クリエイティブな発想が育つ家壁や床のうねりがエモーショナルな内部空間

クリエイティブな発想が育つ家壁や床のうねりが
エモーショナルな内部空間

IT系の企業コンサルタント会社を経営している田中正道さんが、以前働いていた職場の先輩のお宅を訪ねた際、メビウスの輪をモチーフにした家のあまりのカッコよさに驚いてしまったのだそう。

「いつか自分が家を建てることになったら、先輩の家を手がけた建築家にお願いしたいと思っていました。念願かなって実現したのがこの家です」

外から見た田中宅の外観は凛々しい直方体。けれど中に一歩足を踏み入れると、有機的な壁のうねりや床の凹凸、ゆったりとした弧を描く階段、下のフロアが見えるガラスの床などで構成されたエモーショナルな空間が広がる。


2階から3階へはエレガントに弧を描く緩やかな勾配の階段になっている。天に昇っていくようなイメージ。

2階から3階へはエレガントに弧を描く緩やかな勾配の階段になっている。天に昇っていくようなイメージ。

子ども部屋に通じる坂はデコボコの斜面。子どもたちは足裏の感覚をフルに使ってここを昇っていく。

子ども部屋に通じる坂はデコボコの斜面。子どもたちは足裏の感覚をフルに使ってここを昇っていく。

有機的な断面と、人工的な通気孔の円形のデザインがミックスされると、不思議な感覚に捕らわれる。

有機的な断面と、人工的な通気孔の円形のデザインがミックスされると、不思議な感覚に捕らわれる。

フリッツハンセンの楕円のテーブルが、家のカーブにぴったりとフィット。大きなペンダントライトはMOLRAもの。

フリッツハンセンの楕円のテーブルが、家のカーブにぴったりとフィット。大きなペンダントライトはMOLRAもの。


ボコボコの床面を降りてくると、洞窟にポッカリ横穴が空いているようなイメージ。横穴の奥が子どもたちの部屋。

ボコボコの床面を降りてくると、洞窟にポッカリ横穴が空いているようなイメージ。横穴の奥が子どもたちの部屋。


床に凸凹があったっていい

エントランスを入ると、右手はリビングに向かう階段。正面の凹凸のある坂を降りていくと、秘密基地のような子ども部屋がある。子ども部屋から飛び出してきた6歳の翔雲くんと4歳の海琉くんが、裸足でその凹凸の床を駆け登る。水平垂直だけの家にはない自由な発想とエネルギーがこの家にはある。「僕たち親は子どもたちの世話係、家は器です。固定概念に縛られないクリエイティブな子どもに育って欲しいと願っています」

家の場所を決めたのは佳子さんだそう。「この辺りは公務員住宅が多いせいか、公立小学校でも教育熱心な家庭のお子さんが多いと知人に聞きました。教育環境も住環境もいいので、ぜひこの辺りに家を建てたいと土地を探しました」


2階の床面が一部ガラスになっていて、下から見上げると子どもたちの可愛い足裏がペタリ。ビーズクッションがお気に入り。

2階の床面が一部ガラスになっていて、下から見上げると子どもたちの可愛い足裏がペタリ。ビーズクッションがお気に入り。

子どもたちの勉強机の前はホワイトボードになっていて、そこに自由にお絵描きできる。

子どもたちの勉強机の前はホワイトボードになっていて、そこに自由にお絵描きできる。

いろんな場所が子どもたちの遊び場になる家。ガラスの床に寝っころがって下を覗く経験ができる家はなかなかない。

いろんな場所が子どもたちの遊び場になる家。ガラスの床に寝っころがって下を覗く経験ができる家はなかなかない。

ACTUSの子どもベッドを縦に並べた翔雲くんと海琉くんの部屋。右側のガラスの向こう側はガレージになっている。

ACTUSの子どもベッドを縦に並べた翔雲くんと海琉くんの部屋。右側のガラスの向こう側はガレージになっている。


時計じかけのオレンジ&グッゲンハイム美術館

佳子さんが探していたエリアに土地も見つかり、いよいよ建築家の元を訪ねる。

「家を作る際、建築家と施主の信頼関係はなにより大事ですから、引き受けますとすぐに返事はいただけないんです(笑)。2回に渡る打ち合わせで、大枠のイメージを伝え、どんな映画が好きか、どんな建築が好きかや、何を大切にしているかなどを聞かれました。映画は『時計じかけのオレンジ』、建築は『グッゲンハイム美術館』の天に昇って行くような階段が好きですとお返事しました」

そして提案されたプランが、直方体をグルリと熱線カッターで切り取ったような空間。映画『時計じかけのオレンジ』のパッションと、『グッゲンハイム美術館』のゆるやかな階段がそこにあった。


田中邸は、立方体のスチロールを熱線カッターでクルクルっと切ったカタチになっている。

田中邸は、立方体のスチロールを熱線カッターでクルクルっと切ったカタチになっている。

家のそこここに絵が飾られている。これはLAのアーティスト、デイビッド・フローレスの作品。

家のそこここに絵が飾られている。これはLAのアーティスト、デイビッド・フローレスの作品。

「クリエイティブな子どもに育って欲しい」と話す、正道さんと佳子さん。オランダに夫婦で海外赴任していたこともあったそう。

「クリエイティブな子どもに育って欲しい」と話す、正道さんと佳子さん。オランダに夫婦で海外赴任していたこともあったそう。

正道さんの部屋のドアは、壁の曲面が覆いかぶさるような、インパクトのあるカタチ。

正道さんの部屋のドアは、壁の曲面が覆いかぶさるような、インパクトのあるカタチ。


正道さんの部屋の中に入ると、今度は左側から押し込まれた壁面との間にポッカリ空間が空いたイメージ。

正道さんの部屋の中に入ると、今度は左側から押し込まれた壁面との間にポッカリ空間が空いたイメージ。


「空間を斜めに切り取った厚みや角度が様々な壁など、この家の施工は大工さん泣かせだったようです。たとえば凹凸の床など、図面に書き起こせないような部分は建築家自ら手を動かして作っていただきました。ご苦労が多かった分、愛着を感じていただいたようで、引き渡しの際は涙を浮かべてらっしゃいました」

ここに引っ越してきてからまだ4ヶ月。カーテンなどは仮のものだそう。「日差しが強いので、遮熱製の高いカーテンをつける予定です」他にも、計画中のお楽しみが盛りだくさんとのこと。「子どもの成長に合わせて子ども部屋を仕切ったり、屋上を活用できるように手を入れたいとも思っています」


トップライトからの光が、曲線の白の壁に美しいニュアンスを与えている。

トップライトからの光が、曲線の白の壁に美しいニュアンスを与えている。

FRPで制作された曲面がおもしろい浴室。左側の窓の外はテラスになっていて、子どもたちが露天風呂気分で遊ぶそう。

FRPで制作された曲面がおもしろい浴室。左側の窓の外はテラスになっていて、子どもたちが露天風呂気分で遊ぶそう。

階段を昇り、3階の通路の先に洗面台が見える。縦長に空間を切り取ったようなおもしろさ。

階段を昇り、3階の通路の先に洗面台が見える。縦長に空間を切り取ったようなおもしろさ。

白い直方体の一部をペリペリと剥いて、ガラス部分が現われたようなイメージの外観。

白い直方体の一部をペリペリと剥いて、ガラス部分が現われたようなイメージの外観。


田中邸
設計 前田紀貞+白石隆治(前田紀貞アトリエ)
所在地 東京都目黒区
構造 鉄骨造
規模 地上3階
延床面積 107.47 m2