大切にした空間で、好きなものに囲まれゆったりと生活を楽しむ。それがクリエイティビティを刺激するのかもしれない。